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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
175/228

ユエ VS サラ 2

「いいか、桐谷。いきすぎた愛ってのは

相手を追い詰めて苦しめるだけなんだぜ?」


「なるほど」


「なんか ハルマんが愛の指南するのって似合わないわ」


ハルマ達は ユエに攻撃され、(ショックのあまり)倒れたツカサを見て

しょうもない……と ため息をついた。


「ったく、審判が倒れてどーすんだよ!」


「とりあえず邪魔だから端に寄せよう」


「………アッキー、今『邪魔』ってハッキリ言ったね………」


ハルマとアキトはツカサの体を引っ張って

屋上の(すみ)へと運んだ。




――――――――




「(信じられないわ……!

平気で自分も自分の肉親も攻撃できるなんて………!!)」


サラは射たれた右肩を押さえている。

ユエはあえて矢の威力を抑えていたので

矢は体を貫通していないが

強い衝撃を与えたのは確かで、サラは右腕を上げることができない。


サラは変身能力を解いて元に戻った。


「(なるほどね……。

お兄様との間に何があったのかはわからないけど、

貴女、自分を犠牲に出来るタイプの人って事は

仲間を大事にする人なのね?)」


「…………!」


サラは ユエの性格を見抜くと

すぐに視線を観戦側にいる 4人に向けた。

サラは 企みのある笑みを浮かべる。


「(誰にも言えないような同じ境遇の仲間に異性がいる場合、

おのずと恋愛感情が沸くのも その仲間の中にいるものなのよね)」


サラは次に変身する人間のターゲットを

ハルマ、トール、アキトの3人に(しぼ)る。


その中でサラが最初に眼を合わせたのが、アキトだった。

サラはアキトと眼が合った瞬間に『アキト』に変身した。

ユエはサラの企みに気付く。


「(好意を寄せる異性なら攻撃が出来ない、と思ってるのね?)」


ユエは『アキト』に変わったサラを睨んで

手に力を入れた。


「(貴女はずるい人ね……サラ。

自分から行く事をせず、身を守るために

他の人を壁に出来るなんて)」


もしユエがサラを攻撃すれば

次はアキトが攻撃をくらうことになる。

ユエは 弓矢を構えたもののためらっていた。


それを見ていたハルマ達も心配そうになる。

ユエは『アキト』を攻撃してしまうのだろうか。


「武藤!」


「……!?」


アキトがユエに向かって叫んだ。

ユエと『アキト』になったサラが

アキトの声に気付いて振り向くとアキトは髪をかき上げた。

上げた髪を後頭部に流すと、もうひとりのアキトに入れ替わる。


アキトの事を知らなかったサラは

入れ替わった時に放つ もうひとりのアキトの殺気に驚く。


ユエもなぜアキトが

もうひとりの自分に入れ替わったのかわからず、顔をしかめた。


「―――ったく、都合よく入れ替わりやがって……」


別人格のアキトは 入れ替わった主人格のアキトに悪態をつく。


「おい!武藤!さっさと俺のままコイツをのしちまえ!!」


「!? 何を言ってるの、桐谷くん……」


「早くしろよ!『他の事』に気付かれる前に

決着つけろって言ってんだよ!!」


アキトが もうひとりの別人格に変わったのは

『別人格の方ならば少しは攻撃がしやすいのではないか』という

思いからだった。


それと もうひとつ。

ユエの為を思ってアキトは自分が犠牲になることを

すぐに考え、行動に出た。


サラが ユエの本当の想い人に気付く前に。


もしサラが 気付いてしまえば

ユエは アキトよりも攻撃しにくい人物を

攻撃しなくてはいけなくなるから。


ユエは 少しためらいながらも決心する。

『射手座』の弓矢を消し、別の星座の力を呼び起こす。


「『山羊座(カプリコーン)』!!」


ユエの手から山羊の(つの)をモチーフに造られた(やり)が現れ

ユエは槍を両手に持って構えた。


『射手座』の矢ではサラの『反射』の力で打ち消されてしまう。

そう思ったユエは 接近戦が可能な『山羊座』の(つの)の槍に

武器を持ち換えてサラに迫った。


「(なんなの!?あの男!人が変わったと思ったら……!

貴女までなんなのよ!)」


サラは『アキト』のまま、訳がわからないというような顔で

迫ってきたユエの攻撃に対し応戦をする。


サラは槍の先に手の平を向け

当たる寸前のところで、弾いていく。

ユエは何度か攻め続けていくうちに

サラの能力(チカラ)に気付いた。


まず、変身能力は変身する相手の姿形(すがたかたち)になるだけで

その人間の能力(チカラ)までは使えない事。


そして反射能力は サラが反射させたいものを目視して

手を前に差し出さないと出来ない事。


つまり、サラ自身から攻撃する手立てはない。


仮にサラが『ユエ』に変身し、

自分の体を傷付ければ ユエ自身も傷がつくという

自己犠牲型の攻撃方法もあるが

先程、サラは『ユエを傷つけることは本位ではない』と言っていた。


サラは ユエの顔や姿を気に入っているから。


それを踏まえ、ユエは『アキト』の姿をしたサラを攻撃し続けた。

隙を見付けて突いてしまえば態勢は有利になる。


アキトの思いに甘え、『アキト』の姿をしたままの状態で

サラを倒したかった。


だが、ユエの手から『山羊座』の槍が消えてしまう。


「あっ……!!」


ユエの武器が消えた途端、サラはすぐに

ユエから距離をとって大きく離れた。


「何やってんだ!!」


別人格のアキトがユエに向かって吠えた。


「ごめんなさい……!『山羊座』はまだ使いこなせていないの……!」


ユエの星座の力を操る能力(チカラ)

まだ完璧ではなかった。

そのため『山羊座』の槍を維持できず、限界がきて消えてしまった。


ユエは焦りの表情を浮かべてしまう。

サラはそれを見逃さなかった。


「(この男じゃなかったのね)」


サラは ハルマとトールの方を見る。

眼が合ったのはトールだった。

合わせた瞬間、サラは『トール』になってしまう。

ユエは焦りの顔をさらに暗くした。


「…………ッ」


「(どうやらアタリみたいね)」


サラが『トール』の顔でクスッと笑った。




―――――――――




「クソ!ちまちま攻めてやがるからだ!

あれじゃもう勝ち目ねえぞ!」


別人格のアキトは悪態をつく。


「大丈夫だよ、桐谷君」


「はぁ!?」



トールは 何かわかっているような口振りで言った。


トールは随分と前からユエの戦いをずっと黙って見ていた。

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