留学生 来日
「やあ、イズミ。伝言ありがとう」
「いいよー。ソウタ君のためならなんのそのー♪」
「実は、伝え忘れた事があったんだ。
急ぎではないし、向こうにはハルマ君がいるから
俺が構う事じゃないんだけど
時間があったら 行ってきてくれないかい?」
「いいよー。伝言なぁにー?」
「あぁ、あのな………………」
――――――――――
学年が上がり、二日目の この日。
ユエが言っていた交換留学生が
学校に初登校し、全校朝礼の時に
舞台に上がり全校生徒の注目を浴びていた。
留学生は5人。
アメリカから来た生徒が3人
ブラジルから来た生徒が1人
中国から来た生徒が1人
中国から来た生徒と
アメリカから来た生徒の1人が女子だった。
校長先生からの挨拶の後
留学生の代表としてアメリカから来た生徒の1人が
舞台の真ん中に立って挨拶を始めた。
金髪に青い目の男の子。
サラサラな髪の毛に小柄で童顔の
アメリカの青年を見た日本の女子生徒たちは騒ぎ始める。
とても顔立ちが整っていて
メディアに取り上げられてもおかしくないくらいの美貌を感じられた。
「みなサン、はじめマシテ。
みなサンに会えテうれしいデス。
2年間ヨロシクおねがいシマス」
やや片言だったが上手な日本語の挨拶に
女子生徒の心を掴んだ事で
挨拶が終わると一斉に拍手が沸いた。
他の4人の留学生たちも
壇上から手を振って笑顔を振り撒いていた。
―――――――――
~ 昼休み ~
2学年の階の中央にある多目的スペースで
トール、アキト、ユエ、レミが
それぞれ昼食を抱えて集まった。
「ユエちゃーん、お疲れー!」
「ありがとう、でもまだこれからなのよ」
「みんな日本語しゃべれるの?」
「ほとんど片言よ。一番上手なのはクリフォード君ね」
「ああ、挨拶のした子ね!
なんかさ、あの子 トール君に似てない?」
「ぶっ」
トールは 口にしていた飲み物を少し吹き出して むせこんだ。
「ど、どこが!?僕ってあんな感じなの!?」
「小柄で可愛らしい顔で
髪の毛サラサラでアメリカ版のトール君って感じ!
あ、褒めてるのよ?」
「可愛らしい顔って………褒められてる感じしないよ」
「大丈夫だ、樋村。俺はお前の方が好きだ」
「ありがとう。黙って。桐谷君」
「すまん」
4人が それぞれ昼食を口にしながら
団らんをしている時だった。
ドタドタドタドタッと
誰かが騒がしく走る音が響いてきた。
4人は思わず音のする方へのぞきこむ。
「いたぁーーーーーーーッ!お前らぁ!!」
「ハルマッ!?」
足音の正体はハルマだった。
4人を見付けると4人の所へ来て止まった。
「なんでオレも昼メシ誘ってくんねーんだよーッ!!」
「こっちの校舎じゃ知らないフリするって言っただろ!?」
「って、そうじゃねぇ!!
ここじゃ言えねーんだよ!!ちょっと来いッ!!」
「わッ!ちょ、ちょっと!!」
ハルマはトールの手を無理矢理引っ張って連れ去って行った。
アキト、ユエ、レミは
ハルマの嵐のような行動に度肝を抜かされて固まっていたが
急いでハルマとトールの後を追っていった。
―――――――
ハルマはトールを 旧校舎の屋上へ連れてきた。
アキト、ユエ、レミも追い付いて5人とも屋上に集まった。
息切れしているハルマの頭を
トールは容赦なくガンッと叩いた。
「イッタ!!何すんだ!!」
「こっちのセリフだ!!なんなんだよ!もう!!」
「落ち着け、お前ら。どうしたんだ赤嶺」
ハルマは なんとか息を整えさせると
目を真ん丸くして4人を見た。
「い、いた!!のっ能力者………!!」
「ッええ!!?」
「しかもな、聞いて驚けよ!その能力者は」
ハルマが言いかけた その時
ハルマの影から 影井イズミがひょっこり出てきた。
全員が突然の影井イズミの姿に驚く。
「やっほー。昨日の伝言で伝え忘れちゃった事があるのー。
『今年来た交換留学生は皆 なんらかの能力を持ってるから
仲良くしておくように』だってさー。
スゴいねー、みんなラッキー」
「………………………え」
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!?」
「じゃ伝えたからまたねー。ばいばーい」
イズミは影の中に消えていった。
そして衝撃的な情報を聞いた4人は驚きを隠せなかった。
「ど、どーゆー事!?ユエちゃん!」
「私、何も知らないわ!知るわけないじゃない!!」
「あの留学生が全員能力者なのか!」
「じゃあハルマもそれに気付いて…………って、どうしたのハルマ?」
ハルマは両手と両ヒザを地面につけて うなだれていた。
「オッ………オレのセリフ…………」
ハルマは 能力者が留学生であることを言って
4人を驚かせようとしたが
イズミに先に言われてしまって落胆していた。
「ウソでしょ………なんなの、この学校………」
トールは もう偶然なんかじゃないと思わずにはいられなかった。
Orz←ハルマ