2学年突入
学年末テストを終え、春休みに入り
季節は桜の花が舞い散る4月へと突入した。
ハルマやトール達5人は
『ウォンバッド』との接触もなく無事に1学年を修了した。
その間にもバトル倶楽部は毎週火曜日の放課後に行い、
お互いに能力を磨きあっていた。
そして5人は2年生になる。
新学期の朝は 教室に入る前に
新しいクラスの確認をする。
新しいクラス表が載っているプリントをトールは眺めていた。
2学年の新しいクラス編成で
トールと ユエが A組、アキトとレミが C組、
ハルマは F組となっていた。
―――――――――
~ 放課後・屋上 ~
「あーあー、なんだよ、オレだけ独りかよー」
「何ふてくされてんのよ、あんたは」
独りだけ F組だったハルマは
仲間外れになった気分で文句を言っていた。
レミがハルマに突っ込み、トールとアキトは笑っていた。
「どうせ授業サボって、まともに教室にいないんでしょ?
関係ないじゃん!」
「そーゆー事じゃねーんだよ」
「僕はハルマが進級できた事が信じられないよ」
「裏があるな」
「バカにすんなよ、お前ら」
ハルマは 3人におちょくられ、余計にふてくされた。
レミがニヤニヤした顔でトールに近付く。
「ユエちゃんと同じクラスになるなんて、運命感じちゃうわねー」
「な、何言ってるの清水さん」
トールは顔を赤くした。
「でも、今日あまり教室で見かけなかったよ。
生徒会の活動で忙しかったみたい」
ユエは 生徒会の役員として活動を始め、
新学期である今日もバタバタとしていた。
「明日からでしょ?交換留学生が来るのって。
その準備もあるみたいで……」
「そーねぇ。『先に帰って』って言われちゃったもん……
頑張ってるから応援するけど、なんか淋しいわぁ」
「そういえば赤嶺、新入生に『能力者』はいるのか?」
「んー?あぁ、特に能力感じるヤツはいなかったなー。
それより、これからどーすんだよ 屋上」
今までバトル倶楽部が旧校舎の屋上で行えていたのは
『空掌握者』薄野ソウタの能力により守られていたからだった。
だが、ソウタは卒業してしまった。
そのため旧校舎の屋上を今までのように
バトルに使って騒いでしまえば
一般の生徒や周辺の住人などに気付かれてしまう恐れがある。
「どーすんだよー、オレのライフワーク」
「それに先輩の花壇もだ………見付かったら撤去される……」
「そういえば薄野先輩と全然話し合わなかったね。
どうしよっか………………廃部?」
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「うっさい、ハルマん!」
「心配ご無用だよー」
「えっ!?」
4人が騒いでいると突然 姿のないところから声が響いた。
語尾を伸ばすのが特徴の聞き覚えのある声である。
「ま…………まさか」
「やっほー、みーんなぁー」
レミの影から元・生徒会の
『闇笑い』影井イズミがひょっこり出てきた。
「イヤーーーーーーーーーーーッ!!」
「うるさいぞ、ゴリ!」
「だいじょーぶ だいじょーぶー」
「何が大丈夫なのよぉ!あたしの影から出てくんじゃないわよ!!」
「あのねー、ソウタ君からの伝言だよー」
「え?」
「『僕はこの市内の大学に行くことになった。
今この市内全体に僕の能力を使っている。
本来の目的は「ウォンバッド」による市内の敵索や侵略防止だが
君達が今までのように屋上を使えるようにしてあるから
安心してバトルをしてくれたまえ』っだってー」
「…………………マジかよ」
「しっ市内全体に『空間』能力を!?す、すごい…………」
知らない間にソウタは自分の能力を進化させていた。
「そんなわけでー、レミちゃん達が困ってると思ったからー
伝えにきたんだよねー。
あーそうそう、ボクは諜報係になったんだー♪」
「へ、へぇー……そう………合ってるんじゃない?あんたに」
「えへへー」
イズミはレミに ほだされてニコニコ笑っている。
「じゃあ、何かあったらまた来るねー!ばいばーい♪」
「あたしの影から出てこないでよねッ!!」
イズミは手を振りながら影の中へと消えていった。
「…………ってことは市内にいる限りは
全部アイツに筒抜けってことかよ。気持ち悪ぃな」
「いいじゃない、文句ばっかり言うんじゃないわよ」
「フンッ」
こうしてバトル倶楽部の廃部は免れたが
トールは ソウタやイズミが本格的に
組織の一員として動いているのを知って
少し胸がざわめいていた。
「…………何も起きなきゃいいんだけどな」
「なんか言ったか?樋村」
「ううん、なんでもない」
1学年の時を思い返しながら
せめて今年は少しでも平和な学園生活が送れますように、と
心の中で呟いた。