ユエ VS リュウ 2 ~覚醒~
◆登場人物◆
布施 リュウ
17才・高3・男
身長178センチ・やせ形・優男
人形と名のつくものなら自在に操れる。
好みはアンティーク人形。
『人形操師』
人形愛に眩むと周りが見えなくなる。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
ユエが声を上げた。
それと同時に体から闘気が立ち上がる。
立ち上がった闘気に圧倒され、
リュウはユエから身を引き
ユエの「身代り」になった人形は
その場で弾け飛んだ。
幼馴染みのレミですら、ユエの咆哮と
闘気の衝動を目の当たりにして驚愕していた。
小柄な体に真っ直ぐな黒髪を静かになびかせ
毅然とした態度に どことなく気品が漂う青少女。
そのユエが形振りかまわず
声をあらげている。
不釣り合いな光景にその場の全員が驚いた。
ユエは沸き上がる衝動から
自力で「身代り」の呪縛を解いて
リュウの方へ体を向けた。
ユエは『射手座』の弓矢を具現化させた。
今までよりも強くて大きい光を放っている。
リュウは自分に向けられた弓矢を防ぐために
1体の人形を自分の前に呼び寄せると
その人形に本来の「身代り」役の力を与えた。
ユエが光の矢を放つと人形が
リュウを守るかのように 矢をわざとくらった。
リュウに当てようとするが人形が邪魔をする。
3発目の矢をくらって人形は壊れた。
リュウは手を前にかかげて
5体の人形に「攻撃」の役目を与えた。
5体の人形は体当たりではなく
頭をユエの方に向けて勢いよく飛んでいく。
ユエは 焦ることなく弓を引いた。
1回 引いただけで 5発の矢を飛ばし全弾命中させた。
3体の人形が砕け散り、残りの2体は
体の一部が欠けた状態で「攻撃」の命令を
全うしようと突っ込んできたが
ユエが また一度の弓引きで2発撃ち
全部の「攻撃」人形を破壊した。
リュウに少し焦りの顔が浮かんだ。
ユエは『射手座』の弓で
一度に数発もの矢を放ったのは初めてだった。
あの時 沸き上がった衝動で
力の底上げがされた と感じた。
ユエは「見える未来」だけを見て生きてきた。
必要と思ったものだけを選び
不必要と思ったものは避けてきた。
おのずと感情にセーブがかかった。
余計な事に心を使わない。
家族とレミ以外の人間に心を開かなかった。
だが、運命が変わったあの日から
少しずつ感情のセーブが緩くなっていた。
心の中に眠っていた本当の自分が目を覚ます。
「その人形」
「……!」
ユエがリュウの抱いている
アンティーク人形を指差して言った。
「それよね?私のバッジを持ってるの」
「そうかもしれませんね」
リュウは わざとらしく微笑んで答えた。
残り約15体ほどの宙に浮かぶ人形たち。
リュウは また手を前にヒュッと振りだすと
人形たちがユエの周りを上下左右とくねくね動いて
弓矢の狙いを定められないように飛び回った。
一度に多くの矢を撃てるようになったが
変則的な動きには対応できない。
ユエは たちまち人形たちに囲まれた。
突破口はある。『牡牛座』を使って
蹴散らしてしまえばいい。
ユエは構え始めた。
「見え見えですよ」
「!?」
リュウは余裕の顔でユエに言った。
「ご自分の体を見てください」
ユエは言われたとおり 自分の体に目をやった。
何かキラキラしたものが見える。
指の間に光った物をよく見た。
ほぼ透明に近い極細の糸だった。
「それは人形たちの「命の糸」です。
わたくしと人形の絆を結ぶもの。
本来ならこんな使い方はしませんが仕方ありません」
人形たちは ただユエの周りを
適当に飛び回ってるだけではなかった。
「命の糸」を出してユエの体に巻き付けていた。
気付いたときには身体中が糸で絡まり
足を動かした時に糸が邪魔して前屈みに倒れた。
「………ッ!!」
「もう動けません。
貴女が捨て身の攻撃をしたから
わたくし達も捨て身になったのです」
ユエは倒れたまま人形たちが
出し続けている糸に覆われていき
姿すら見えなくなるほど固められ
まるで蚕の繭になったように封じ込められた。
役目を終えた人形たちは その場で
命が尽きたようにポトポト落ちた。
「ユエちゃん!ユエちゃーん!!」
レミが必死になって叫んだ。
トールも顔が曇らせてユエの「繭」を
心配そうに見続ける。
「……申しわけないですが時間が来るまで
そのままでいてください」
リュウは「繭」に目をやって
少し悲しい表情で呟いた。
レミもトールも ユエの敗けを覚悟した。
「見え見えなのよ」
「!?」
リュウの背後で ユエのハッキリした
声が響いた。
そして自分の左の背中に
切っ先の尖った何かを当てられている。
ユエは『射手座』の弓を構えて
リュウの背後を取る姿で現れた。
「繭」に目を奪われていたレミもトールも
ユエが無事だった事と立場が逆転した事に高揚した。
「なぜ……後ろに……?」
「その人形を渡しなさい」
ユエは 人形を渡さなければ背中ごと
撃ち込んで破壊する とでも言うような
強い凄みを利かせて睨んだ。
「私は『星座使い』。もうわかるでしょ?」




