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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
173/228

ユエ VS サラ

「嗚呼………いつ見てもなんて美しいカードなんだ!

俺は22枚のタロットカード全てを愛しているが

特にこの『月』だけは格別!

闇夜を照らす柔らかな月光が、悲しみに暮れる独りの美少女の髪を

優しく撫で、希望へと導く道しるべとなり

迷える愚かな子羊(おれ)の心を救いだし、大いなる世界へと………!

嗚呼、できる事なら引きたくなかった……

引けばユエは戦場へ行ってしまう………

だが、これも運命(さだめ)なのだよ!ユエ!!」


「うるせえ!!!」


「ぐふぁッ」


どっぷりと自分の世界に浸っていたツカサを ハルマは殴った。


ユエは 兄の言葉に耳を貸さず、

とっくに屋上の真ん中で待機していた。


ユエの相手、サラ・カミラもユエに続いて歩き出していた。


「お前……そんなんでちゃんと審判できんのかよ。

武藤がピンチになる度に嘆きだしたら殴るからな!」


ハルマはツカサを(にら)む。


「ふっ、ふふ……心配には及ばないよ。

ちゃんと『審判』のカードを持ってるからね」


ツカサは『審判』のタロットカードを持ってユエとサラの前に来た。


「よし、じゃあ握手をしたら始めてくれ」


ユエとサラは お互いに見つめあい、握手を交わすと

一旦距離をとって向かい合った。


サラ・カミラはアメリカ人の留学生で

とても大人しい性格の女子だった。

普段は 2年B組にいて特に目立った話題も上がらず

特別学級の時も 静かだった。


挨拶をしたり、日常の簡単な会話をするくらいの交流しか

いまだにとったことのないサラを

何かの能力(チカラ)を持った能力者であることを知った時は

信じられないとばかり驚いた。


だが、能力者と言っても見た目は皆 至って普通の人間。

人を見かけで判断できるものではないということを感じたユエは

大人しいサラが どんな形で迫ってこようと

油断しないよう気を引き締めた。


サラの様子を伺っていると、サラもユエの様子を伺っている。


このまま(らち)のあかない状態が続きそうだと思ったユエは

様子見をやめて自分から先制することにした。


ユエの両手に(ひかり)輝く『射手座』の弓矢が具現化された。


ユエは弓矢を引き、手を離すと光の矢が3発 一気に放たれた。

矢は真っ直ぐサラへと跳んでいく。


するとサラは避けずに右手を前に差し出した。

その瞬間、ユエの放った矢はサラに当たる前に

何か(・・)に弾かれるようにして消滅した。


「……!?」


ユエは 小手調べに放った矢が消えて目を大きくさせたが

油断はしないと心がけていたので、またすぐ次の矢を放った。


3発の矢を同時に放つ。

すると、またサラはさっきと同じで右手を前に出す。

当たる直前(・・)で矢は再び弾かれるように消滅した。


「何かしら……あれ……」


サラの手から矢を打ち落とすような攻撃は見えなかったし

身を守るようなバリアも見えない。

ただ右手を前に差し出しただけで、それ以外は何もしていない。

サラから仕掛けてくる様子もなく

ユエは攻撃するのを止めて立ち尽くした。


「ユエー!」


「……!」


クリフが満面の笑顔でユエの名前を叫んで手を振ってきた。

ユエは 一瞬だけクリフを見て すぐに目線をサラに戻した。


「(貴女によそ見をされると困るのよね)」


「えっ?」


サラがユエに向かって話し出した。

サラはまだ日本語がしゃべれないので自国の言葉で話す。

ユエは英語も英会話も得意なのでサラが何を言ってるのか聞き取れた。


「(もっと私を見てほしいのよ)」


「(……それは どういうことかしら?)」


ユエはサラに合わせて英語で話し出した。


「(私の攻撃を消した事に関係があるみたいね。

それが貴女の能力なの?サラ)」


「(そう。私は貴女を映すの)」


「(映す………?)」



ユエとサラの会話が続いているが

ハルマ達は2人がどんな会話をしていいるか さっぱりわからない。


「おいツカサ、あいつら何言ってんだ?」


「よく、見ててごらん。サラの能力(チカラ)が明らかになるところさ」


ツカサはハルマの視線をユエとサラに戻させる。


ユエは弓矢を構え手を引いた。

引いた右手のと矢の先から 光が強く輝く。


手を離して矢を放つと

1発だけど威力のある光弾となって跳んでいく。

先程のような相殺が出来ないくらいの光弾をユエはあえて放った。


サラは避けずに右手を前に出す。

ユエの光弾はサラに当たる手前で先程と同じように

バシュッと音を立てて消えてしまった。


「また!?なぜ……!」


「(言ったでしょ?私は貴女を映すのよ)」


サラはクスッと微笑むと

ユエに向かって前に歩き出した。

ユエは攻撃を消され、近付いてくるサラに動揺して

弓矢を構えて威嚇しながら後ろに下がる。


「(貴女の『眼』は見せてもらったわ。

大きくて透き通った綺麗な瞳よね………羨ましい。

私も貴女みたいになりたいわ)」


「!?」


近付いてくるサラの様子がおかしくなる。

サラの体が一瞬だけ(まぶ)しい光を放つと、

そこにいたのはサラではなく『ユエ』だった。


ユエは息を飲んだ。

目の前に自分が現れ、自分を見つめている。

驚きで声がでなかった。

するとユエの前に現れた『ユエ』がクスッと微笑んだ。


「(どう?貴女の姿よ)」


『ユエ』からサラの言葉が聞こえ、ユエは我に返った。


「サラなのね……!それが貴女の能力(チカラ)




観戦側のレミが驚いて声を上げた。


「ユエちゃんが二人いる!!」


「変身能力とかか?あれ」


「でも、それだと最初に武藤さんの攻撃を消したのは いったい……」


レミ、アキト、トールは

『ユエ』になったサラを見て、口々に話し出す。

ふと、トールがツカサを見るとツカサは右手を口に当てていた。

ツカサの目から涙が溢れている。


「ハルマ…………武藤さんのお兄さんが………」


「もう ほっとこうぜ」


ユエが二人になった事で感涙して泣き出す兄をよそに

ユエは サラの能力(チカラ)に警戒して立ち尽くしていた。



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