レミ VS メイ 3 ~レミ、反撃する~
大量の蜂が教室内を埋め尽くした。
メイは手を動かすだけで 蜂の群を操る事が出来る。
レミは絶叫したあと逃げ場のない教室の壁に背中を付け
顔を青ざめさせ、震えだした。
レミの様子を見たメイは フゥとため息をついた。
「……和这种人交往我感到无聊」
「……え?」
メイは 中国語で何かを呟いた。
レミはメイが 何を言ったか理解できなかったが
表情を見る限り、自分を貶している言葉なのだろうと感じた。
「和这种人交往我感到无聊。
クダラナイ アナタタチ。ワタシ ツマラナイ」
「………!!」
メイは片言の日本語で
自分の気持ちをレミに伝えた。
逃げてばかりで戦おうとしないレミに対して
侮辱するかのように言った。
「あなた……達?」
レミの自分が侮辱された事よりも 許せない言葉を聞いた。
「ア、アンタなんかね!ハルマんの電気なら一瞬でカタがつくし
トール君やアッキーだって強いんだから!!
ユエちゃんだって必死で星座の力を
使えるようにって努力してんのよ!
それを………あたし一人だけで勝手に決めつけんじゃないわよッ!!」
レミは 自分の情けない行動のせいで
親友や仲間まで「くだらない」と言われてしまった事に怒りを感じた。
何より、自分のせいで仲間を侮辱された事に自責の念を抱いた。
気が付けば体の震えは止まっていた。
大量の蜂と、メイの姿に気を取られて忘れていたが
レミの手には「虫」に対抗できる天然石が握られていた。
メイが仕掛けてくる前に
レミは手にしていた石を口に入れて飲み込んだ。
メイは「しまった!」というような顔をして
右手を大きく振り上げ、従える蜂の群を動かした。
蜂の群が一斉にレミの元へ飛んでいく。
レミは両手を前に差し出し、その手から風を巻き起こした。
室内はレミの起こした風で気流が乱れ
蜂の群は風に捕らわれて あちこちに飛ばされていく。
メイは レミの風に飛ばされる事はなかったが
風の影響で目が開けられず、腕で顔を守る姿勢で立ち尽くした。
あらかた蜂を追っ払い、メイが動けないのを確認するとレミは隙を見て
教室を出ていく。
レミが逃げたのに気付くと メイも教室を出た。
「……ッ!」
メイは レミが背中を向けて逃げているかと思っていたが
教室を出た先の廊下でレミが構えて待っていた。
レミは 少しずつ冷静さを取り戻していた。
まだ虫への嫌悪感はあるが
それよりも、仲間の名誉を挽回したい思いでいっぱいだった。
「あたしってば、すっかり忘れてたわ。
『ハルマんの電気なら一瞬』って、そうよね、そういうことよね!」
レミはポーチから『トルマリン(電気石)』を取り出し、飲み込んだ。
からだ中に 電気をまとわせると
レミは すぐに駆け出した。
「ッ!?」
一瞬の速さでレミはメイの真横まで接近する。
メイは レミの接近に気付いたが反応が遅れ、レミの拳をくらった。
咄嗟に避けたが、背中から生えていた蜂の羽が千切れ
メイは地面に倒れる。
メイの側を飛び交っていた 蜂たちが
レミを攻撃しようと向かっていくと
レミは目に見えないほどの速いジャブを何発も撃ち、
蜂たちを落としていった。
メイの体が元の姿に戻る。
メイは体を起こしてレミを見た。
先程まで、青ざめて体を震わせて逃げていた人物とは
違う人物に見えた。
レミは闘志を燃やし、メイに立ち向かう姿勢でいる。
「悪いけど、石の効果がなくなる前にいかせてもらうわ!!」
レミは再び「トルマリン(電気石)」の力を借りて
高速移動をしメイに近づく。
メイは両手で体をガードし、レミの攻撃を防ごうとする。
だが、電気の力を帯びたレミのパンチがメイの全身を貫く。
痺れを感じ、体勢を崩したメイに
レミは容赦なく攻撃をたたみかける。
今まで逃げてばかりで反撃が出来なかった分を
一気に取り戻すかのように撃ちまくった。
攻撃していた右手の速度が落ち
「トルマリン(電気石)」の効果が切れたのに気付いたレミは
メイから一旦離れて距離をとったところで構え直した。
メイは よろけながら
なんとか両足で体を支えて立っていた。
レミをギロッと睨むと、
虫を入れてる缶を取り出して、手に乗った ある虫を口に放り込む。
メイの脚が 長く伸び、そして折れ曲がると
地面を踏み込むような姿勢に変わった。
「!!」
メイが踏み込むと 踏み込んだ地面は めくれあがり、
ものすごい勢いで跳んで、レミの体に体当りしてきた。
レミは全身で体当りをくらい
大きく吹き飛ばされ、そこで横に倒れた。
「くっ………何よ、あれ!!」
メイの脚は「飛蝗」の状態で
次なる攻撃をしようと踏み込んでいた。
「ま、………敗けるもんですか!!」
レミは 立ち上がった。
さっきは逃げていた分の反撃を返せたが
次は、侮辱された仲間の名誉を戻すため。
一矢報いたい。
レミは構えてポーチの中から石を取り出した。
レミが風を巻き起こした石は『ジルコン(風信子石)』です