勧誘 2
~水曜日・昼休み~
トールは図書室に足を運んだ。
今回 勧誘目的で声をかける女子生徒は
図書室によくいるとハルマが言った。
さすがに2人で一緒にいる姿を
隠れて見る所がなかったので
トールが ひとりで確かめに図書室へ
入った。
(ハルマとトールは新校舎内では
無関係の関係を装っているため)
「窓側のテーブルの一番奥の席…」
ハルマの情報によると
その女子生徒は昼休みや放課後に
ひとりで その席に座り 本を読んでいるらしい。
トールは怪しまれないように
適当に本を取って 女子生徒が座るであろう
テーブルが見える位置を探して
一人掛け用のイスに座った。
適当に取った本を開いて読んでいるフリをする。
目線だけを変えて辺りを観察した…
…が、昼休みには
その女子生徒は姿を現さなかった。
その日の放課後や 翌日の昼休み、放課後も
同じ様に行動したが 一度も姿を見せなかった。
トールは一度ハルマを体育館裏に呼び出した。
「おかしいな」
「おかしいなじゃないよ。
ホントにいるの?その女子生徒」
「いるよ。オレ毎日見てるし」
「…毎日…見てる?」
「うん、同じクラスだから」
「ちょ 待て!!トール!!
その手 出すなって!!バレたらマズ……
ギャーーーッ!!!」
~ ~ ~ ~ ~
「武藤 ユエさん か…」
トールの顔はスッキリしていた。
「………よく独りでいるんだ…」
ハルマは顔がボコボコだった。
「他の女子生徒と仲良くしてる姿を
見たことねーんだよ。
独りで行動してる奴みたいでさ。
もともと声かけづらいんだよ…」
「だったら初めからそう言ってよ」
「だって同じクラスって言ったら
協力してくれなかっただろー?」
「泣きつくな この馬鹿!」
「でも昨日の昼休みも教室にはいなかったぞ。
図書室に行ってると思ってたんだけど…」
「もう、今回はハルマが誘いなよ」
「『今回は』ってことは次も手伝っ…
うわっ ジョーダンです ごめんなさい」
なんたかんだで女子生徒の情報だけは得られた。
名前は 武藤 ユエ。
ハルマと同じ 1年 F組の女子生徒。
独りでいる事が多く、いつも『紫色の本』を
持ち歩いていて休み時間中に読んでいるらしい。
ストレートの黒髪で
キリッとした二重の目付き。
身長はトールより少し小さく
極々 普通の女子生徒。
火曜日の放課後
トールとアキトは旧校舎の屋上にいて
ハルマを待っていた。
「赤嶺 遅いな」
「そうだね。いつも先にいるんだけど。
勧誘に手こずってるのかも」
屋上の扉が ギッと開き
ハルマがやってきた。
ものすごい浮かない顔をして
青ざめていた。
「ハルマ?」
「………………」
「どうした?」
「………………やべぇ」
トールとアキトは
顔を見合わせてハルマの次の言葉を待った。
「オレ達の事……バレてる」