クリフからの果たし状 2
クリフに突然 勝負を申し込まれたトール。
しかもユエを賭けた決闘だと言われ、トールは焦った。
「ちょ、ちょっと待ってクリフ君!なんでそんな事しなくちゃ……」
「ボクは ユエが好きデス」
トールに向かってストレートに自分の気持ちを言うクリフは
トールに対してライバル心を抱いていた。
「でも、ユエは君の事が好きデス。
それはクラスにいてモ、屋上にいてモ
ユエは いつも君の事ばかり見ているカラわかってマシタ」
トールは体の芯から熱くなるのを感じた。
嬉しさと妙な焦りと不安が入り雑じって
トールの心は 整理がつかなくなっていた。
だがクリフの怒りとも言える感情をぶつけられて
トールは我にかえる。
「なのニ君はユエのキモチを大切ニしない!
ボクは それが許せナイ!!」
「そんな!それはッ………」
トールは反論しようとしたが
これまでユエを泣かせてしまったこともあり、
ユエの気持ちに気付かないフリをしているのも事実で
うまく言葉が見付からず、口を開けたまま黙ってしまう。
「ダカラ ボクは君と勝負しまス!
ボクが勝ったラ 君はユエから離れてくだサイ」
「なっ、何を勝手にそんな事!!」
「君は ユエをシアワセに出来マセン」
この言葉にトールはショックを受ける。
ハルマに冗談混じりで言われた時も少し気にしていたが
本気のクリフの言葉は 鋭く胸に突き刺さった。
ショックと同時に 別の感情も沸き上がる。
「………………………勝手な事ばかり言うなよ」
「………?」
「確かに僕は武藤さんに辛い思いばかりさせてるよ!
けど、君に僕の事を制限する権利はない!」
「ダカラ勝負を言いマシタ!
勝った方が負けた方を征スルのは自然な事デス。
君の中にいる妖怪も君がそうやって
征したカラ、成り立ってるはずデス」
「――!?なんで僕の能力の事を知ってるの!?」
トールはクリフや他の留学生達の前で
まだ自分の能力を見せたことはない。
だが、クリフはトールの能力を知っているように話す。
「それハ ボクも君と似たチカラを持っているカラ。
ボクも 自分の力で ボクの中にいるモンスターを征しました。
チカラある者が上に立つのは自然な事デス。
ダカラ、ボクらは戦わなくちゃイケナイ」
「な、なんでそうなるんだよッ」
トールは頭が混乱し始める。
「勝った方がユエを手に入れる事が出来るカラデス!」
「武藤さんはモノじゃない!
……………クリフ君、君の考えはおかしいよ。
それに僕は今、君の相手なんてしてられないんだ」
トールは ユエの事も気にかかっていたが
『ウォンバッド』の遭遇で傷付いたアキトの事や
迫り来る敵の事や、この先の不安などで頭がいっぱいで
クリフの勝負の相手などバカバカしくてやってられないと思った。
クリフの横を通りすぎ、トールは帰ろうとする。
「……………そうデスか。それナラ仕方ありまセン」
クリフはトールを真っ直ぐ睨むと
青色の瞳が真っ赤な色へと変わっていく。
異変を感じたトールはクリフの方へ振り向くと
クリフは口から炎を吹き出した。
炎はトールへ向かって真っ直ぐ伸び、トールの周りを囲んだ。
「何をしてるんだッ!やめろ!!」
トールはクリフの行動に焦りと怒りを感じた。
今2人がいる場所は旧校舎の屋上ではない。
校門の出入り口の前でクリフは自分の能力を使い始めた。
一般人の目に入りやすく、また下手をしたら
一般人を巻き込んでしまうかもしれない場所での
クリフの浅はかな行動にトールは叫んだ。
トールの周りを囲んでいた炎は
クリフがフッと息を吹きかけると 一瞬で消えた。
「わかってもらえましたカ?ボクが本気なのガ」
「ふざけるなよ!自分が今、何をしたのかわかってるのか!?」
幸い、クリフの能力を目にした一般人はいなかった。
トールはクリフの側によって胸ぐらを掴む。
「もう一度やったら許さないぞ………!
僕に向けて攻撃したことに対してじゃない!
今のは下手をしたら関係ない人を
巻き込むかもしれなかったんだ!!」
「それナラ、勝負を受けてくだサイ」
クリフの考えは常軌を逸していた。
トールとの勝負が叶わなければ
また同じ事をやってやる、と
クリフの目が訴えていた。
トールはクリフを睨み返し、胸ぐらを掴んでいた手を離す。
「……………わかった、いいよ。
君みたいな危ない考え方をする奴は
力で捩じ伏せた方がいいみたいだね」
クリフの挑発を受け
トールは怒りをあらわにする。
2人は 旧校舎の屋上へと上がっていった。