レベルアップ その3
~ 旧校舎・屋上 ~
3学期に入ってから初めての火曜日の放課後。
ハルマ、トール、ユエ、レミが屋上に集まっていた。
そして冬休みの間に薄野ソウタ達と共に
能力の修行をしていたユエとレミは
詳しい内容をハルマとトールに話した。
「あたしの能力も、ユエちゃんの能力も
相性によって向き不向きがあるモノだから
それを理解した上での修行だったわ」
「相性?」
「うん、あたしの場合、自分の性格や体質に合った『石』の力を
引き出していけば、長く効果的に使えるってわかったの。
前みたいに短時間で何種類も使うのと違って
長時間で1つの『石』を極めて使うやり方よ」
レミの天然石同化能力は
1つの石につき3分前後のタイムリミットがある。
今までは いろんな種類の石を用意して
臨機応変に対応していたが
薄野ソウタとの修行で、自分の相性の良いの石を選り抜き
その石の力を極めるやり方を提示された。
「『誕生石』とか『守護石』とか聞いた事あるでしょ?
あんな感じで自分に合う石を見付けていったの。
それで 見付けたのがコレ!」
レミはポーチから 3つの石を取り出して
ハルマとトールに見せた。
銀色の鉄の塊のような石と
無色透明で透き通った石と
深くて濃い赤色の石。
ハルマは 銀色の鉄のような石に見覚えがあった。
「それって、初めて屋上に来た時に使ったやつ?」
「そう!『パイライト』よ。
硬度の高い石だから 攻撃にも防御にも使えるの!
それと、これが『クリスタル』で こっちは『ガーネット』」
無色透明な水晶『クリスタル』と
深紅の天然石『ガーネット』を手のひらに転がす。
「しばらくは この3つを使いこなすのに集中するわ」
レミは 3つの石をポーチにしまった。
「武藤さんは どんな感じなの?」
「私は、今まで満月の夜じゃないと操れなかった星座の力を
いつでも引き出せるように訓練したわ。
全部の星座じゃないけど、レミと一緒で
相性の良い星座なら操れるようになってきたの」
ユエは 今まで星座の力を使うときは
満月の夜を選ぶか、月と同じ役割をしてくれる
『ムーンストーン』の力を借りていた。
だが、『ムーンストーン』だけでは3つの星座しか操れず
満月の夜は 12星座全てを操れるが
必ずしも満月の夜に 戦えるとは限らない。
そこでユエは 制限に縛られずに星座の力を使える方法を見つけた。
「星座には属性というものがあるの。
例えば……私の『天秤座』の属性は『風』
樋村君の『射手座』の属性は『火』、
赤嶺君の『獅子座』も属性は『火』なの。
属性は全部で『火』『風』『土』『水』の4つに分かれてて
同じ属性同士は相性がいいの」
「…………ってことは、武藤さんは
同じ『風』属性の星座の力を使えるようになったって事?」
「ええ、同じ『風』属性の星座、
『双子座』と『水瓶座』をいつでも使えるように訓練したの。
まだ、ちょっと不完全だけど使えるようになってきたわ」
ユエは自分の分身を作り出す『双子座』と
傷を癒す『水瓶座』の力を ほぼ使えるようになった。
「あと『風』は『火』属性との相性もいいの。
だから 頑張れば『射手座』も『獅子座』も使えるようになれそう」
「武藤さん、それスゴいよ!」
「ありがとう。まだまだ頑張らなきゃ」
ユエは トールに微笑んで返した。
「ヤベー、戦いてーッ!!」
ハルマは 2人が力をつけていくの見て高揚感が沸き、
ウズウズしはじめた。
「あら、いいわね!練習がてらハルマんに相手してもらおうかな!」
「えッ!?」
「ユエちゃんも 一緒にやっちゃおうよ!」
「………そうね、いいわね」
「『やっちゃおうよ』じゃねーよッ!!
女相手に 2対1とか 戦いづらいだろーが!!
ジョーダンに決まって……」
と、ハルマが叫んでる側で
ユエも レミも 得意気に笑って構えていた。
「………………よろしく、赤嶺君」
「か弱い女子 相手にするんだから ちょっとは手加減してよねー」
「どこにか弱い女子がいるんだコラァ!!!
トール!助けてッ……………」
「ガンバレー」
「ちょっ、待て、まっ……
ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
ハルマは気絶する前に
『最近自分への風当たりが強い』と心の中で嘆いた。