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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
165/228

ハルマ VS パウロ 3 ~ ハルマ、弁償する ~

「ダァーーーーーーーーーーーーッッ!!!」


ハルマは自分の放った電気球に追いかけられ

叫びながら逃げる。


さきほど、ボール同士をぶつけさせて相殺させたようにやるしかない。


そう思ったハルマは すぐに右手から電気球を作って投げた。


電気球同士がぶつかり合い その場で炸裂する。

その衝撃は凄まじく、激しい炸裂音が響き渡り

弾けた時の空気の振動で近くの窓がビリビリ唸り、ヒビが入ったり

ガラスが割れて破片が散った。


ハルマは自分の放った技の破壊力に冷や汗をかかされた。




―――――――



「パウロ君を倒すなら

右足を狙うかパウロ君自身を戦闘不能にしなくちゃ意味がない。

だが、パウロ君には黒人特有の強靭な筋肉のバネと

並外れた動体視力がある。

ハルマ君の高速移動は普通の人の動体視力じゃ捕らえられないが

パウロ君の目ならハルマ君が普通に走っているように見えるんだろう」


パウロは最初のハルマの高速移動を見切っていて

素早く体勢を変えて右足のキックを喰らわせた。


「パウロ君はサッカーが大好きなんだ。

でも、とても貧しい村の家で生まれてね

ボールを手に入れる事すら難しい環境で育ったんだ。

それでもサッカーをしたかったパウロ君は

石や 木のクズや 落ちてるゴミなんかをボールの代わりに

蹴って練習してたらしい。

気が付いたら今の能力(チカラ)が身に付いていたと言ってたよ」


ツカサはトール達に パウロの能力(チカラ)の経緯を話した。



トールは能力者には 2種類のタイプがある事を

教えてもらっていた。


生まれつき能力(チカラ)を備えて生まれてきた『先天的タイプ』と

環境などの関係で後から能力(チカラ)が備わる『後天的タイプ』。


パウロは 環境によって後から能力(チカラ)が備わった

後天的タイプであると すぐにわかった。


後天的タイプの能力者のほとんどは

自分の能力(チカラ)を理解している。

自分の好きな事柄から能力(チカラ)に目覚めるパターンが多いから

自分の事を理解していて

自分の能力(チカラ)に不信や疑いを持たない。


後天的タイプの能力者の強みは そこにある、とトールは感じた。



――――――――――



ハルマは 荒い呼吸をしながら

パウロを(にら)み付けた。


高速移動と電気球の連発で自分の血が少なくなっているのを感じ、

このまま同じ事を繰り返していれば勝ち目は無くなる、と思った。


パウロが次の『(たま)』を打ってくるまで

なんとかしなければ……と必死で考える。


ハルマは パウロの能力(チカラ)の正体をまだ把握してないが

パウロの近くには『(たま)』に成りうるモノはない。


ハルマは さっき自分の電気球を炸裂させた時に

近くの窓ガラスを2、3枚割っていた。


ハルマは床に落ちたガラスの破片で

ちょうど手に収まるサイズのモノを拾った。


「ハルマん……ガラスの破片なんか手にして何やってんのかしら……」


「まさか やられっぱなしで反撃できないから

自棄(やけ)になってアレで傷つけようなんて思ってんじゃ……」


「そんなまさかぁ」


トールとレミがハルマの不可解な行動に冗談混じりで見つめていると

ハルマは ガラスの破片を片手にパウロの方へ走り出した。


「ちょッ!ウソでしょ!!」


「ハルマ!?」


トールとレミが 冗談で話した通りの行動を起こすハルマ。

破片を持ってる手を上にかざし

パウロにめがけて振り落とそうとしている。


パウロは体を(ひね)らせ、ハルマの攻撃を

蹴りで迎え打とうとする。


お互いの攻撃が当たる寸前、

ハルマはガラスの破片を強く握り締めた。


当然、その手からは自分の血が出てくる。


ハルマの手から出た血は

パウロの肩や腕、上半身の至るところに飛び散った。


「What!?」


パウロがハルマの行動に理解ができず

不思議な顔をして驚く。


そしてハルマはニヤッと笑った。


パウロの体に付着したハルマの血が赤色の電気に換わる。

パウロの上半身はハルマの血が飛び散った分だけ

赤色の電流が走り抜け、パウロは感電した。


パウロは声を上げずに その場で地面に倒れた。

意識はあるようだが目の焦点が合っておらず

上半身がピクピクと痙攣(けいれん)を起こしていた。


ツカサが近付き、パウロの状態を確認する。

パウロの体を抱き起こし

(ひたい)に手を当ててツカサは審判を下した。


「パウロ君、続行不能。ハルマ君の勝ちとする」


「よっしゃあーーーーーッ!!!」


ハルマは両手を高く挙げてガッツポーズをする。


ハルマがパウロの『右足』の能力(チカラ)を知らなかったように

パウロもハルマの電気の正体を知らなかった。

そこを突いて 得た勝利だった。



ハルマの所へ トール達が駆け付ける。


「全く……ヒヤヒヤしたよ。

ガラスの破片なんか凶器にして戦うほど

下衆(ゲス)に落ちぶれたのかと思っちゃった」


「オレが そんな事するかよ」


「パウロ君の大事なサッカーボール壊したクセに」


「あのなぁ、そーゆーとこばっかり突いてくんなよ!

仲間の勝利を祝えってんだ!!」


「ハイハイ」


トールはため息をつきながら

ハルマへ やる気のない拍手をパチパチと鳴らした。


「サッカーボールの事なら大丈夫さ。

さっちゃんに言って、ハルマ君のお小遣いから引いて

新しいのを買ってくるから」


ツカサはウインクをしてキランっと星を飛ばす。


「ちょっっっと待てやコラァァァァ!!!!」


「なんでだい、当然だろ?」


「ていうか、伊丹村(いたむら)先生から

お小遣いもらってたんだね、ハルマ……」



対決には勝ったが スッキリしないハルマだった。

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