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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆異文化バトルコミュニケーション編◆
162/228

ハルマ VS パウロ

「オレッ!?オレッッ!!?オレェッッ!!?」


「OH!OLE OLE OLE OLE ~♪」


ツカサからの指定でハルマが交流戦の1番手に決まった。

だが、ハルマは信じられないと言う顔をして「オレ」を連呼し

パウロは陽気なノリでサッカーでお馴染みのフレーズを歌い出した。


「何度も言わなくてもわかるだろ?君だよ」


「待てよ!!オレが最初なんておかしいだろッ!!

主人公ってのはトリを決めるのがセオリーだろ!?

なんでオレが1番始めにやんなきゃいけねーんだよ!!」


「何を言ってるんだい、君は」


ツカサは ハルマの意義を一蹴する。


「それに、このカードは しっかり君を表してるよ」


ツカサは 長細い形のカードを

ハルマ達全員に見えるように向けた。


「これって、タロット?」


「その通り。そしてこのカードは『(とう)』だ」


ツカサが胸ポケットから出したのはタロットカードだった。

そして取り出した『(とう)』のカードには

搭に雷が落ち、崩れていく搭と人間が描かれている絵だった。


「……これがオレを表してんのかよ」


ハルマは『(とう)』のカードの絵を見て嫌な顔をした。

雷によって崩れ落ちる搭と人間の絵からは

とても良い暗示の絵とは思えなかった。


「これがタロットカード……初めて見た」


「俺も」


トールとアキトは ツカサの手にあるカードを まじまじと見る。

ツカサは『(とう)』のカードとは別に もう1枚のカードを出した。


天秤と杖を 手にした人間の絵が描いてある。


「俺はこれから公平な『審判』になるよ。

さあ、ハルマ君とパウロ君、前に出て握手をして」


「Ya~♪」


「チッ」


ハルマは しぶしぶツカサに従い、

パウロと一緒に屋上の中央に立った。


トール達は屋上の端に身を寄せる。


「制限時間は4時半まで。

相手を戦意喪失 もしくは気絶させた方の勝利とする。

なお、フィールドは旧校舎内全部」


「Ya~♪Victory!!」


「コラァ!何ガッツポーズしてんだ!!」


パウロの陽気なノリが気に入らないハルマは牙を()く。


「始めッ!」


ツカサの掛け声で先鋒戦が始まった。


「ッッシャアァーーーーーッ!!!」


ハルマは さっそく体から赤色の火花をバチバチ弾けさせた。


留学生達は初めて見るハルマの能力(チカラ)に驚き、拍手する者もいた。


「Wow!HANABI!!」


「Beautiful!」


パウロも同じく、ハルマの赤い火花を見て興奮している。


ハルマはその隙に高速移動をして

パウロの目の前から消えた。


「!?」


パウロはハルマが消えて一瞬固まったが

すぐに動き出した。

上半身を左側に(ねじ)り浮き上がった右足を自分の真後ろへ

いくように空中を蹴った。


すると、ちょうどパウロの真後ろだった所からハルマが現れて

右手の(こぶし)をパウロに当てる寸前だった。


ハルマの右手とパウロの右足がぶつかる。


バシィッ と乾いた音が響き 2人は距離を取る。

ハルマは動きを見切られた事に驚いてはいなかった。

それよりも右手を見た。


ハルマの右手の甲がパウロに蹴られて赤くなっていた。

痛みが響いてジンジンしている。


「………なんだ?なんか違和感……」


ハルマは右手の甲に違和感を感じて気にとられている。

その間にパウロは自分の荷物からサッカーボールを取り出した。


パウロはサッカーボールを地面に落とし、

右足で蹴り上げてリフティングを始めた。


「うわ、スゴい」


「ボールが生きてるみたい!」


パウロの見事なリフティングにトール達は思わず見とれた。


パウロは楽しそうにボールと遊ぶ。


「Ya~♪ ボール ワ トモダーチ♪」


すると、パウロはリフティングをやめて ハルマに向かって

ボールをポーンッと蹴った。


ハルマはボールを見るも 受けとるつもりはなく、左に避けた。



トンッ



「!?」


ボールを避けたはずだが

なぜかハルマの右肩に当たって地面にバウンドし、

パウロの所にボールが戻った。


「Ya~ha~♪」


「避けたはずなのに……」


ハルマは 顔をしかめてパウロとサッカーボールを見た。

ハルマと目が合うと、パウロは笑って再びボールを蹴った。


勢いのないボールは

()を描いてハルマへ飛んでいく。


「Hey!come on!」


パウロは ハルマにパスを返せと合図してきた。

だがハルマは無視して今度は右側に大きく避けた。


ボールは 相手のいない地面に(むな)しく落ちる。


ところが、バウンドしたボールがハルマの方へ跳んできた。


「ッ!?クソッ!!」


ハルマは 自棄(やけ)になって ボールを適当に蹴る。

そのボールをパウロは取りに行って

右足でキャッチし、再びリフティングを始めた。


ボールが明らかに有り得ない軌道に乗って

ハルマの方へ跳んだのを

トール達も見逃さなかった。


「あれが……パウロ君の能力(チカラ)?」


「あんなのは まだまだウォーミングアップだよ」


ツカサが ハルマを見ながら楽しそうに笑う。


「さて、ハルマ君はどうするかな?

逆にパウロ君もハルマ君の電気をどうするかな?」




ハルマは リフティングを続けるパウロを(にら)んだ。


「チッ……だいたい読めたぜ。

そのボール、オレに向かって飛んでくるんだな?」


ハルマは パウロの能力(チカラ)を把握した。


把握したつもりだった。


これからもっと とんでもない事になろうとは

考えてもいなかった。

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