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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆見えない敵 編◆
142/228

軌跡を辿る後輩たち

トールとアキトが

風紀委員会の定期集会を終えて

廊下を歩いている時だった。


1学年の職員室のドアの前で レミがひとりで立っていた。

じっとしてるのが苦手なのか

体をフラフラさせたり、爪先で床をトントン蹴ったりしている。


「どうしたの?清水さん」


「あ、トール君!アッキー!

今 ユエちゃん待ってるの」


ちょうど その時 ユエが職員室の扉を開けて出てきた。

トールとアキトがいたことにユエは少し驚く。


「何かあったの?」


トールは ユエが職員室で何をしていたのか率直に聞いた。


「え、えぇ………実はね、

先生から生徒会に入らないかって言われて……その話を」


「生徒会!?」


3人とも ユエの言葉に驚いた。

ユエは 少し顔を赤らめる。


「でも……私よりも適任の人はいるってお話したのよ。

あまり目立つ事 好きじゃないし……」


ユエは 人見知りというよりも

自分から心を開いた人としか関わりを持たない。

入学当初も クラスメートの友達を作らず

ひとりで図書室で過ごす事を好んでいた。


今でも そのスタイルは変わらず

一般の生徒達から見たら

ユエは近寄りがたい存在だった。


ユエ自身は周りにどう思われていようが気にしないのだが

今回、生徒会への加入を持ちかけられて戸惑っていた。


「いーじゃん!ユエちゃん!やっちゃいなよ!」


「レ、レミ………」


「うん、いいと思うな。模範生って感じするし」


「そうだね、僕もいいと思う」


3人が賛成するので、ユエは さらに顔を赤くした。


「か、考えてみるわ」


ユエが 肯定的な言葉を出した横でレミがトールを見た。


「模範生っていうなら、トール君だって模範生よねー。

成績も上の方だしさ。

トール君は生徒会の話きてないの?」


「僕は何も……それに生徒会なんて器じゃないよ」


「仮に樋村まで生徒会入ったら

まるで薄野(すすきの)先輩たちみたいな感じに近づくよな」


「じゃあ、あたしも アッキーも そのうち……なんて?」


「まぁでも、ハルマはないね」


「ないない」


4人は冗談混じりで笑っていると

職員室の隣の生活指導室からハルマが出てきた。


「お前ら聞こえてんぞ。バカにすんなよコラ」


「うわっ!ビックリした!!」


「オレは生徒会なんてのに興味がないだけだ。

入ろうと思えば入れる」


「生活指導室から出てくる不良生徒が

どの(くち)叩いて生徒会に入れるなんて言ってんのさ」


トールはハルマを小馬鹿にした。

ハルマはムキになって反論しだす。


「それじゃアイツは どーなんだよ。

ほら、あの桐谷と戦ったチャラ男」


時任(ときとう)先輩のこと?」


「お前、先輩に向かってチャラ男って失礼だぞ」


「せや、失礼やで」


5人は一斉に振り向いた。

たった今 話に出た 元・生徒会3年生 時任(ときとう)エイジが

5人の背後に現れていた。

5人が驚いている顔に優越して ニヤリと笑っている。


「な、なんでいるんですか!?」


「ワイの話が聞こえたから来てみたんや♪」


「聞こえたって……どこから」


「ワイは『八曲奏師(ビート・エイター)』や。音楽のスペシャリストやで。

『聴覚』に自信があって当然♪」


エイジは 変な決めポーズを取った。


「んで、ワイみたいのが生徒会に入れたんがおかしいか?ボーズ」


エイジは ハルマを見た。


「まー、そうやな。ワイのポジションはお前みたいなもんや。

昔は よう荒れとったわ、ナハハ」


エイジは ひとりで会話をまくしたてる。


「ワイが生徒会に入れたんは薄野(すすきの)の口利きやな。

上手いこと先生説得させて 全員、生徒会に入れさせてなぁ。

『その方がみんなで行動しやすいから』って、それだけの理由やで?

しょーもなかったわ。アイツらしいっちゃアイツらしいけどなぁ」


「はあ…………」


5人は エイジの話に黙って耳を傾けていた。


「で、誰か生徒会に入るんなら、みんな入ったらどうや?」


「えっ!?」


「ワイが口利きしたろか♪どれどれ」


「ちょっ、ちょっと待ってください!!」


エイジが 1学年の職員室に入ろうとしたので

5人は慌てて止めに入った。

エイジは 5人に阻止されて つまらなそうに ふてくされた。


「まっ、ええわ。気が向いたら話に来いや。

ワイらが卒業する前までにな!じゃ♪」


エイジは ステップを踏みながら

5人の元を去っていった。


5人は顔を見合わせる。



「あたし達が本当に生徒会やったら

この学校どうなるかな?」


「いや、ないだろ」


「私はまだ生徒会に入るとは決めてないわよ」


「もしかしたら僕らって、あの人達の軌跡を追ってるのかな……」


「じゃあ、オレ会長な」


「黙れよ この馬鹿」




5人は いつか自分達が

ソウタ達のような存在になるんじゃないかと想像した。



後輩に「能力者」が来れば、の話だが。

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