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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
183/228

遭遇

2人しかいないはずの施設の跡地に

甲高い笑い声が響いた。

アキトとテッドは気付いて 笑い声が聞こえた方へ振り向いた。


「誰だッ!」


「やめろ、アキト!今すぐここを出るぞ!」


威嚇するアキトの肩を抑えて

テッドとアキトは廃墟を出ようと外を目指して走り出した。


声のした方向とは反対の通路を使って外に出るつもりだった。

だが、その通路を塞ぐように一人の男が立っている。


「ッ!!」


アキトとテッドは 立ち止まる。

後ろを見ると、笑い声を上げた人物が近寄ってくる。

アキトとテッドは 見知らぬ2人の人間に挟まれ逃げ場を失った。


「ほぉーら、言ったとおりじゃん!!

ネズミ以上の獲物がいるって♪」


「どうやら、廃墟オタクといった一般人ではなさそうだな」


アキトとテッドを挟んで2人の人間が会話をする。


テッドは甲高い声で話す人間の方を見た。

アキトは手に力を入れて

いつでも脱出する隙を作れるようにと男の方を見た。


男の方がアキトとテッドに一歩近付く。


「これは……久々のアタリかもしれないぞ。

捨てたはずの生家をナワバリにしておいて良かったな、オルグ」


「そっちの背の高いヒト、おんなじ匂いがするんだよねぇ」


声の高い人間の方がアキトを指差した。

薄暗くて顔や風貌が把握できないでいたが

近寄ってきた事で謎の2人の顔が見えてきた。


アキトを指差してる人間は

背格好は まだ成人に満たない。

アキトと一緒くらいの歳か少し下の青年。

あどけない顔付きとは裏腹に

薄気味悪い笑顔を浮かべ、その奥には様々な「厄災」を溜め込み

解き放つのを今かと待ち望んでいる。


反対にいる人間は見た目は

普通のサラリーマンといった濃紺のスーツ姿。

髪の毛はクシャクシャの天然パーマ。

不精髭(ぶしょうひげ)を生やし、ポケットから煙草を取り出して火をつけ、ふかし始めた。


「さて……と、手荒な事はなるべくしたくないんだが。

どうする?俺の問いに正直に答えてくれるか?」


口から煙草の煙を吐きながら男は2人に言う。

アキトとテッドは互いに背中を寄せあい

謎の2人の人間に警戒する。


「ここに来た目的は?」


「………………………」


アキトもテッドも黙っていた。


「ふむ、まぁいい。ここで何をしていた?」


「ねーねー、カズミー!こんなの落ちてたよー!」


青年の方がいつのまにか、アキトの千切れた左腕を持っていた。

それを見てアキトもテッドも 表情を焦らせる。


「なるほど。施設(ここ)のモルモット達か。

確かにネズミ以上だな」


「キャハハハハハッ」


青年の方は笑いながらアキトの千切れた左腕を

投げて遊んでいた。


「それで、古巣に戻って何しに来た?

親探しか?復讐か?仲間探しか?」


「ねーねー、カズミばっかりしゃべってるよ」


「そうだな。さてどうする?」


男は煙草を地面に落とした。

足で吸い殻をジリッと踏みつける。


「正直に答えれば、質問を続ける。

答えてもウソだとわかったらオルグが首を跳ねる。

このまま黙り通すなら俺が消す」


男の問いには明らかに

アキトとテッドを追い詰める殺気が放たれていた。

青年の方も顔をニヤつかせている。

アキトはテッドの目を見た。

テッドは ゆっくりと瞬きをして

「俺が話す」とアキトに合図した。


「……………探し物でも復讐でもない。

アキト(コイツ)に自分の体の事を教えるため

人気(ひとけ)のない場所で話したくて ここへ来た。

それと………お前の存在を教えるために」


テッドは青年の方を指差した。

アキトは訳がわからない顔をして、テッドに聞いた。


「どういう事だ?まさか……」


「さっき話したヤツだよ。

アイツが施設(ここ)を破壊した………………俺達と同類の人間」


血塗れた『(おり)』の主で

研究者達が生み出し、施設を滅ぼし、

テッドを解放した『怪物』。

それが今 目の前にいる青年だった。


容姿からはとてもそんな事ができない体つきをしている。


「あれー、ボクの事知ってるの?

ってことは、あの日 うまく逃げ出した人かぁ。

でも、そっちの人はボクの事知らなかったって事は………」


「まぁいい。それで、オルグの事を教えて

何をしようとしていたんだ?」


男は『オルグ』と呼んでいる青年の話を割って質問を続けた。

オルグは話を割られてムスッとした。

テッドは緊張で(ひたい)から汗を流しながら答えた。


「………俺達以外にも まだ生き残りがいる事を

アキト(コイツ)に教えたかった。

俺にとってはお前は恩人だから」


テッドは上手く悟られないよう本心を隠した。

本当は『怪物(オルグ)』の存在を教えて

アキトと一緒に倒すのが目的だった。


だが、ここで正直に話せば自分達の命に関わる。

恩人である、という気持ちにウソはないテッドの言葉は

オルグと男を上手く騙せた。


「良かったな、オルグ。

お前にそんな善人的な心があったのか」


「んー??あの日の事そんなに覚えてないんだよねー」


「まぁ、いい。それなら話が早い」


男は2本目の煙草を口にくわえて火をつけた。

フゥッと吐いた煙が アキトとテッドの方へ流れていく。


「俺たちの仲間になれ」


「!!」


アキトもテッドも 薄々と感じていたが間違いなかった。

アキトとテッドの体を改造した施設に目をつけていた組織の人間。


さらにアキトにとっては

ハルマを狙い、『スクリーマー』に敵対する組織の人間。


『怪物』と呼ばれるオルグはすでに

その組織の手中にいる。



「さて、どうする?」



男から殺気はなかった。

だが、断れば その場ですぐに

自分達の首が地面に落ちるであろう事を

容易に想像させられた。

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