病室にて
―――――――9ヶ月前。
ハルマとトールが出会い
旧校舎の屋上を使ってバトル倶楽部を創った間もない頃。
ハルマはトールの腕を見て言った。
「その腕の包帯っていつも巻いてんのか?」
「包帯じゃないよ。封印札」
「それ、全部取ったらどうなんの?」
「死ぬよ」
「マジか」
「僕じゃなくて周りが」
「………………どーゆー事?」
「この封印札の取ったら封印してる妖怪が暴れだす。
僕の体を使って、周りにいる人間を殺そうとするよ」
トールは真面目な顔をして言う。
「だから この間みたいに封印を解いたまま
僕を気絶させたら お前が死ぬからな。
あ、お前は死んでもいいや。
周りに被害が出ないようにお前が死んでも止めろよ」
「脅しの上に ひどい言われようだな、オレ」
トールは 初めてハルマと戦った日、
ハルマの不意打ちにより右腕の封印を解除させたまま
気絶してしまった。
その時は ハルマが機転を効かせ
『白虎』が暴れだす前にハルマが封印札を巻き直したので
『白虎』は暴れなかった。
「まぁ、もうお前に敗けるなんてないけどね」
「んだと!?」
―――――――――――
「…………………ッ」
トールは目を開けた。
地下室の部屋にいたはずだが、天井が明るい。
トールは自分の体を見た。
ベッドに寝かされ、体が思うように動かない。
何が起きたのか思い出そうとした時
ハルマが トールの顔を覗きこんできた。
「大丈夫か?」
「うわッ!ハルマ!?」
ハルマは額に包帯を巻いていた。
ハルマの背後を見るとアツシも
トールの様子を伺うように屈んでいる。
「え……あれ………何が………」
トールは 自分の身に起きたことを思い出そうとした。
アツシは 申し訳なさそうな顔をして話し出す。
「ごめんなぁ……こんな事になるなんて。
知ってたら気絶なんてさせなかったんだけど」
「敵は自分の能力の説明なんかしないって
言ったのは どこのどいつだ!」
「気絶………………………あっ!」
ハルマとアツシの会話を聞いてトールは思い出した。
アツシの攻撃により、気絶してしまったことを。
そして『白虎』の封印を解いたまま気絶した事で
何が起きてしまったのか、
自分の体が思うように動かないのとハルマの額の包帯を見て
察しがついた。
「ごめん、ハルマ………その傷」
トールは 左腕を上げようとしたが体の感覚がなく、動かない。
「あれ……」
「ああ、お前の体 止めるのに全力で電気浴びせちまった」
「そう………それでか……」
はぁ…と息をついたトールを見て
アツシが補足するかのように話し始めた。
「でも、姐さんが治療してくれたから
今日中には動けるようになって帰れるって!
ハルマのキズなら気にすんなよ」
「てめぇが言うな!!」
「病室で騒ぐなバカもんが」
ハルマが声を上げた時に サキがやってきた。
トールの寝ているベッドの横にきてトールを見る。
トールはサキに怒られているような感じがして思わず目を反らした。
「す、すみません………ご迷惑かけて………」
「構わん。私がやれと言ったのだ。このくらいの処置は当然だ」
サキは ハルマとアツシを見た。
「こいつと話がしたい。出ていけお前ら」
「えっ!オレも?」
「逆らうな、ハルマ。行くぞ」
アツシは ハルマの腕を引っ張って
トールとサキを残して出ていった。
サキと2人きりになったトールは気まずさを感じる。
サキは姿勢を崩さずに話し出した。
「アツシが「自分は組織の中で何番目に強いか」と言っていたな」
「………?……は、はい………」
「それで言うならお前は 1番だ」
「…………………………………………………………………え?」
トールは 耳を疑った。
アツシに敗けてベッドに寝込んでいる状態の自分に
言われるような言葉ではない。
それゆえ、サキはトールを称賛するような感じで
言ったのではなかった。
「まったく………お前もか」
「『も』って………どういう事ですか?」
サキは 厄介事を抱えたような
困った顔つきでトールと目を合わせた。
「お前と、桐谷と、ハルマ。3人には共通するものがある」