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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆見えない敵 編◆
129/228

それぞれの思い その2

人通りのない路地に

トールと別人格に入れ替わったアキトが

対面しあっている。


背の高いアキトは 小柄なトールを見下すように睨みつけている。


トールは 別人格アキトの殺気を浴びて肩をすくめた。


もし、別人格アキトがトール達を嫌っているなら まだ良かったのだが

逆の気持ちでいた事実を聞かされ

邪魔者扱いしてしまった罪悪感で とにかく気まずかった。


入れ替わってから アキトは一言も発しない。


「………や、やっぱ怒ってるよね……?」


「…………………」


「ごめん…………ごめんね。

知らなかったんだ。君が僕らの事を

そんな風に思ってくれてたなんて」


「……………………なよ」


「え?」


「言うなよって言ってんだよ!!」


別人格アキトが突然キレたので

トールはビックリした。


「なっ、何?」


「今言った事だよ!!他の奴等には言うんじゃねぇ!!」


「??」


アキトは 必死に何かを訴えるような顔付きで

トールに向かって叫んだ。

トールは アキトの言った意味を考えた。

そして気づいた。


「君が、みんなを好きな事を……

みんなに言わないでほしいの?」


「チッ!」


舌打ちが答えだった。

アキトはトールから目線を外して

悪態をつき始めた。


「クソッ……コイツが余計な事 お前に言いやがるから

出にくくなっちまったじゃねーか」


「……なんで?いいじゃない。友達なんだから」


「!!!」


アキトが突然 顔を赤らめた。

アキトの赤面した顔を見たトールは目を丸くした。


「いいか、お前!!俺は友達なんて欲しくなかったんだ!!

けど、コイツのせいで仕方なくお前らと

付き合わなくちゃいけなくなった俺の身にもなってみろ!!」


「…………嫌いになれないの?」


「なれるか バカ野郎!!

俺とコイツは 一つの人間なんだぞ!!」


「ごめん、二重人格の事って よくわからない」


「とにかく他の奴等に 俺の気持ちは言うなよ!!

言ったら ぶった斬ってやるからな!!」


「わ、わかった。黙ってるよ」


アキトが必死に その事だけ念押しするので

トールはとりあえず返事をした。


「……あの時の事は 本当にごめんね。

もう君を邪魔なヤツだなんて思ったりしないから

これからもよろしくね」


「うるさい!!じゃあな!!」


そう言うと アキトは目を(つむ)った。

かきあげていた髪が下に落ち

再び目を開けると いつものアキトに戻った。


「………アイツ、照れ屋だったんだな。

俺、今 初めて知ったよ」


「あ……うん、すごいツンツンしてた」


「これ、みんなに 俺の気持ち言ったら、コイツどーすんだろ?」


アキトが いじわるく笑いながら言った。


「それ、僕 絶対とばっちりくらうから やめて」


「プッ………ククッ、アハハハ!!」


アキトは腹を抱えて笑った。

別人格の取った行動がよっぽど可笑しくて

思い出して笑いまくった。



「そんなに笑ったら また腹いせされちゃうよ」


「大丈夫 大丈夫。あーあ、まったく………。

今までこんな事なかったのにな」


「え?」


「俺さ、アイツの事 別人だって思ってたんだよ。

アイツも そう思ってたはずだ。

でも、お前らと出会って

俺達は一つの人間だって気づいたんだよ」


「…………うん?」


「だからさ、別々にならなくて良かったって話。

もし、俺とアイツとで意見が割れたらどうなる?

アイツが本当に赤嶺を嫌っちまったら

あの組織と戦えなくなってただろ? 俺」


「そ、そうだね!」


「だから心配しなくても俺達は戦えるから

コイツの事、頼ってくれよ」


アキトは 笑顔で胸をはった。


「うん、わかった。

…………頼るけど、そのたびに

悪態つかれそうなのが 目に見えるよ」


「子供だから許してやってくれ」


トールは アキトの返しに苦笑いをした。



この後 アキトは別人格の仕業によって

声が出せなくなり、心配したトールにより

アキトは またサキの荒治療を受ける はめになった。

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