3人の話し合い
トールは ムスッとした顔で
不機嫌だった。
「まだ、怒ってんの? 樋村」
「……」
毎週月曜日の放課後は
風紀委員会の定例集会があった。
トールとアキトが 必ず顔を会わせる
場でもある。
「僕は君の事 まともな人だと思ってたよ」
「だから アレは冗談だって」
「………」
「そんな目で見ないでくれよ」
前回、アキトに可愛いと おちょくられたので
それを根にもつトールだった。
「能力使うと性格変わっちゃう人が よく言うよ」
「あれは そーゆー性質なんだってば」
アキトは トールの顔を伺いながら
笑って応対した。
特殊な能力に 内緒の活動。
共通のモノが出来たのでトールとアキトは
以前よりも親密になった。
~次の日(火曜日・放課後)~
旧校舎の屋上に3人は集まった。
「お前は『鬼人』でいいや」
ハルマが ぶっきらぼうに
アキトに向かって言った。
「お前の手 鬼みたいになるから」
「…鬼人?」
「えっ、ひねり無さすぎ」
「うるさい!」
「自分には『血潮雷電』とか
ちょっとアッチ系の名前でカッコ良くしといて
桐谷君には そんな安直な………。
引き分けにしたの 根にもってんでしょ」
「関係ないね!!」
ハルマの顔が ムキになっている。
「ガキだなぁ ハルマ」
「似てるよな、お前ら」
「!!!」
「……で、オレは考えたんだが」
「……」
「……?」
「三竦み戦をしよう!」
「……三竦み?」
「そう!オレ VS お前 VS コイツ!!」
ハルマは いつになくウキウキした
顔で提案を出した。
「却下」
「なんで!?」
トールがハルマの意見に即答して
ハルマが噛み付く。
「あのねぇ……もし、先週みたいに
全員共倒れなんてしたらどーするの?
ここに気付いた誰かが来て 僕たちを見たら
大惨事だって大騒ぎになるでしょ。
屋上使えなくなるよ?」
「今まで2人でやってたって
共倒れなんてしなかったじゃんよ!」
「それは僕が手加減してたから」
「あぁ!?てめぇ 手ぇ抜いて
戦ってたっていうのか!!?」
「僕が全力で相手すると思う?」
「トール てめぇ!!」
「おいおい、ケンカすんなよ」
ハルマとトールがケンカしたまま
決闘に入りそうだったので
アキトが割り込んで止めた。
「三竦み戦か。俺は良いけどな」
「桐谷君!そんなぁ…!」
「樋村とも ヤッてみたいし」
「……今ものすごい誤解を招く言い方したね?」
「してない してない」
トールは2人の意見を
受け入れることが出来なかった。
戦闘狂が2人になってしまったので
トール自身も全力で相手することになる。
誰か決闘を見届ける人物がいないと
とても三竦み戦は出来ない…
と、いうのがトールの意見だ。
「じゃあ新たに勧誘するしかねぇな」
「えっ いるの?他にも」
「いるらしいよ」
「マジか………世間って狭いな」
「ただなぁ……難しいんだよな」
ハルマが困った顔をしている。
「半信半疑が2人だっけ?僕や桐谷君と何が違うの?」
「お前らはムンムンきてたんだよ
『戦いたい』っていう…」
「え!? 僕も…?」
「あー…なるほどねー」
「半信半疑の奴らは微妙なんだよ」
「戦いたいって思ってないわけか」
「…あとは戦闘向きじゃない能力
なんじゃない?」
「探る必要があるなぁ」
「……手伝わないよ?」
「なぁんでだよ!!」
「お前の仕事だろ!」
「鬼人!手伝え!!」
「名前で呼んでくれよ。
てか、俺は無理だって。隠密行動向いてないし。
女子に声かけられやすいし…」
「よし、じゃあ発表しよう。女子だぞ。
近よりやすいだろ?お前なら!」
「女子を決闘に巻き込むの!?ハルマ最低!!」
「関係ないね!!!」
「俺 女子に興味ないから」
「桐谷君!?」
くだらない いがみ合いが続き
結局ハルマとトールが 次なるターゲットの
女子生徒を探りにいくことに決まった。
キーン コーン カーン コーン
「話し合いだけで終わっちまったじゃねーか」
「……ねぇ 桐谷君」
「ん?」
「僕って 『戦いたい』オーラ出してる?」
「『ヤりたい』ってオーラ出してるよ」
「この変態」
トールはこの倶楽部活動を
やっていけるかどうか不安になった。