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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆ VS 生徒会編◆
38/228

水星に抱かれて

「『双子座』だ!」


レミが声を上げて言った。


ユエは 最後の3つ目の星座

双子座(ジェミニ)』をすでに呼び寄せて

入れ替わっていた。


ユエは弓矢の切っ先を外すことなく

右手をギリリッと引いた。


リュウはため息をついた。


「………わたくしの敗けですね」


ユエの方を向き、ずっと抱えていた

アンティーク人形をユエに渡そうとした。


瞬間


ユエはリュウに矢を射た。

リュウは矢をくらって後ろに吹き飛び

そのまま仰向けに倒れて気絶した。


矢の威力をセーブしたようで

リュウは気絶しただけで外傷はなかった。



「降参を言わせたうえに気絶させちゃうなんて……

ありゃ、相当怒ってるわね」


レミは顔はニヤけてたがユエの怒りを感じて

口元がひきつっていた。


ユエは落ちたアンティーク人形を拾い中を調べた。

人形の中から自分のピンバッジを見つけた。


相手を降参させ、気絶させ、ピンバッジも取り返した

ユエの完全勝利だった。



「自業自得だから仕方ないね~」


影井イズミが倒れたリュウの

側に寄って抱え起こす仕草を始めた。


「目を覚ましたら副かいちょーに

またボコボコにしてもらうようするから許して」



(目を覚ましたらボコボコにされるのか……

可哀想な人だな……)


レミが心の中で憐れんでいると

影井イズミの足の下の影が広がった。


「抱えて運べないからボクらはこれで帰るね~

レミちゃん、来週楽しみにしてるよ~♪」


「あ゛ッ……!」


レミは自分が来週 影井イズミと対戦することを

すっかり忘れていて変な声を上げた。


影井イズミはレミ達に手を振ると広げた影の中に

リュウと一緒に沈んで姿を消した。




ユエは ゆっくり歩いてレミとトールの元へ戻った。

顔を下にうつむいたままで

黒くて長い髪が垂れて ユエの表情がわからなかった。



「ユエちゃん………」


レミが最初に声をかけたが無反応だった。


「武藤さん………大丈夫?」


トールは おずおずと尋ねた。

それにも無反応だった。


レミもトールも、ユエがまだ怒りで

頭がいっぱいなのだろうと思った。



「武藤さん、すごかったよ。

あの弓矢がすごく強くなったおかげで……」



ユエは バッと顔を上げた。



ユエの瞳には今にも

こぼれ落ちそうな涙でいっぱいだった。


レミはユエの涙目を見てすぐ気付いた。


レミはトールの背中をドンッと押して

ユエに近付けた。


「いッ!…な、何するの清水さん!

ごめんね、武藤さん……」


レミに押された反動でトールは

ユエの両肩を掴む姿勢になった。



すると、ユエがトールの胸に頭を(うず)めて

声を上げて泣き出した。

涙はすでに頬を頼って下に落ち

トールの胸の辺りを濡らしていった。


泣きじゃくるユエに戸惑うトールは

どうしたらいいかわからず、うろたえた。



「武藤さん……ごめんね、

本当は助けに行きたかったんだ。

でも、勝負を気にしちゃって……」



ユエは変わらず泣き声をあげて泣いている。



「トール君、女の子にはね

勝負より大事なモノがあるのよ」


レミがトールに「このニブチン!」と

叫びたいのを抑えたような顔つきで言った。



トールはレミの言葉に気付いたのか

気付かなかったのか……


でもユエが今の戦いで大切なモノを

失ったのだと思い

そっとユエの頭と背中に手を回して

抱きしめた。



「武藤さん……ごめんね」



トールはそれ以上なにも言わなかった。




ユエはトールの胸の中で

あの日の事を思い出していた。


空中に投げ出され、屋上から落ちる自分を

身を挺して助けに来てくれたトール。


下に落ちる重力とトールの腕の力で

締め付けられた身体が とても温かかった。



目覚めた事により抑えていた感情が

全てあふれでたかのようで

抑えきれない思いを全てトールに委ねている。




今日の出来事を全部忘れさせてほしい。




ユエはトールの抱擁に

そんな想いを込めて

ずっと泣き続けた。


次回『レミ VS イズミ』スタート

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