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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
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オルグレイヴ

「お前らもそんな体じゃ生き辛いだろう?

俺達の仲間になれば 辛い思いをしなくて済むぞ」


カズミと呼ばれる男はアキトとテッドを勧誘している。


アキトは男が属している組織『ウォンバッド』が

どんなものか知っていた。


自分達の能力(チカラ)を使って

日常生活に潜む事故や事件、災害など

人々が不安や恐怖に陥るのを裏から操り 混乱を与えようとしている。


そんな組織に入りたいと思えるはずもない。

だが、アキトは『ウォンバッド』を解散させようとしている組織

『スクリーマー』の一員であり、この事がバレたら

確実に捕獲され、自分から『スクリーマー』の情報を流れてしまう。

それだけは知られたくなかった。


「そうそう、もう我慢しなくても

たくさん人を殺せるようになるよ♪」


「ッ!!」


オルグは 当たり前のような口振りで言う。


「今はまだ、決められた数しか許してもらえないんだけどねー。

………あれ、ってことは この2人が仲間になったら

ボクの取り分減っちゃうじゃん」


「仕方ないだろう。それにコイツらの返答次第だ」


カズミが アキトとテッドを見つめる。


下手に黙っていると かえって怪しまれると思ったアキトは

『ウォンバッド』も『スクリーマー』も

知らないフリをして話し出した。


「人を殺すのが目的なのか?」


「いや、違う。目的は別にあるが、その過程で

死人が出てしまうだけだ。

好きで人殺しなどしない。オルグ以外は」


「目的はなんだ?」


「『仲間集め』さ」


カズミは2本目の煙草を地面に落として 火を踏み消した。


「さて、どうする?」


アキトの問いかけを切るように

カズミは2人に返答を求めた。


アキトは黙ってテッドを見る。

テッドの眼は ある事を覚悟したような

決意の眼差しをしていた。

それを見てアキトもテッドと同じく覚悟をした。


テッドは両腕を『巨砕躯(ギガディウス)』にさせ

その手をオルグに向けて振り降ろす。

アキトも手を変形させてカズミの方へと刃を向けた。


カズミもオルグも 2人の攻撃に

素早く反応して攻撃をかわした。


「決裂か………残念だ。もったいないが

オルグ、()っていいぞ」


「やったー♪」


カズミはオルグに指示を出すと

3本目の煙草をくわえた。


するとオルグの体が アキトの体形変形と同じ様に

メキメキと骨の軋む音を上げて手を刃のような武器に変形させる。

そこまではアキトの体と同じ『兵器躯(エレメルト)』だった。


アキトはカズミに警戒しながらも

オルグの変形を目にして 眉間にシワを寄せる。


「俺と変わんねえじゃねぇか」


アキトは自分と同じ変形をするオルグを見て みくびっていた。

だが、オルグは変形をさせた手をさらに変形させる。

さらに強固に、大地を割るかのような大剣(サーベル)へと形を変えて

建物の天井を突き破り、破壊した。


天井の破片がバラバラと落ち、砂埃が舞う。

アキトはオルグの変形で造り上げた大剣に目を奪われる。


「なんだよ、あれ!!」


「アキト横に跳べ!!」


気をとられていたアキトにテッドが叫んだ。

反射的にアキトは左側に飛び退き

テッドは右側に飛び退いた。

次の瞬間 アキトとテッドの間にオルグの大剣(サーベル)が降り落ちる。


ズドンッという音と共に床が真っ二つに裂けて足場を崩した。


床に突き刺さった大剣(サーベル)が ボコッと動く。

大剣が脈のように動いた所から

人間(オルグ)の手が生えてビュッと伸びる。


咄嗟(とっさ)に動けなかったアキトの首に

オルグの手が絡んで締め付けた。


「ぐッ!!あぁッ!!」


「アキト!!」


オルグの手に捕まれたアキトを助けようとテッドが走り出す。

巨砕躯(ギガディウス)」の腕でオルグに殴りかかった。


オルグは片手が床に突き刺さって動けない状態でも関係なく

もう片方の手を今度はテッドと同じ「巨砕躯(ギガディウス)」にさせて

甲殻化し、お互いの強固な手がぶつかり合う。


「くっ!!」


攻撃を打ち返してきたオルグにテッドは苦悶の表情をする。

だが、オルグは余裕で笑っていた。

打ち返した手を さらに大きくし

腕から刃が生えてきて、その刃がテッドの右脇腹をかすった。


右脇腹から血が出て、テッドは抑えながらオルグから一旦距離をとる。

一方、オルグの手が絡み付いて動けなかったアキトは

テッドがオルグに攻撃をしかけた瞬間に

絡み付いていた手を自分の刃の手で切り刻み、

解放されたのと同時に距離をとって逃げた。


「テッド!大丈夫か!?」


テッドは「大丈夫」とアキトに目配せをする。

アキトはオルグの体形変形を目の当たりにして汗を流した。


「くそッ!『兵器躯(おれ)』と『巨砕躯(テッド)』の体が

一緒になってんのかよ……!!」


「その通りだ……!」


アキトはオルグを(にら)む。

オルグの正体はアキトの「兵器躯(エレメルト)」と

テッドの「巨砕躯(ギガディウス)」 を兼ね備え、

しかも同時に使える人間兵器だった。


テッドの顔から冷や汗が流れる。


「なぁに?まさか ビビってるんじゃないよね?お兄チャンたち♪」


オルグは両方の手を元に戻し始め

何事もなかったかのような顔をする。

テッドは 過去の記憶に浮かぶ

オルグの姿を思い出して言った。


「………『神刻器(オルグレイヴ)』」


テッドは 険しい顔でオルグをみつめる。


砕けた天井からは

まだパラパラと細かい破片が落ち

床は不自然な形で えぐられ地面に亀裂が入っている。


薄気味悪く笑うオルグは

両手を前に出して変形を始める。


「せっかくだから楽しませてよ!お兄チャン♪」


アキトの体形変形とも

テッドの甲殻化とも違う、変形を見せるオルグ。


2人の目の前に『怪物』と呼ばれた

神刻器(オルグレイブ)』の姿が現れた。


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