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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
195/228

病室にて 2

「はぁ……………………」


トールはサキの病院の

『スクリーマー』専用特別病棟の一室にいた。


昨日(さくじつ)の放課後、トールはクリフに決闘を申し込まれて

戦う羽目にあった。


トールの体の中にいる4匹の妖怪の中で

最も強力で邪悪な『朱雀』を呼ばざるおえなくなったトールは

『朱雀』の闇に取り込まれ、

クリフをギリギリまで追い込んでしまった。


さらに『朱雀』の力を行使した反動で

右腕から背中にかけて まるで皮膚だけが(すみ)になったかのように

黒ずんでしまった。

痛みはサキの治療のおかげで引いていたが

数日の入院が必要となってしまう。


トールはベッドの上で仰向けになり

腕と腰と脚に 拘束具が巻かれてベッドに繋がれ

身動きが取れない状態になっていた。


体の治療と同時に、強大な力をふるい

周りに被害をもたらしかけたトールは

入院と監禁の両方を受ける。


個室に独り閉じ込められ

天井を見上げて何度もため息ついた。


「(感情に流されて周りの危険を省みない……………か。

クリフ君に言えた筋合いじゃないじゃないか………)」


トールは心の中で自分の行いを深く反省する。

『朱雀』の力を使った事で『朱雀』の邪悪な心に魅了され

危うくクリフを殺しかけてしまい、後悔ばかりしていた。


朝の食事もノドが通らず

無音で無機質な個室の中で 虚ろな時間を過ごしていた。



何時間経ったかも わからず

飽きるほど ため息をついた その時

個室の扉をノックする音が聞こえた。


トールはベッドから顔を起こして扉を見た。

サキはノックなどせずに突然入ってくる。

なので、今、扉をノックしたのはサキではなかった。


ガチャンと扉が開くと

様子を(のぞ)くかのようにアキトが入ってきた。


「桐谷君!!」


「おう、大丈夫か?樋村」


アキトは笑顔を見せてトールのベッドに近付く。


「お前が入院したって葉山さんから聞いて驚いたよ。

俺と同じ目に遭ったのかと思った」


「あ………違うんだ………実は……」


トールはクリフと戦った事の全てをアキトに話した。


「そうか……そりゃ災難だったな」


「クリフ君………どうしてるかな………」


トールはクリフの心配をする。


「心配すんなよ。向こうが悪いんだし」


「う、うん………」


トールはアキトの顔を見ると

アキトの目の下に少しクマがかかってるのに気付いた。


「桐谷君は大丈夫なの?」


「俺は大丈夫なんだけど、コイツがな。まだ不安定で……」


アキトは 体に問題はなかったが

もうひとりの自分が精神面での不安定のため

まだ入院を余儀なくされていた。


「テッドとは別室にされちゃってさ……。

まだ目を覚まさないんだ。

集中治療室に移動されたよ」


アキトは悲しそうに言う。


「なんか……良い言い方じゃないけど

樋村が来てくれて良かった。心細かったからさ」


「僕も……ずっと独りで過ごしてたから、話ができて良かったよ」


2人は顔を合わせて笑っていると

バタンと扉が開き、ハルマが乗り込んできた。


「ハルマ!」


「オース、元気かお前ら」


ハルマは 学校帰りで制服を着たまま

ドカッとトールのベッドに腰かける。


「お前らがいないから学校行っても楽しくねーし

ゴリ(レミ)が問い詰めてくるしで

散々な一日だったよ……………ったく」


ハルマはトールもアキトも病院に入院してしまったので

話せる相手がいなく、明らかに寂しがっていた。


「そういや………あのクリフとかいう奴、今日 学校に来てなかった」


「えっ?」


「昨日の今日だからよ、様子見に探したんだけどいなかったんだ」


「そ………そう」


完膚なきまでに抑え込んでしまい

震えて動けないクリフの姿を目に焼き付けてしまったトールは

再び後悔の念に襲われた。


学校に来なかったのは自分のせいだろうとトールは自責する。


「………『朱雀』の事は仕方ないけど

樋村は間違った事はしてないんだ。

自分を責めるなよ」


「あのクリフって奴がお前を挑発したのが ワリィんだ」


「………………………ん」


トールはまだ納得できない顔しながら

励ましてくるハルマとアキトに笑顔を見せる。


「退院したら、仲直りしなくちゃ」


「お人好しだなぁ、お前」




トールは退院したら

まずクリフに会いに行って仲直りすることを思い浮かべる。




それが二度と敵わないと知るのは

そう遠くない未来(さき)に訪れる。


この時トールはそんな事を微塵も考えられなかった。

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