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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆見えない敵 編◆
139/228

トール VS アキト 2

別人格のアキトが

怒り任せに体を変形させてしまい

苦悶の表情を浮かべている。


自分の意思で変形させるのとは違い

感情的になって変形させると自分で制御するのが難しくなる。

それが暴走につながってしまう。


トールは アキトの様子を見て

すぐにアキトを抑える事を考えた。


右手の「白虎」を消し、

トールは左手の袖をまくり上げた。



「10分くらいかな」


トールは左手の封印札をほどく。

召喚したのは緑色の(オーラ)をまとった「玄武」だった。



アキトが トールに向かって走り出した。

(いびつ)な変形をさせたアキトの両手が

トールを斬り刻もうと接近してくる。


自身の身を守るのに使う「玄武」の力。

だが、トールは防御のために使わなかった。


アキトの攻撃を ギリギリでかわして

トールはアキトの背後をとる。

そしてアキトの背中に左手を当てると

アキトの背中に「玄武の甲羅」がのし掛かった。


「ッ!!?」


アキトの片脚が ガクッと崩れる。

トールはアキトの背中から 手を離さず

そのまま「玄武の甲羅」ごとアキトの背中の上に乗った。


「ッッチクショ………動けッ……!!」


上に乗った「玄武」の力がアキトの体を押し潰していく。


「なんだよッ……これ!!」


「これが本来の「玄武」だよ。

僕がいつも使う妖怪の力は

妖怪たちの薄皮一枚取った部分に過ぎないんだ」


「薄皮一枚……!?」


「そう。だから妖怪の力を深く借りすぎると

自分が危ないから、10分間が限度かな」


アキトの背中に「玄武」の重力がかかり

次第にアキトは地面に体をつけた。


「10分以内に君が起き上がれたら君の勝ちでいいよ」


「……ッ……クソが!!」


トールはアキトの背中に乗ったまま勝敗の条件を加えた。


アキトは 重力に()されたまま

手や脚をなんとか動かして起き上がろうとしたが

肩の上を完全に押さえられてしまい、何をしても無駄だった。


重力に圧されているせいで体形変形も出来ない。

押し潰されたままアキトは話し出した。


「なんでだよ……なんで、誰も俺の事わかってくれないんだよ……」


「………!」


「友達なんて欲しくなかったんだ………

俺は 人を殺すために造られたんだから……

それなのに………お前らのせいだ」


「僕らのせい?」


「お前らと会わなきゃ俺の事なんて誰も気にしなかっただろ。

でも「外」に出してもらえるようになって

みんな俺の事 知っていって………変な気分になったんだ。

俺を認めてくれる奴等がいるって思うようになっちまって………

でも、みんな俺を恐がる」


「それは………」


「どうしたらいいんだよ…………教えてくれよ」


気が付いたら、アキトの体から力が抜けていた。

弱音を吐いたアキトは戦意を無くしている。


トールは「玄武」を消して

アキトの背中から降りて すぐ隣に膝をついて座った。


「僕らに出会った事で、君の存在意義を変えちゃったわけか。

それで、君の前から僕らがいなくなれば君は満足するの?」


「…………ッ」


アキトはトールの質問に言葉を詰まらせた。


「満足しないでしょ?

この間、僕らを嫌いになる事は出来ないって言ってたもんね。

みんなの事が好きなのを言わないでほしいって言っておいて、

自分の事をみんなにわかってもらいたい、って矛盾してるんだよ」


「…………ぐ」


「君が 自分の事をもっとみんなに知ってもらいたいなら

君も みんなの事を知らないと」


「………!」


「桐谷君が 君に先輩を会わせようとしないのは意地悪じゃなくて

君が先輩の事をわかってないからだよ。

君は自分の気持ちを優先にしてるから

先輩がどうなっちゃうかなんて気にしてないでしょ。

恐がらせて傷付けたら、自分も傷付くって事が わからない?

…………だから桐谷君は 許さなかったんだよ」


「…………」


アキトは 地面から体を起こして あぐらをかいて座った。

トールに説教され、ショックを受けている。


「……………じゃあ、俺は先輩に会わなきゃいいんだな?

それがお前らの望みだろ。

どうせ勝負に負けたんだ………。

お前の言う事聞いてやるよ」


アキトはうつむいたまま

トールに負けた敗北感と 説教で図星されたショックを

抱えたままトールの前から姿を消そうとした。




「………何、言ってるの?

僕の言う事を勝手に決めないでよ」


「……え」


トールは立ち上がって

傷心のアキトに 提案を持ちかけた。


「5秒………いや、10秒間

君に先輩を会わせてあげられる方法があるよ」


「10秒間!?」


「会わせてもらえないよりマシでしょ?

僕が桐谷君を説得してあげるよ」


トールはニッと笑って

アキトに 「モモと会うための10秒間」の話をした。

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