バトル勃発
影井イズミ(と、ハルマ)からの情報により
今年、トール達の高校へやってきた交換留学生が
全員 なんらかの能力を持った能力者であることが判明した。
一番驚きを隠せなかったのが ユエだった。
生徒会として、ハルマやトール達よりも先に交換留学生達と
交流を始めていた。
「し……信じられないわ。皆、普通よ」
「そりゃ見た目でわかるもんじゃねーからな。
オレの勘が間違いなく あの外人どもだと言ってるぜ」
これまでハルマの野性的な勘により
ここにいる全員は当てられて、今こうして集まる仲になった。
そのハルマが言うのだから間違いはない、と全員思うしかなかった。
「でも、あたし達がわかってても
留学生の方はあたし達の事を知るよしはないのよね?」
「俺たちの方から接触しなければ、だろ。
それに留学生の方に赤嶺と同じように『能力者』を察知する事が
できる奴がいたら、もうバレててもおかしくないよな」
「どのみち接触することになるよ。見てごらんよ、ハルマの顔を」
「あ…………」
ハルマの目はキラキラ輝きを放ち
口角が上がり、ワクワクとしているのが
誰が見てもわかった。
ハルマは留学生の能力者と戦いたがっている。
「ハルマ、英語できないでしょ。どう声かけるのさ」
「武藤に任せる」
「嫌よ」
「即答かよ!いいじゃねーか!異文化バトルコミュニケーション!!」
「日本との親善交流を損ねるわ。駄目よ」
「なんでだよ!!」
ハルマが駄々をこねはじめる。
「薄野ソウタだって『仲良くしておくように』って
言ってただろ!そーゆー事だろ!?」
「能力者として仲良くするのはいいわよ。
でもバトル倶楽部に入れるのは駄目。
日本にこんな文化があるって思われたら大変だわ」
ハルマの気持ちが抑えられないのはわかるが
ユエが言うことも最もである。
ハルマとユエが言い争うのを
トール、アキト、レミは どう収集つけるか戸惑いながら聞いていた。
「よぉし、わかった!勝負だ武藤!!
オレが勝ったら外人どもを屋上に連れてこい!!」
「…………………野蛮ね。
いいわ、私が勝ったら あなたは留学生達に近付かないで」
「ちょっ、ちょっと待って!
ハルマ!そんなのダメだよ!武藤さんも落ち着いて!!」
トールが2人の間に立って抑えたが
ハルマとユエの間には すでに火花が散っていた。
「ユエちゃん やっちゃえー!」
「清水さん、煽らないで!!」
「もう無理だ、樋村。やらせておけよ」
「そ、そんなッ、今 昼休みなのに…………」
ハルマと ユエが構え合い対峙する。
初めてのタイマンが実現されようとしていた。
ユエはハルマに向けて弓矢を構えるポーズを取る。
ユエの手から光輝く『射手座』の弓が具現化された。
ハルマは全身に力を入れて
赤い火花をバチバチと弾けさせる。
ユエは弓矢を強く引き
ハルマは駆け出そうと地面を踏み込み始めた時だった。
バタァーンッッ!!!
突然 屋上の扉を勢いよく開けて何者かが出てきた。
5人は驚き固まった。
カーキ色の長めのマントに身をまとい、マントの端はボロボロで
顔は鍔の広いカラス帽で見えない。
ただ明らかに この学校の生徒でも教員でもないことは確かで
5人は浮浪者か不審者かと思って警戒した。
「うっ………………………うっ………………………」
謎の人物が うめき始めた。
5人はそれぞれ構えはじめる。
もしかして――――――――『ウォンバッド』の襲来か。
屋上は緊迫した空気に包まれた。