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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
192/228

トール VS クリフ 2

「愛スル(ヒト)を自分のモノに出来ズ

その愛スル(ヒト)が愛しテル(ヒト)に『みんなで仲良ク』なんて

言わレルこの屈辱がわかりマスか!?」


片言混じりの日本語と

怒りで興奮して勢いで話すクリフの言葉に

トールは理解が遅れる。


クリフはユエを独占したいのだが

ユエはトールの事が好きだから独占することが出来ず

そのトールはと言うと、ユエの事は好きだが執着はなく

クリフに『取合いなんてしないで仲良くしよう』と言うのが

余裕綽々に聞こえて屈辱的なのである。


クリフは トールとは違った意味で顔を赤くして興奮している。


「そんな考えだカラ、ユエを悲しませてるんデス!!」


「――――!!」


トールは クリフの言葉に胸を痛める。

だが、トールも黙ってられなかった。


「君に僕の何がわかるっていうのさ!!

僕だって好きでそんな事してるんじゃない!!」


「……?何を言ってるんデスか、君は」


クリフは トールを不思議そうに見る。


トールはこれまで誰にも言わなかった思いを

爆発させるように言った。


「僕が武藤さんを(もてあそ)んでるとでも言うのか!?

そんなわけないだろ!!

でも、今は武藤さんの事だけを優先に出来ないんだッ!!」


トールは息を弾ませ、話し続けた。


「僕の大事な仲間が今、大変な状況の中にいるんだよ!

僕はそいつを守らなきゃいけない!

ひとりは今もそのせいで傷付いて倒れてるんだ!!

武藤さんの事も大事に思ってる!!

でも、今は一番に出来ないんだ!!それだけなんだよ!!」


トールは『ウォンバッド』に狙われているハルマを守りたい。

自分の行き方を変えてくれた友と

この先の未来(みち)も一緒に歩んでいくと決めたから。

そして『ウォンバッド』の人間に遭遇して倒れたアキトの事も思う。


トールはユエを想う気持ちを

わざと(うと)いフリしてまで隠していたのは

意地でも照れでも恥ずかしさでもなく、

『大事な友を守る事』がトールの中で最優先だったから。


クリフは トールの話を聞いて ため息をついた。


「ナルホド、君は愛より友情を選ぶワケデスね」


「どっちを選ぶとか、そんなんじゃない!!」


トールは 一息つくために深呼吸をする。

目を(つむ)り、ユエの顔を思い浮かべた。


「…………これは………僕の思い込みだけど

武藤さんは、気付いてるんだ…………僕が考えてる事を。

だから 今の状況が良くなるまで

待っててくれてるんじゃないかって……」


ユエがトールに想いを伝えない理由。

それはトールが成し遂げなければならない事を抱えているから

余計な情を挟ませまいと、してくれている。


トールは そう思い、そう願っていた。


「武藤さんは頭も良いし思いやりのある人だ……

自分の身を犠牲にして仲間を大切にできる凄い人だよ……

そんな人が自分の事よりも、僕が一番に考えてる事を

優先にしてくれてるんだよ!

だったら『仲間を守って、今の状況を終結させる』事が

武藤さんの気持ちに応える事になるんじゃないのか!!?」


「………!!」


クリフに『ユエの気持ちに応えない』と言われ

(いきどお)りを感じたのは

『自分はユエの気持ちに応えている』と思ったから。


トールとユエは 互いに

気持ちを伝えあう事はしていない。


だが、2人の想いは

クリフの手の届かない次元まで

到達しているのである。



クリフはトールの話を聞き

いくら手を尽くそうと

ユエを自分のモノにすることは

出来ないという現実を叩きつけられ

悔しさを両手に握りしめ顔を強ばらせた。


「君がやってることは、オモチャの取り合いをして

ケンカを始めた子供と一緒だ………。

だから僕は武藤さんの為に君と戦うことはしない。

武藤さんはオモチャじゃないんだ」


トールは右手を前に出して構えた。


「感情に流されて周りの危険を

(かえり)みない君を許すことは出来ない。

だから僕は君と戦う。

君を(せい)しなくちゃいけない」


トールはクリフと戦う理由にユエを持ち込まず

正当性を付けてクリフを倒すと宣言した。



クリフは トールに言い返されたあげく

ユエを自分のモノに出来ないイラ立ちを爆発させる。


「『火蜥蜴(サラマンダー)』!!!」


クリフは怒りと共に叫ぶと

からだ中に 炎の(オーラ)をまとわせ

自分とトールの周囲を熱気で包み込んだ。

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