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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆見えない敵 編◆
153/228

心境の変化

~ 火曜日・放課後 ~


この日は珍しく

ハルマ、トール、アキト、ユエ、レミ

5人全員が屋上に集まった。


トールは自分の能力(チカラ)の暴走の話と

それについての処分の話を

ユエとレミにしていなかったので全て話した。


「信じられないわ………

勝手に仲間に引き入れて、危なくなったら殺すなんて」


ユエはトールの話を聞いて憤慨している。


「あくまで、最悪の場合になったらだよ。

本当に殺されるわけじゃないから……」


トールはユエが想像以上に怒っているので

焦ってユエをなだめた。


「それだけ、僕らの能力は危険だから注意するようにっていう

伊丹村(いたむら)先生からの

厳しい警告みたいなもんだから。

仲間を殺す悪い組織じゃないよ」


「そーだよ、ユエちゃん。ツカサ(にい)だっているんだし」


意外にもレミは冷静だった。

どちらかと言えば感情豊かなレミの方が

今の話を聞いたら怒るかと思ったが

驚くだけで ユエのように怒りはしなかった。


2人の様子の違いにトールは調子が狂う感じがした。


トール、ユエ、レミが話してる隣で

出番のないハルマは退屈そうにしている。

チラッとアキトの方を見るとアキトと目が合った。


「お前、暴走したらいつでも殺してもらえるように口 開けとけよ。

なんなら(さる)ぐつわでもして戦え」


「ただの変態じゃんか」


「変態だろうが」


ハルマとアキトが しょうもないやりとりをしている間に

トールの話に区切りがついた。


そして今度はユエが話し出した。


「この前の生徒会の話の件………受ける事にしたの」


「そうなんだ!」


ユエは生徒会に勧誘されていて

考えていたが、入る事を決めた。

レミがユエの隣でパチパチと拍手をしている。


「もう今学期から活動することになったのよ。

来年の春から交換留学生が来るんですって」


「留学生?」


「ええ 5人来るらしくて、英会話に長けてる生徒を選抜して

留学生担当の学級を創るらしいの。

私はもう入ることが決まってて……」


「武藤さん、英語得意だもんね」


「それのついでに生徒会に勧誘されたようなものよ。

ねえ、樋村君もどうかしら?」


「僕!?え、英会話はちょっと………」


トールは成績は上の方だが

英会話となると気が引けて遠慮がちになった。


「最初はみんな出来ないものよ。

けど同じ学級で過ごせば慣れてくると思うわ。

いい経験になると思うのだけど」


「うーん………そうだね、一応考えておくよ」


トールとユエの話が ちょうど終わった頃

トールの背後から馴染みのある殺気が出てきた。

トール以外の3人は 思わず構えだす。


アキトが別人格に入れ替わっていた。

構えてるハルマ、ユエ、レミを見てフンッと鼻で息を吐く。


「どうしたの?」


トールは もう何度も別人格と接しているので

慣れた感じで普通に話しかけた。

レミが「危ないよ」と後ろの方で注意を呼び掛けている。


「…………たくて」


「何?」


アキトがボソボソ言うので聞き取れなかったトールは聞き返した。

アキトの顔がだんだん赤みを増している。


「話が………したくて」


「!!」


別人格のアキトが

皆と話がしたいと前向きになって出てきた。

心境の変化に気づいたトールは

笑ってアキトの手を引っ張り3人の前にアキトを出した。


「ちょ、ちょっとトール君!?」


「3対2 で戦うってのか、コラ」


「樋村君……………………?」


戸惑う3人を見てトールは「大丈夫」だと視線を送って

3人を自分達の方へ手招きする。

するとトールは突然アキトに質問をした。


「桐谷君、好きな食べ物は?」


「はっ!?好きな食べ物なんて………

コイツと一緒だよ。知ってんだろ」


「ちゃんと自分(・・)の言葉で答えて、ホラ!」


「えっえぇ」


いつもと違う別人格のアキトを見て

3人はアキトに注目した。

アキトは注目する3人の視線が気になって

目線を泳がせながら答えた。


「…………カッ…………カレー………パン」


レミが吹き出した。


「ちょっ、何このギャップ!!アッキー、可愛いんだけど!!」


「お前、カレーパン好きだったのか」


「…………なんか意外だわ。

血の(したた)る人肉とでも言うかと思ってたのに」


「武藤さん、恐すぎ」


アキトの顔がみるみる赤みを増す。

レミが面白くなって前に乗り出し

トールに続いて質問をした。


「じゃあ好きな飲み物は?」


「知ってんだろ!!いちいち聞くな!!」


「桐谷君」


「うっ……………………コ……ココア」


「キャー!アッキーかわいいー!!」


「うぅ……」


赤面する別人格のアキトは

恥ずかしながらも自分を知ってもらおうと努力する。

次はハルマが質問をした。


「じゃあ樋村と あのチビ(モモ)どっちが好きだ?」


「変な質問するな ハルマ!!」


「…………………ッ………………えっと…………………」


「本気で悩むような質問じゃないでしょ桐谷君」



―――――――


感情的になってきたユエ。

落ち着きを見せるようになったレミ。

心を開くようになった別人格のアキト。


心境の変化は 思春期の青年たちに何をもたらすのか。


季節は寒い冬から 春へと移っていく。

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