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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
191/228

トール VS クリフ

トールとクリフは

旧校舎の屋上の真ん中に立ち、お互いに(にら)み合う。


クリフに無理矢理 勝負を突き付けられ

トールは それに応じた。


だが、胸の内は互いに違っていた。


「ボクが勝ったら君はユエから離れてくだサイ」


クリフは ユエの事が好きで

トールに対してライバル心を燃やしていた。

またクリフには『トールはユエの気持ちに応えない』と見えていて

怒りを抱いていた。


「…………わかった。それで気が済むならそうする」


「君からはボクに何もナイですカ?」


「…………別に」


トールは右腕の袖をまくりあげながら ぶっきらぼうに答える。


「勝った方が全てを(せい)するんでしょ?

いちいち要望なんか付ける必要ないだろ」


クリフに対してトールも怒っていた。

クリフはトールと勝負をしたかったがために

周りを気にせず能力(チカラ)を使い、強行してきた事や

ユエとの事で好き勝手に言われて頭にきていた。

トールはトゲのある言い方をして、クリフは顔をムッとさせる。


トールは右腕の封印札をほどいて『白虎』の手を召喚した。


クリフは瞳を赤色に変色させる。


クリフが先制して攻撃をした。

大きく息を吸うと 一気に吹き出す。

吹き出した息は 炎となってトールに真っ直ぐ向かっていった。


トールは 炎を避けて、クリフの方へと駆け出す。

クリフは 一度 息を止めると今度は炎を弾状にして

連続で飛ばしてきた。


トールは炎弾を見切って すかさずかわしていく。


クリフまであともう少しで手の届く距離まで近付いた時に

クリフは 自分の足元に向けて炎を吐き出すと

トールとの間に炎で出来た壁を作った。


トールは うかつに飛び込めなくなり

後ろに下がって構え直した。


炎の壁でクリフの姿が見えなくなる。

トールは炎の壁の裏にいるであろいクリフに警戒した。


見張っていると炎の壁は

静かに鎮火していき、クリフはただ立ち尽くしていた。


クリフは攻撃を仕掛けず、トールに話し掛ける。


「君はユエの事を愛してナイのデスか?

ナゼ、君は何も行動(アクション)しないのデスか」


「えっ」


トールはクリフの質問にドキッとする。

トールはクリフに本心を語る事に抵抗感を感じた。


「………君には関係ない事だ」


トールはクリフの質問に答えず

炎の壁がなくなったので、クリフに向かって飛び掛かり

白虎の右手で殴る。


クリフは後ろに飛び退いてトールの攻撃をかわしたが

制服が引っ掛かって 左肩と胸の所がビリビリッと破けた。


「!?」


トールはクリフの破けた制服の下から見えたクリフの肌を見て驚く。


クリフの肌には 刺青(いれずみ)のようなモノで書かれた

読み取れない不可思議な文字がズラズラと刻まれていて

肌の色の方が少ないように見えた。


クリフは左肩の破けた所を右手で押さえてトールを睨む。


トールの顔に向けて炎を吐き出し

トールが(ひる)んだ(すき)

クリフはトールの左腕の袖を思いきり引っ張って袖を破いた。


トールの左腕は肩から下が はだけ

左腕に巻いている封印札と

左肩に刻まれた封印文字の『南斗』が剥き出しになる。


トールとクリフは お互いに距離を取り離れた。


お互いの体の有り様を見て二人は目を見張る。


「やっぱり……君はボクに似ていマス」


クリフはトールの左腕を見て(つぶや)いた。


「ボクは………生まれた時からカラダの中にMonsterがいました」


「…………!!」


クリフの話を聞いてトールは驚く。

クリフの言う通り、トールとクリフの生い立ちは似ていた。


「カラダから追い出そうト、時間もおカネもかけました。

デモ、追い出せなかっタ…………。

ダカラ、ボクはMonsterを操る事ができる道を選ぶしかなかっタ」


トールは 何も言わずにクリフの話を聞いた。


「フツウの子どものように遊ぶことも出来ズ

親に甘えル事も出来ズに捨てられ

ただ何年も何年もMonsterと戦って

自分が勝つマデ戦い続けテ、ようやく自由を手に入れたのデス!」


トールはクリフの話に自分を重ねる。

それがどんなに辛いことだったか

手に取るような理解できた。


「君に会った時……ボクはすぐに君が同じ人間だとわかりマシタ。

君の目はボクと同じだったカラ……」


クリフはトールに会った時から

自分と同じ能力(チカラ)を持っていた事に気付いていた。


「スゴク、うれしかっタ……!

これ以上、ボクを理解してくれるヒトはいないと思いまシタ!

君と 仲良くなりたかッタ」


クリフの言葉に陰りがかかる。


「それだけにザンネンなのデス……。

君が恋敵(コイガタキ)になるなんて……!!」


クリフは手をギュッと握る。

トールはクリフの話を聞いて複雑な思いに揺れ始める。


「今からだって友達になれるじゃないか!

恋敵とか…… そんなのやめようよ!

僕は君の行動を制限しようなんて思わないもの!

みんなで仲良くすれば……」


「それがワカラナイ!!『みんなで仲良ク』……?

何を言ってるんデスか!?

君は愛スル人を独占したくナイですか!?」


「……………ど、独占とか………そんなの知らないよッ。

だって、恋なんてしたの初めてなんだから!!!」


トールは顔を赤らめて思わず叫んでしまう。


トールとクリフは

ほとんど一緒の生い立ちを送り

偶然にも こうして出会う事ができた。


本当なら唯一無二の友となり得る存在になっていたかもしれない。


だが互いの愛の在り方の違いが

二人の絆を裂いていた。


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