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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆見えない敵 編◆
134/228

レベルアップ その1

短い冬休みが終わり

3学期に入った。

3学期目の初日の事。


学校に生徒達の声が響き渡る。

ハルマは教室に入らず、渡り廊下の辺りを

フラフラ歩いてる時だった。


「おう、赤嶺」


ハルマの背後から声をかけてきたのはアキトだった。


「………こっちの校舎で気安く話しかけんなよ」


ハルマは よそよそしい態度をとった。


ハルマとアキトも、トールと同様

普段の学校生活を送る校舎では

関わりのないフリをしている。


「樋村、知らない?」


「………来てないのか?」


「いないんだよ。委員会にも来なくて」


「ケータイで連絡とりゃいいだろ」


「かけても返事ないんだよ。メールも返ってこないし………」


「風邪でもひいたのか?トールのヤツ」


「ハルマん!アッキー!!」


ハルマとアキトが話し合ってる所に

レミとユエがやってきた。


「だからお前ら!こっちでオレに声かけんなって」


「あれ、トール君は?」


「オレを見るなり二言目にはトールの事かよ。

アイツ学校来てないらしいぞ」


「えっ!? なんで!?」


「さあ?風邪じゃね?」


「…………まさか、何か事件に巻き込まれたとかじゃないよね」


「……………そんなまさか」


冬休み中に散々『ウォンバッド』について話し合ったので

4人は トールの不在に不信感を抱く。


「ね、ねえ………帰りにトール君ち行ってみない?」




――――――――――




ハルマ、アキト、ユエ、レミは

学校の帰りに トールの自宅である神社に立ち寄った。

初詣の時と違って、閑散として静かだった。


「すみませーん」


レミは 神社の正面に向かって声を出した。

しばらく待っても返事はない。


「住職様もいないのかしら?」


ユエは 神社の周りをキョロキョロ見た。



ガサッ



「!!」


神社の奥にある林から 物音がして

4人とも その音に気付いた。


音のあった所から

神社の住職である宗寛(そうかん)が姿を見せた。


「トールの友達か……!」


宗寛(そうかん)は 4人が訪れていたのを

今、初めて知ったかのようで驚いている。


「すまない、今 トールは………」


「師匠、大丈夫です」


宗寛(そうかん)の後ろから トールが姿を見せた。


上半身には衣服を身に付けてなく

古傷の(あと)や肩に刻まれた封印の文字を(さら)した状態で

トールは 4人の前に出てきた。


「師匠、みんな 僕の体の事を知ってる仲間なんです」


「トール!」


4人は トールの姿を見て固まっていた。

普通ではない上半身の傷痕に驚いたのもあるが

何よりも 右腕全体から胸の辺りまで 包帯のような物で

グルグルに巻かれたその姿に驚いていた。


「あー……今日から学校だった……間に合わなかったか………」


「ト、トール………だっ……大丈夫なのかよ、それ」


「大丈夫だよ。それより みんな上がっていって」


トールは 4人に笑いかけると

4人を自宅の中へ招き入れた。




――――――――




「心配して来てくれたんだね、ありがとう」


トールの部屋で 5人は 輪を作るように座った。

トールは服を着替えていて、いつもどおりの姿に戻っていた。


「あたし、知らなかったわ……

トール君の腕しか見た事なかったから……」


ハルマ、アキト、ユエは 以前に

トールの上半身の状態を見たことがあったので

レミほど衝撃は受けてなかったが

それでも やはり驚きは隠せなかった。

トールは 申し訳なさそうに苦笑いをすると話し出した。


「みんなが能力(チカラ)を磨くって聞いて

僕も この一週間 戦ってたんだ」


「戦ってた?…………何と?」


「『朱雀』と」


トールは右腕を上げた。

トールの右腕には 主に召喚する『白虎』と

今までで一度しか召喚したことのない『朱雀』がいる。


『朱雀』を召喚したのは、ユエと初めて戦った時だった。


誤って屋上から落ちたユエを救うために

召喚した『朱雀』の力は、トールの背中から

燃え上がる翼を出して一時的に浮遊能力を得る。

だが、トールは酷い火傷を負って苦しんだ。


それ以来、どんな場面でも『朱雀』だけは召喚していなかった。


「気性の荒いヤツでね……封印しておくので精一杯だったんだけど

操れるようになれば 今までより強くなれるって思ったから。

手懐(てなず)けるのに苦労したよ」


「すごいわ、樋村君」


トールは 照れ笑いをした。

その横でハルマが目を輝かせて ニヤッと笑った。


「『朱雀(そいつ)』で戦ってみてぇな」


「アンタ相変わらずね。

『ウォンバッド』が現れるかもしれないって時に よくそんな事……」


レミは(あき)れて ため息をついた。

この流れならトールも(あき)れるのがいつもの事だが……


「いいよ」


「えっ!!?」


誰もがトールの返事に耳を疑った。

言い出したハルマでさえビックリしたが

トールの まさかのOKで 再びニヤリと笑ってガッツポーズをした。



「よっしゃあぁッ!!そんじゃさっそく……」


「ちょっと黒墨(くろずみ)にしちゃうかもしれないけど、いいよね?」


「………………………………え?」


「ハルマなら大丈夫だよね、(すみ)になるくらい」




トールは ニコリと笑った。


その笑顔の裏からただならぬ邪悪な気が見える。

ハルマは 一瞬にして『朱雀』の恐ろしさを肌で感じた。

他の 3人もトールの気配の違和感に気付いた。


「ト、トール君、なんか(ダーク)………」


「ミステリアスね………素敵だわ」


「おい、赤嶺。早くお灸据()えられてこいよ」


「…………………いや、ちょっとやっぱり具合悪いかも、オレ」




ハルマは黒墨(くろずみ)の危機をまぬがれた。

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