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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆見えない敵 編◆
138/228

トール VS アキト

これまでトールは

アキトと戦う事を避けていた。


ハルマとは 戦う事が出来ても

アキトとは 戦いたくなかった。


斬られるのが嫌だから、と言えば それも当てはまるが

一言で言えばトールにとってアキトは「親友」だから。


ハルマとは 戦う事で築かれてきた仲だから

「戦友」として見ているのに対して

同じ委員会だったり、プライベートでも仲良くしているアキトは

「親友」だから 戦う事に引け目を感じてしまう。


アキト自身はトールは どう思っているかわからない。

もし戦う話が出たら「俺は構わないけど」と、言うと思うが

主人格のアキトの方から「戦いたい」と言ってきた事はない。


だからトールとアキトが ぶつかった事があるのは

ハルマの願いで(おこな)った「三竦み戦」の時と

別人格のアキトが暴走した時に それを止めるために戦った 2回だけ。




初めて 1対1 で戦うので

別人格のアキトは 嬉しそうにニヤニヤしている。


トールは 構えた今でも

半歩 身を引いてる状態だった。



「俺が勝ったら俺の自由にさせてもらうぜ。

今、コイツ 俺の中で眠ってるからな。

その間に止められてた事 全部やってやる」


別人格のアキトに負けた場合

おそらくアキトはモモに会いに行ってしまう。

この不気味な顔付きと 殺気を放った状態で。


それだけは 阻止しなければ、とトールは手に力を込めた。

右手に「白虎」を召喚して 獰猛な獣の爪をアキトに向ける。


アキトは すでに両手を 変形させて

鋭くなった爪を振り上げトールに飛びかかった。


トールも すぐに応戦する。


右手の「白虎」は トールの体とは別の成り立ちなので

攻撃を受けても傷が付いたり、血が出たりはしない。

だが他の部分は 生身の体なので

攻撃をくらえば斬られるし血が出る。


トールは なんとか右手だけで

アキトとの攻防を繰り返したが

身のこなしが軽く、腕の長いアキトの手が

徐々にトールの肩や脚などを斬っていく。


(おさ)されてはならないと

トールも右手の白虎の爪でアキトの体を裂いていく。


間合いをとる2人。


アキトは まだ鬱憤(うっぷん)が晴れていないような感じで

トールを(にら)み付けた。


「お前……この間、俺を邪魔扱いしないって言ったよな?」


「言ったよ。それが?」


「じゃあコイツにも言ってくれよ。

俺の事を邪魔扱いしないでやってくれって」


「桐谷君は君の事 邪魔だなんて思ってないよ」


「じゃあなんで会いに行かせてくれないんだよッ!!」


アキトは イラ立ち始め、

モモに会わせてもらえない不満をトールに ぶつける。


「それは、君が出す殺気で 先輩が恐がっちゃうからだよ!

先輩を恐がらせたくないから会わせられないだけだよ!」


「そんなの会ってみなきゃわかんねーだろ!」


「君は先輩の様子を 意識の中から見た事ないの?

あんなに人見知りが 激しくて

今でもハルマとは 話が出来ないんだよ?

心を開いてる桐谷君が いきなり殺気を放って現れたら

どうなるかくらい想像出来るでしょ!!」


トールの 言い返しにアキトは

激しく顔を(ゆが)ませた。


「……………誰も俺を見てくれない」


「………え?」


「誰も俺の事ッ!!お前も!!コイツも!!先輩も!!」


アキトは 発狂し始め

自分の尖った爪を胸に突き刺そうとした。


「やめろ!!」


アキトが 自傷行為をしようとしたので

トールは慌ててアキトに飛びかかった。


トールは アキトの両手を抑え

アキトは トールを離そうと体を振った。


興奮したアキトの体に異変が走る。

制服を破って肩の皮膚と骨が飛び出し

腕からも本来ならありえない形状の骨が尖って出てきた。


暴走した時の状態に似ている。


それに気づいたトールは

意識の中で眠る主人格のアキトを起こそうとしたが

増加した力により、振り落とされて

地面に叩きつけられてしまう。


「くっ…………!しまった………!!」


痛みを堪えながら

トールは立ち上がり、アキトを見た。


あの時の暴走ほどではないが

やはりいつもと違う体形変形に

アキト自身が苦しんでいるように見える。



これ以上の刺激を与えてはいけない。



一瞬で決着をつける方法をトールは 思い付いつく。



「………気の進まない事ばっかりだ」


トールは そう呟くなり

「白虎」とは違う(オーラ)を放ち出した。

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