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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
186/228

起死回生

カズミの能力(チカラ)により動けなくなったアキト。


アキトの周囲にはカズミがふかした煙草の煙が舞っている。

テッドは間一髪でカズミの能力(チカラ)からは逃れたが

その一方でオルグへの追撃も、アキトを助ける事も出来ないでいた。


「いい判断だな。『煙』に巻かれりゃ動けなくなる」


カズミは 一歩も動かず、その場で立ち尽くす。

オルグは斬られたり殴られて傷付いた体の修復をしていた。


「………」


テッドはカズミの方を睨み、オルグが回復する前に

カズミを倒そうかと頭で考えていた。

だが、カズミの未知の能力に(ひる)み体が前に動かない。


カズミはテッドを見て言った。


「お前は頭が良いな………。

それだけに残念だ。仲間に欲しがったが」


「……………あんたは、この施設で生まれる人間兵器に

目をつけてた組織の人間か」


「あぁ……。その頃はまだ人手不足だったからな。

とりあえずチカラを持った人間が欲しくて目をつけていた。

オルグが暴れなきゃ、お前みたいな検体の子供達を

救って仲間に出来たんだがなぁ」


カズミは 持ったいなさげにテッドを見つめた。

それからクルッと体を反対にしてテッドに背を向ける。


「オルグ、治ったら次は確実に頭を潰せ。2人ともだ」


「あれーっ、カズミってば この2人、気に入っちゃったの?

気に入った人間は自分から手を下せないもんねー?」


「俺はお前のような殺人狂じゃないんだよ。

お前に譲ると言ってんだ。

煙色(スモッグレイド)』が切れる前にやっちまえ」


「はいはい♪」


オルグは体を起こして手を首をコキッと鳴らした。

アキトとテッドが必死に傷つけた体も、あっという間に無に帰した。


それを見てアキトは 必死に逃げようともがいたが

見えない縄のようなもので全身を縛られた感覚で

まったく動けない。


ズシンッと重たい一歩がアキトに近付く。


オルグは右手を上まで高く上げ

アキトの頭上を狙った。


「くそッ!!こんなのッ…………!!」


アキトは諦めずに体に力を入れて

拘束を解こうとする。

オルグはニヤッと笑った。


「じゃあね、お兄チャン♪」


アキトは目を閉じた。

死の間際に聞く言葉が

こんなふざけた野郎の言葉だなんて………!!


アキトの体にオルグの右手が落ちてくる。







――――――――――ガァンッ!!


「うわっ!!」


オルグが驚くような声と金属が強くぶつかったような謎の音が

同時に聞こえた。


その直後、アキトの近くでズシンッと何かが落ちた。


アキトは目を開けて、自分の足元を見た。


「―――ッ!?」


テッドの半壊した右腕が落ちている。

アキトはすぐにテッドを見ると

何が起きたのか状況を理解した。


オルグはアキトを潰すはずだった右手を押さえている。

テッドは右腕を無くした状態で

何かを投げたような後の姿勢を取っていた。


テッドはアキトを救うために

使えなくなった自分の右腕を千切って

それをオルグに投げた。


投げた右腕が アキトを潰す前の右手に当たり攻撃を弾いた。


そしてアキトを守ったテッドの右腕が

アキトの近くで落ち、役目を終えた。


「テッド!後ろ!!!」


「!?」


満身創痍のテッドがアキトの声で気付く。

後ろを向いていたカズミが

今の起死回生の状況を見てしびれを切らした。

テッドに手刀を向けている。


「『刄色(ステロレイド)』」


テッドは残った左腕をガードにカズミの攻撃を防ごうとした。

だが、カズミの手刀は自身の能力(チカラ)で上乗せされ

テッドの左腕を切り落とした。


「手間かけさせやがって」


カズミは捨て台詞を吐き

腕ごと地面に崩れ倒れようとしているテッドに

止めをさそうと手刀を突き立てる。


一瞬の出来事でアキトは闇雲に叫んだ。


その頭上では再びオルグが

アキトの頭を潰そうと右手が迫っていた。




アキトもテッドも万事休すの状況。




その刹那

二人の間に風が走る。




オルグとアキトの間にトールが

カズミとテッドの間にアツシが

それぞれ能力(チカラ)を発動させる。



トールは左腕の「玄武」の封印を解き

緑色の(オーラ)をまとった「玄武の甲羅」で

アキトをオルグの手から守った。


アツシは『一時停止』の記号をカズミの前で見せ

カズミの動きを一時停止させ

その瞬間にテッドを抱えて逃げた。




「誰ッ!?なんなの!?」


「お前は………!!」


アキトとテッドを仕留め損ねた

オルグとカズミが戸惑って動きを止めた。


アキトは拘束されていたカズミの能力(チカラ)が解けて

トールと共にオルグから距離を取り

先に離れた所にいたアツシとテッドと合流する。


テッドは両手を失いアツシによって

応急の止血処理を受けていた。



トールは初めて見る敵の姿を見て怒りを貯める。

アキトを追い詰め、テッドの傷付いた姿を見て

冷静でいられなかった。


「なるほどな。全員お前の仲間だったのか、アツシ」


「……………久しぶりですね、カズミさん」


「え?」


アツシとカズミがお互いを知っている口振りで話すのに

トールは驚いてアツシを見つめた。


「気にしなくていいよ、樋村くん。

さっ、ここからなんとか脱出しよう」



アツシは立ち上がると

3人をかばうかのように前に出た。


アツシとカズミが 激しく睨みあってるのを

トールは見逃さなかった。

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