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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆見えない敵 編◆
143/228

手荒い自己紹介

ハルマとトールは

伊丹村(いたむら)サキのいる病院へ来ていた。


ハルマは検診のため、トールは白神ユウヤの見舞のため

途中まで一緒にいたが 病院内に入ってから別行動を取った。



ハルマは サキの自室にあるソファに腰をかけ、

サキはカルテを手に ハルマを診る。


「異常ナシだな。チッ」


「『チッ』ってなんだよ!異常あった方がいいのかよ!」


「当たり前だろう。お前の脳に何か反応が起きなければ

何も変わらないんだぞ」


「んな事言われてもよ………」


ハルマは 5才から10才の間の 5年間の記憶がない。

この5年間の中には 世間の裏側から

人々を危険に陥れようとする組織『ウォンバッド』の

情報が眠っている。


ハルマは 『ウォンバッド』にいたが

何らかの理由で逃げてきた。


なぜ逃げてきたのか。

『ウォンバッド』の組織はどこにあるのか。

どんな能力者がいるのか。

何を企んでいるのか。


ハルマから 全ての情報が得られるわけではないが

少なくともハルマが『ウォンバッド』で

何をしていたかはわかってくる。



コンコンッ



サキの部屋のドアをノックする音が響いた。

「失礼します」の声と共にトールが入ってきた。


サキは トールを ハルマの横に座らせると

2人の向かいに来て 座った。


「白神ユウヤの回復も依然として変わってない」


「…………はい、いつもどおりでした」


トールは 白神ユウヤの見舞いに行ってきた。


能力(チカラ)を使いすぎて眠ったままのユウヤは

他人の『脳』を読む力があるかもしれず

サキは ユウヤの回復を待ち遠しく思っていた。


「時間の問題だな。

あちら側が我々の情報を掴んでなければの話だが」


「そういえば、遠藤先生の事はどうなったんですか!?」


「うむ、調べはついた」


「遠藤先生?誰だ それ」


「忘れたの?体育の臨時教員で、ハルマが戦ったじゃんか!」


「…………ああっ!!」


2学期中に体育の臨時教員としてやってきた遠藤ダイゴは

自身の体から蒸気と炎を出し、強靭な肉体を持つ能力者。


ハルマとレミが共闘して ダイゴに勝ち、

ダイゴはハルマの電撃をモロにくらって

病院送りになり、そのままいなくなった。


当初は気にしていなかったが

『ウォンバッド』の話を聞くようになり

ハルマの事を知っているダイゴの行方が気になっていた。


もし、ダイゴの口からハルマの事がバレたら

間違いなくハルマを狙ってくる。

トールは そう思って サキに報告していた。


「その遠藤ダイゴという男なら

うちの病院に運ばれていたんでな。カルテがあった。

私が担当したのではないが、体に『ウォンバッド』を

示す刺青はなかった。一般の能力者って事だ」


サキは 遠藤ダイゴが『ウォンバッド』の一員かもしれないと

疑いも含めてダイゴの事を調べた。


調べた結果、ダイゴは『ウォンバッド』に無関係だった。


「あちら側から接触がなければ

ハルマの情報が漏れることはない。

だが、一応 私の力で記憶を消しておいた」


「えっ!?消した?遠藤先生にお会いになったんですか!?」


「うむ、住んでる所は病院(ここ)で情報を得られたしな。

つい先日会って ハルマに関わる記憶を消してきた」


「そ、そうでしたか」


行動の早いサキに トールは呆気(あっけ)にとられた。


「こちらの仲間に引き入れはしなかったんですね」


「ガキに負けるような能力者などいらん」


「そ、そうですか……」


「それより2人とも、私に付いてこい」


サキは立ち上がって スタスタ歩いていった。

ハルマとトールは 逆らわずに

サキの後を追って歩いていく。



サキの部屋を出て、エレベーターで階下まで行く。

1階に着くと 広いロビーやエントランスを突き進み

その奥にある会議室のような広い部屋に入った。


テーブルもイスもなく、白いカーテンがかかり

外から室内の様子は見えない。

シンと静まりかえった空間。

サキは 振り返ってハルマとトールを見た。


「私の仲間を一人紹介する」


「え!?」


「もうじき来ると思うのだが………」


トールは 突然、サキの仲間に会うことになり緊張した。

サキ以外の『スクリーマー』の一員に会うのは初めてになる。


するとサキの携帯電話からメールの着信音が流れた。

サキは 携帯電話の画面を見つめ

メールを読んで、フッと笑い始めた。


そんなサキの様子を見て、ハルマもトールも頭に「?」マークが出た。

サキは 画面を2人に見せる。



『!』



ビックリマークだけが 画面に浮かび上がっている。

他には何もない。


「アイツらしいな。お前ら、注意しろよ」


「えっ?」


と、言った時だった。


2人の足元の床が突然 摩擦を失って

氷のようなツルツルの床に変わり

その床に足を取られて転び、ハルマは顔面を強打し、

トールは尻餅をついた。


「イッタァーッ!!」


ハルマが顔を押さえて床をゴロゴロ転がってる隣で

トールは床にお尻をつけながら

何が起きたかわからない顔をした。

サキがため息をつく。


「だから言ったろう。『注意』しろと」


「な、なんですか!?これは」




ガチャン



トールが サキに問いかけたその時、一人の男性が入ってきた。


全身レザー製の黒い服を見にまとい

片手にヘルメットを持っている。


(あね)さん、久しぶりっす!!」


軽快な挨拶をサキに交わす男性。

床に転んでる2人を見て男性は笑った。


「『注意』マーク見たっしょ?だはははは」


「あっ!!お前ッ!!」


ハルマが鼻を押さえながら男性に指をさした。


「おお!ハルマじゃん!!大きくなったなぁ!!」


「てめッ!チクショウ!!すっかり忘れてたぜ!!」


「ハルマ、誰、この人?」



ハルマが怒って指した男性は サキよりも若く見え

ロングヘアの髪を後ろで束ねていてスッキリと清潔感がある。

細くて長い目尻が印象的な男。


男性はハルマを無視してトールに手を出した。


「俺は 葉山(はやま)アツシ。よろしくな」

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