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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
180/228

アキト VS テッド ~本当の能力~

テッドが『巨砕躯(ギガディウス)』の両腕をアキトに向ける。

アキトはテッドに『傷付けなければならない』と言われ混乱していた。


「傷って…………なんでだよ!

その手じゃないと出来ない事なのか!?」


「生半可な傷じゃ意味がない」


テッドがゆっくりとアキトの元に近付く。

アキトは後ろに下がるが部屋の隅に追い詰められる。


『替われッ!!』


「――!」


別人格のアキトが叫んでくる。


「戦うのか?」


『仕方ねえだろ。アイツが何を考えてんのか知らねえけど

どのみちお前のままじゃ グチャグチャに潰されて終わりだ!』


「……それもそうだな」


話がついたアキトは体を別人格の方に譲った。

アキトはすぐに手を変形させてテッドに向けた。


「悪いが お前の魂胆が見えない以上


黙って傷つけられるわけにはいかねえ」


「それでもいい。その方が都合が良いかもしれないからな」


テッドの言葉が切れたのと同時にアキトは

テッドに向かって駆け出し斬りかかった。


テッドは右手でアキトの攻撃をガードし

ガキンッと金属音のような音が響く。

テッドの『巨砕躯(ギガディウス)』の手は

もはや鋼鉄の装甲と かわりなかった。


テッドは左腕をアキトに向かって降り下ろした。

アキトはすぐに避ける。

テッドの左腕は地面に落ち、ズシンと響く音と共に

亀裂が走り 地面は砕けた。


テッドは間を置かずに

避けたアキトを右手で掴もうと手を伸ばした。


アキトは後ろに飛び退き

テッドの右腕をかわすと、使われなくなってホコリを被っていた

部屋の家具を次々と倒したり 斬り刻んだ。

部屋はあっという間にホコリが舞いテッドの視界を奪う。


テッドは視界を奪われ、アキトを見失っても

慌てることなく その場で動かず目をつぶった。


「無駄だ、アキト。お前の殺気が居場所を教えている」


「―――チッ」


アキトは巨大化したテッドの腕を利用して

テッドから死角になる右脇下のところまで近付いていた。


テッドは右腕を大きく力を込めて降り下ろす。


アキトを狙ったのではなく

元から地面を崩し 足場を悪くするのが狙いだった。

テッドの思惑どおり、地面は広範囲で碎け

さらに砂埃(すなぼこり)が舞い上がる。


アキトはテッドに近付けず その場で止まり

ホコリから顔を守るように両腕を前に出した。


視界はさらに悪くなる。

テッドの姿がわからなくなり

アキトはひとまず後ろに下がった。

部屋の壁に背中を合わせておけば

後ろから襲われる事はないと思い、部屋の端へと行く。


壁に背中を張ってテッドの様子を伺った。

気配がしたらすぐに身を(かが)めて

脚を狙おう、とイメージしていた。

だが、気配を感じる間を与えないほどの速さで

正面からテッドの張り手が襲ってきた。


アキトの体はテッドの鋼鉄の手と壁に挟まれる。

アキトは押し潰された衝撃で悲鳴を上げた。


テッドがゆっくりとアキトから手を離す。


アキトの体が壁をつたいながらズリズリと地面に落ちる。

右脚がおかしな方向に曲がり

両腕も肩が外れているかのように全く動かせず

両腕を武器に変形させたまま

テッドの攻撃で体を潰されたので、刃状にしていた手の先が

欠けて無くなっていた。


(いま)だかつてない程のダメージを体に受けたアキトは

汗だくになり、テッドを(にら)んだ。

腕と脚を折られ立ち上がる事ができない。


「クソッ…………」


(にら)むアキトに目を合わせながら

テッドはアキトの折れた左腕を掴んだ。


「なっ……なにしやがる」


テッドは黙ったまま掴んだ手に力を入れる。

アキトの左腕がミシミシ音を鳴らした。

それと同時にアキトは酷い激痛で叫び声をあげた。


テッドはアキトの悲鳴を聞きながらも

手の力をゆるめなかった。

そして…………………。


ブチッ、と束ねた繊維が切れるような音がした。


真っ赤な血と共にアキトの左腕が地面に落ちる。


アキトの断末魔のような悲鳴が響く。


「クソッ………クソッ!!なんなんだよッ!!

始めっから殺すつもりだったのかよ!!」


テッドに裏切られたように思ったアキトは

怒りで興奮し、荒い息を立てる。


折られた所以外の体でテッドを攻撃しようと

体に力を入れた時だった。


テッドは『巨砕躯(ギガディウス)』の腕を元に戻していった。


「アキト、今、力を入れてる体の組織を

折れた手足に移動させてみろ」


「ッ!?」


「出来るだろう?体形を自在に操れるのが

兵器躯(エレメルト)』の特徴なんだからな」


テッドはアキトの前に座った。

アキトは半信半疑に思いながらも

力を入れていた所を、まず右腕に移動させた。


折れた右腕がビクンッと動き

メキメキ音を鳴らしながら形が元に戻っていく。


1分ほどで右腕は元の、破壊される前の通常な腕に戻った。


初めての事にアキトは驚き

右腕を動かして戻った事を確認した。


「まさか………こんな事ができるなんて……」


「右脚もやってみろ、アキト」



アキトは右脚も同じようにやってみた。

腕よりは時間がかかったが元通りになった。

テッドは戻った右腕と右脚を見てアキトに告げた。



「『兵器躯(エレメルト)』の本当の力は自己生産能力なんだ」


「自己生産………!?」


アキトは千切られた左腕を見る。

まさか……、と思いながらテッドに視線を向けた。


「やってみろ」


テッドはアキトの腕の再生を

静かに見守った。


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