対戦相手 (留学生編)
トールは留学生のクリフと初めて挨拶を交わした。
初めての外国人との接触で
緊張して からだ全体が強張っている。
クリフが握手をして挨拶したのを
他の4人の留学生達が見ると
クリフに続いて それぞれ近くにいた者達に
笑顔で握手を交わしていく。
ハルマは パウロと
アキトは テッドと
ユエは サラと
レミは メイと。
ハルマに至っては、これからバトルをやる事を思い浮かべてか
顔がニヤニヤしている。
ふと、クリフがユエを見て それからツカサを見た。
「ツカサにそっくりデス」
「俺の妹だよ」
「Oh!」
クリフはユエに近付き 手を取った。
そのまま握手をするかと思いきや
ユエの手の甲にキスをした。
ユエは突然の事で目を丸くし、それを見ていたトールはギョッとした。
クリフは顔を上げるとユエに向かってニッコリ笑う。
「美しイデス」
「あ、ありがとう」
ユエは 顔を赤らめた。
「ふふ、クリフ君、次は俺の許可を取ってからだよ?いいね」
「何 怒ってんだよツカサ」
ツカサは笑顔だったが
ツカサの背後には怒気のオーラが立っていた。
ハルマ達5人と留学生達5人が向かい合った。
ツカサはその中央に立ち、まず留学生達の方を向いて話し出した。
流暢な英語である。
「…………武藤さん、お兄さん なんて言ってるの?」
会話の内容を把握できないトールはユエに聞いた。
ハルマ、アキト、レミもツカサが何を言ってるのかわからず
ユエの解説に耳を傾ける。
「えっと……私達の事を特別な力を持ってる人間で
貴方達と一緒と……つまり同じ能力者で仲間って事を説明してるわ」
「じゃあもう僕ら全員の顔も割られたってことだね」
トールは軽いため息をついた。
「それでこれから皆で……………
やだっ兄さん!私は戦わないわよ!?」
ユエはツカサに近付いてツカサの服を引っ張った。
ツカサの解説をしてる途中だったが
どうやら本当に 5対5の能力バトルをさせようと考えているらしい。
ツカサは笑顔でユエの頭を撫でる。
「さっちゃんから いろいろ聞いたんだ。
ユエを組織に入れたのは仕方ない事だったけど
友達のために自分の能力を磨いていて強くなっているってね。
だからユエの今の能力を俺に見せてくれないか?」
「そ、それは……」
「ユエの成長ぶりが見たいんだよ。
それに今の力量を知ることで、これからもし『敵』が来ても
焦らずに対処が出来るからね」
「兄さん…………」
「なんだよ、オレが戦おうとした時は止めたクセに」
「それは君の電気技で ユエを傷つけるなんて
野蛮な事をされたくなかったからさ」
「兄妹そろって野蛮 野蛮って……。
オレよりトールの方がヒドイぞ?
武藤を屋上から落としたんだからなッ!」
「ハッハルマ!!」
トールは焦った。
確かに初めてユエと出会って対決した際、
誤ってユエを屋上の外へ飛ばしてしまった。
だが、トールは身を挺してユエを助けた。
しかしツカサには通用しなかった。
クリフに向けた怒気よりさらに強い怒気が放たれている。
トールは冷や汗をたっぷり流した。
「それは本当なのかい………?」
「ま、待って兄さん!それは私がいけなかったのよ!
それに私が樋村君を選んだの!」
「ッ!? ユエの選んだ男だと!?」
ツカサは ガガーンッとショックを受けた顔付きに変わった。
「違うわ、そーゆー意味じゃなくて」
ユエの顔が赤くなる。
「父と母に会わせる前に俺の許可を取ってからだぞ!君ッ!!」
「えっえぇッ!?」
「やめて兄さん!6年間も音信不通だったのに
今さら過保護に扱わないで!!」
「ッ!!!!」
ツカサは さっきよりもショックを受けた。
トールは全身から汗を吹き出し
ユエは顔を真っ赤にし
ツカサはショックで真っ白になっている。
ツカサのユエ愛から起きた もつれ合いが
たまらなく可笑しくてハルマは腹を抱えて笑っている。
留学生の事をすっかり忘れ、収集がつかなくなった状況に
レミが仲裁に入った。そのついでに、事態を騒がしたハルマの頭を殴る。
ちなみにアキトは完全に傍観を決めていた。
「もーっ、ツカサ兄ってば、しっかりしてくれないと困る!」
「ごめんよ………グスッ」
ユエに うざがられたツカサは半べそをかいていた。
トールとユエはお互いに気まずくて
顔を見ないようにしている。
ハルマはレミに頭に殴られ コブを作った状態で
ツカサの代わりに話を進め始めた。
「で、5対5でいいんだろ?
戦い方とかルールとかはどーすんだ?」
「ボクたちは、ミナサンのやり方にシタガイマス」
クリフは5人の代表として答えた。
「あっそ。じゃあルールは普段のやり方でいっか。
対戦相手はくじ引きでいいだろ」
「オー、それならモウ決まってマス」
「はっ?」
「さっきツカサが言ってマシタ。
『握手をした相手』ガ対戦相手デス」
「えっ………それじゃあ」
ハルマ達は最初の挨拶で握手を交わした相手を見た。
その結果、お互いの対戦相手はこのように決まっていた。
赤嶺ハルマ VS パウロ・アミーニア
清水レミ VS メイ・シンツー
武藤ユエ VS サラ・カミラ
桐谷アキト VS テッド・フォスカー
樋村トール VS クリフォード・ローヤー
「ちょっと待てコラァッ!!」
ハルマが意義を唱え始めた。
「お前らの中で一番強いのはお前だろ!?
お前の相手はオレがする!!」
ハルマはクリフを指差した。
ハルマの勘では
留学生の中で一番強い力を放っているのはクリフだった。
ハルマは より強い相手と戦いたいと思って
クリフを指名している。
「駄目」
ツカサが復活してハルマの意義を却下した。
「なんでだよ!!」
「確かに交流戦ではあるけど
実際なら戦う相手なんて選べないのが普通だろう?
だから変更はしないよ」
ハルマは 舌打ちをして悪態をついた。
ツカサは再び向かい合う5人の間に立って
指揮を取り直した。
「それじゃあ、もう一度お互いの相手と握手をして。
今日は顔合わせだけだ。
対戦は来週の火曜日から始めるよ。
順番は俺がその時に伝えるから
皆はいつ自分達の出番が来てもいいように準備をしておくように」
ツカサの話が終わると
お互いに握手を交わしあった。
5対5の異文化バトルが開幕された。