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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆見えない敵 編◆
127/228

組織加入

年の瀬。


大病院の伊丹村(いたむら)サキの一室に

ハルマ、トール、アキト、ユエ、レミと

生徒会の5人、ソウタ、エナ、リュウ、エイジ、イズミの

10人の 能力者が一同に集まった。


ソウタ以外の生徒会の4人は

ソウタから事情を聞いたので、改めてサキからの説明はなかった。


全員 神妙(しんみょう)になって黙っている。


サキはイスに腰をかけて脚を組ながら

全員の顔を見渡して話し出した。


「これから貴様らは『ウォンバッド』との接触が

避けられない状況になるだろう。

だが、貴様らの役割は あくまで一般人を装いながら

ハルマを守る事だ。

余計な探りはするな。それは我々、上の役割だ。いいな?」


全員は 静かにサキの話を聞いた。


「あの……」


トールが 静かな緊張を破って

サキに質問をした。


「今年の入学から今までの間に、

その『ウォンバッド』らしい接触はなかったと思うんです。

それが、今になって突然 攻めこんでくるものなのですか……?」


「確かに。ハルマ君の居場所は向こうには

知られていないのですよね?」


トールに続いてソウタも

疑問を投げ掛けた。


「ああ、バレてはいない。

だが、奴等の目的はハルマだけではない」


「………!?」


「奴等は事件、事故、災害、など

人々を混乱に(おとしい)れるのを第一に動いている。

その過程で我々が阻止しに出向く事で

ハルマの情報を得ようとしているのだ。

だから、貴様らから余計な接触はするなと言ったのだ。

奴等は 攻めこんでは来ない。

日常の不秩序に紛れて 付け狙ってくる。

惑わされないように気を付けろ」


形の存在しないような敵の話を聞かされ

全員に緊張と不安と焦りの顔が見えはじめた。


「それと、もうすぐハルマの失われた記憶を戻せる

可能性が出てきたのだ」


「えっ!?」


トールが声をあげ、驚いた。

今までサキが 何年もかけてハルマの

記憶障害と奮闘してきたのに

いきなり治る見込みが出てきたと言ってきた。


これには ハルマも目を丸くして驚いている。


「私が出張の間に この病院内で

能力(チカラ)に目覚めた者が現れたな?」


「えっ……白神君!?」


「話によれば、相手の『脳』を見る力があるのだろう?」


「あっ………」


トールは 白神ユウヤの能力(チカラ)について思い出した。


ハルマを強制的に眠らせた後

ハルマの脳を覗き見て、学校の事や

自分達の事を知った………と、

トールは仮説を立てている。


「その者の能力(チカラ)を使って

今一度、ハルマの脳を見てもらう。

そこで『ウォンバッド』にいた5年間の記憶を

呼び覚ます事が出来れば、我々にとって有利になる」


「でも、白神君は今………」


白神ユウヤは 学校でトール達と戦った事により

力を使いすぎて普通の眠りに戻ってしまった。

いつ白神ユウヤが力を復活するのかは

わからない状態だった。


「わかっている。だから その者の回復待ちなのだ」


サキが チッと舌打ちをしてハルマ達を(にら)んだ。


「貴様らが余計な事をしなければ」


「オレ達のせいじゃねーよ!!」


「フン、まぁいい。

とにかく貴様らは自分達の役目を理解して全うしろ。

ハルマと白神ユウヤの存在を『ウォンバッド』に漏らすな。

わかったか」


有無を言わさぬサキの言葉に全員が気を引き締めた。


「貴様らの事は上に伝える。

これで貴様らも我々の一員だ」


サキは立ち上がって前に出た。


「我々の組織の名を教える。

この名を知る者は我々の仲間であり、味方だ。覚えろ」




―――――――――




「ッ……ハーーーーーッ!」


時任(ときとう)エイジが息を吐いた。


病院の屋上に出てきた10人は

緊張を解いて気を(ゆる)めた。


「なんや……エライ事になったなぁ」


「でも、基本的には私達から何かする事はないのよね」


「しかし、相手が何かしてくるのを

待っているというのは、いささか気持ち悪いですね」


「んー、でも、勝手に探りに行ったら危ないしー

あのコワイ先生にも怒られちゃうよねー

どっちもヤダなー」


エイジ、エナ、リュウ、イズミは

特に深刻そうな口調でもなく、普通に会話をしていた。

その近くでトールは うつ向いている。


「みなさん……すみません……」


トールは生徒会の4人に謝った。


4人はトールが何故 謝っているのか?と思い

不思議そうな顔をした。


「なぜ、樋村くんが謝るのかしら?

私達は私達の理想に反する組織の存在を知ることが出来て

感謝しているのよ」


「そや、そーゆーのも想定してワイらは力つけてたんやで?」


能力(チカラ)を持った者の多くは

自己欲のためにそれを使う。

わたくし達は世の中のために使う事を考えていますが

『ウォンバッド』の組織というのは自己欲の塊であり、その力を」


「布施っち、みんな わかってるからー」


4人は巻き込まれた事に対して

怒ったり嘆いたりすることなく

むしろ『ウォンバッド』の組織壊滅の目標が持てた事に

意欲的になっていた。


レミが ハルマの後ろに来て

ハルマの頭を小突(こづ)いた。


「てか、アンタが謝りなさいよ!ハルマん!!

なんでトール君に言わせてんのよ」


「お、おまっ……言わせてねーよ!

トールが先に言っちまうから言えねーんだよ!!

悪いって思ってないような言い方すんなッ!」


「ふっ……」


ソウタが ハルマとトールを見て笑った。


「君達は本当にデコボコだな」


「本当ね。だからこそウマが合ってるのでしょうけど」


ハルマとトールは 顔を見合わせて変な表情をした。

ソウタは両手をパンッと叩くと全員の注目を集めた。


伊丹村(いたむら)先生は俺達の事をまだ信頼してないだろう。

余計な事をして信頼を損ねてはいけない。

俺達は『スクリーマー』の末端構成員である事を自覚して行動しよう」



この言葉に全員が意識を持った。


『ウォンバッド』に対立する組織『スクリーマー』の一員として

新たな境地に足を踏み入れた。


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