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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
182/228

怪物

「………まぁどのみち人は殺せねぇんだ。

兵器として機能が成り立たねぇから『失敗作』だよ」


「なんだ、気にしてるのかと思ったのに。ひねくれた男だな」


「さっきは素直な男だって言ってたくせに」


「フッ」


アキトは体の調子が戻ったためか

テッドに手足を潰された怒りは すっかり消えていた。


「あとな、暴走を抑える方法ならとっくに見付けてたよ。

もうひとりの俺が意識の中から俺を抑えるって方法をな!

もっと良い抑え方があるのかと思って付いてきたら とんでもねぇ!

いちいち手足 千切ってたら周りが引いちまうだろ」


「そうだったか」


テッドは静かに笑った。

アキトはテッドが笑う度にイラッとしたが

何故か憎めなかった。


「まぁ、究極の応急措置って事で あの女医に伝えておくか。

これで殺されずに済むからな」


「女医?」


「お前にゃ関係ねぇよ」


アキトは 廃墟と化した施設を見渡した。

主人格のアキトは覚えてないが

別人格のアキトは覚えていた。


自分が生まれた部屋。

実験を行った部屋。

処分が決まって最後に連れてこられた部屋。


「…………?」


施設を見渡している内に

知らない部屋を見つけ、覗きこんだ。


「なんだ………これ」


その部屋は 辺り一面 黒ずんだ血の跡で塗られていた。

床には まるで猛獣を抑えるために使われていたような

重りの付いた拘束具が 4つ落ちていた。

拘束具の鎖はバラバラに外れている。


アキトが知らない部屋を見ていると

テッドが後ろから声をかけてきた。


「お前が施設を去ってから作られた(おり)だよ」


(おり)?」


研究者(やつ)らは、とんでもない怪物を生み出した。

その結果、怪物によってここは滅んだんだ」




―――――――――




トールはアツシと共に

アキトとテッドがいるであろう場所へと向かっていた。


アツシはバイクを運転しながら

後ろに乗せているトールに話しかけた。


(あね)さんから話はだいたい聞いてるけど

その桐谷ってコ、改造人間なんだって?」


「はい。………………あの、葉山さん」


「何?」


「『スクリーマー』には何人の能力者がいるんですか?」


トールは『スクリーマー』の事をサキから聞かされ

組織の末端として加入したものの

これと言って何かをしているわけではなかった。


ただ、日常生活を送り なるべくハルマの側にいるようにして

いつ『ウォンバッド』の人間が襲ってきても

対処できるように心掛けていた。


『スクリーマー』に入ってから およそ4ヶ月。


アツシに出会い、ツカサに出会い

また『ウォンバッド』の情報を持っているかもしれないと

ツカサに連れてこられたテッド・フォスカーに会い

これから先、もっと深い所まで足を踏み入れるのではないかと

トールは思っていた。


「そーだなぁ…………どこまで話していいのかな。

あんまり話すと(あね)さんに叱られちゃうしな」


「人数だけで大丈夫です。名前や能力とかは今はいいので」


「んーと、まず俺達のトップが1人いるんだ。

でも指揮を取ってるのはだいたい(あね)さん。

(あね)さんとツカサさんがいて

それと………あと3人いるんだけど、それぞれ『持ち場』が決まってて、あまりこっちには帰ってこない。

んで、ハルマを入れた君達5人と、薄野(すすきの)くん達5人」


「…………………えっ!? 16人だけなんですか!?」


「俺を忘れちゃ困るよ。17人」


トールは驚いていた。

組織と聞かされ もっと人数がいるものだと思っていたら

自分を入れて たったの17人という事実に耳を疑った。


「……前はね……もうちょっといたんだけど」


アツシの声が暗くなった。

それを察してトールは気まずくなる。


「いや、死んだんじゃないよ?

ただ、向こうの奴らにやられて戦線に立てなくなっただけ。

(あね)さんのいる病院の特別病棟で療養中」


「そ………そうなんですね」


「怖くなった?」


「い、いいえ!」


トールは怖じ気ついてはいけないと気を引き締めた。


気が付くとアツシとトールがバイクで走っている道の周辺は

建物が少なくなり、枯れた田んぼや畑などで

淋しい土地になっていた。


「んーと、もうちょい先だな」


アツシはツカサからもらった地図の

バツ印を確認して

スロットルを回した。




――――――――――




「怪物って………ここにいたヤツが?」


アキトは『(おり)』と呼ばれた部屋を指差して言う。

テッドの話す『怪物』はアキトが生まれた施設を滅ぼした。


「まぁ………そいつのおかげで、俺はここを逃げ出す事が出来た。

両親の元に戻り、祖国に逃げるようにかえった」


テッドは自分が施設にいた時の事を思い出しながら話を続けた。


「俺が……日本(ここ)に戻ってきたのは

確かにツカサと出会ったのがキッカケだった。

だが、時が来たら俺は施設(ここ)に来て

『怪物』の行方を追うつもりでいた………。

あんなモノ、存在しててはいけない。

恩人(・・)とはいえ、心は許してはいけない」


「ちょっと待て。恩人(・・)だと?『怪物』じゃねぇのかよ。

それに、ここを壊していってもう何年も経つんだろ?

その間、その『怪物』はどこで何してんだ。

こんだけ建物めちゃめちゃにしておいて

世間に問題になってねえなんて おかしいだろ」


テッドの話を聞いたアキトは頭の整理がつかなかくて

テッドに聞き返した。

テッドがアキトの問いに答えようとした時だった。




『キャハハハハハッ』




「!?」




廃墟と化した施設に

アキトとテッド以外の何者かが

知らずに侵入していた。

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