表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆見えない敵 編◆
145/228

トール VS アツシ

「あーあ、トール怒らせた」


ハルマが葉山(はやま)アツシに向かって

わざとらしく言った。


「え、俺 なんか悪い事 言った??」


アツシは 自分がトールに対して

「ひ弱そう」と「手加減する」と言ったことに悪気はない。


だが、トールは 自分が格下で馬鹿にされているように聞こえて

アツシを 負かせてやりたいと思っていた。


すでに右手の封印札をほどき「白虎の爪」に変えている。


「うおっ、スッゲェ」


アツシは トールの右手を見て驚いた。

観戦側のサキも 初めて見るトールの能力(チカラ)

目を大きくさせた。


トールは構えると すぐに跳び出した。

右手の爪を降り下ろし アツシに飛びかかる。


アツシは トールの攻撃をかわしていく。

さっきまで余裕の顔付きをしていたが

トールの攻撃をかわしていく内に

アツシも真剣になった。


「オーケー、オーケー。

それじゃ今度は 俺からもいくぜ」


「!!」


トールは アツシから距離を取った。


アツシは『記号印師(リングルマーカー)』と

名付けられた『記号』を操る 能力者。


トールは ハルマから「アツシから発信(・・)する『記号』を見るな」と

言っていた事を思い出した。


最初にアツシから サキ宛に送られたメールの『!』を見たことにより

実際に『注意』すべき事が突然起きた。


つまり、アツシから発信される『記号』を

見なければいいだけの事、とトールは思ったが

初対面だからメールで『記号』が送られてくる事はないし

ずっと目を閉じて戦う事も難しい。


トールは 距離を取りながら

アツシが どのように仕掛けてくるのか警戒した。


アツシは 右腕をグルグル回して

ウォーミングアップをしている。


「『記号』って何種類あると思う?」


アツシは トールに謎かけを始めた。

トールは警戒しながら 思い浮かんだ答えを口にした。


「『記号』の定義がどこまでかわかりませんが………

無限に等しいと思います」


「おっ」


アツシはトールの答えに意表をつかれた顔をした。


「スゴいな、君。だいたいの人は百とか千とか万とか

具体的な数字を口にするんだよね。

君も そう答えてくると思ってたよ」


「そうですか」


相変わらずトールを 見下しているような発言をする。

だがアツシに悪気はない。


「記号って何?って聞かれたら

『ビックリマーク』や『クエスチョン』みたいな

メールで使われるモノを思い付くよな。

あとは数学で使う『プラス』『マイナス』『イコール』も記号だし

地図記号も、音楽の符号も、道路標識なんかも記号だな、うん」


アツシは 得意そうに『記号』について話を語る。


「でも、元を辿ればアルファベットも数字も漢字も平仮名も

ぜーんぶ『記号』なんだよ。

俺ら人間が『伝える手段』として生みだしたモノ。

実態はないけど絶大な存在!それが『記号』!!

君は『記号』の定義を広く理解してくれているね!」


「………それはどうも」


トールは アツシの力説にそっけなく答えた。

アツシの力説は まだ続く。


「けど、俺の能力(チカラ)はまだまだ未熟……

『記号』の定義を広く扱えない。

つまり、みんなが『これは記号だ』と思っているモノしか

俺は操れないんだよ。

みんなが君みたいに賢い人ならいいんだけどね」


「…………それはどうも」


トールは 今まで馬鹿にされていたのに

アツシに「賢い」と褒められて少し気が緩んでしまった。


「ああ、この世には無限の『記号』が存在しているのに

持て余してしまう俺は弱い人間だよな………

あ、ちなみに無限の『記号』って知ってる?」


「無限………こーゆーやつですよね」


トールは 左手の指を立てて空中に『∞』の絵を描く。


アツシが ニヤリと笑った。


「あッ バカ!トール!」


「えっ?」


ハルマが 叫んだが遅かった。

トールが空中で描いた『∞』が光を放ち

トールは反射的に目を閉じたが『∞』の光を見てしまった。


「え、え、……ウソ、まさか……!」


「いやー、よかったー、うまくいったー」


アツシは 笑っている。

トールは自分がアツシの策によって

『∞(無限)』の攻撃をくらった事に気付いた。


「なんで!?描いたのは僕なのに!」


「俺が『無限って何?』って聞いて、

君が代わりに描いてくれただろ?それで成立」


「そんなッ!!」


トールは 騙された!と大きなショックを受けた。

そして くらってしまった『∞(無限)』の力について

考えを巡らせて、とりあえず目を(つむ)る。


おそらく『記号』の定義を『無限』にして

操れる『記号』を増やした、とトールは考えた。

それならば これ以上 何も見なければいい。

ずっと目を閉じて戦う事になるが

自分の能力(チカラ)でなんとか戦うしかないと思っていた時だった。


「そーやって目を閉じられると思ってたんだよね」


「……!?」


「だから俺が無限の『記号』を

使えるようになっても、相手に見てもらえなきゃ意味ないからさ……」


トールは 嫌な予感がした。


「そんなわなけで俺の提示する記号を

()()く』見てもらう」


「えっ!?はっ!?何それ!!」


トールは 目を閉じているつもりだったが

いつの間にか目が開いていた。


「そんなのアリなの!?えげつない!!」


「口車に乗った君が悪いね。

大丈夫、終わったらちゃんと解くから」


アツシを見ると

アツシの手には単語帳のような物がある。


「さて……最初は何にしようかな」


アツシは単語帳をペラペラめくっていく。



トールは 久々に頭に血が昇った。

自分の過失(ミス)とはいえ、

アツシの言葉の言い回し方にイラ立ちを覚えた。


こんなに頭にきたのは

ハルマと まだ会って間もない時の以来。

ハルマの 言葉の言い回し方にキレた事があった事を思い出した。


トールの全身に力が入る。


どうせ かわせない攻撃ならば

いっその事、攻撃される前に沈めてやる。


トールは 思いきり飛びかかっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ