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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆VS 放課後の道化師 編◆
102/228

scene3 ― 美作エナ ― ○▲□(トライラッシュ)

エナの左肩から血がにじんできた。

傷は浅いが 動かすとズキンと痛みが走る。


痛みを(こら)えて(やり)を構え直す。


飛び回る「(ボール)」にも警戒しながら、エナは再び飛び出して

道化師少年に槍を突いた。


少年は「三角形(トライアングル)」で応戦する。


『スピードが落ちてるよ』


少年はわざとらしく言って「三角形(トライアングル)」の

降り下ろす力を強くする。


エナは 挑発に乗らず、槍の攻撃を緩めない。

左肩の痛みがあっても表情には出さなかった。



ここで、エナの槍が「三角形(トライアングル)」の軌道を

変えることに成功した。


(ふところ)()いた道化師少年の胸にめがけて

槍を貫こうとした。





ガキィンッ!!!


「!?」


捕らえた、と思った槍からは

硬い感触と 槍の先が砕けた音がした。



道化師少年と槍の間に「四角形(スクエア)」が存在していた。


薄いガラスのように見える青色の「四角形(スクエア)」は

小さい道化師少年を面積内に すっぽり収めて

少年を守っていた。


一瞬の出来事で驚くエナの隙を突いたように

(ボール)」が エナの右顔に当たってきた。


エナは 体勢を崩し、槍を地面に落とした。

カラカラン と槍が転がる。



「く………」


エナは槍を拾って構え直そうとしたが

すでに道化師少年がエナの後ろを捕らえていた。


三角形(トライアングル)」の切っ先が

エナの背中に降り落ちる。



エナの背中に一筋の切り傷が刻まれた。

ブレザーとシャツを切り

背中の皮膚まで達していた。


左肩と同様に背中からも血がにじむ。



エナは それでも倒れることなく

両足で地をしっかり踏んで道化師少年の方に向き直った。


エナの顔からは冷や汗が流れる。




道化師少年は ケラケラ笑い

愉快そうにエナを指差して(あざけ)った。



たとえ「三角形(トライアングル)」の攻撃を防げても

四角形(スクエア)」が自動で道化師少年を守る。

気をとられれば「(ボール)」が飛んでくる。



エナは 工芸室の外に出ようと出入り口に近付いた。

外の広い所に出れば「(ボール)」は使えなくなるだろうと思った。


だが、扉の取っ手を引いても押しても扉は開かなかった。


『ボクを倒さないと ココからは出られないよ』


「!!」


『残念だったねー』


道化師少年が 口角を上げてニヤリと笑った。



エナは決して広いとは言えない

工芸室に閉じ込められ、この空間の中で

戦うことを余儀された。




エナは道化師少年の笑う顔を見て

イズミの笑った顔を思い浮かべた。





―――――――……



常に笑顔でヘラヘラ笑う影井(かげい)イズミの

「笑顔」を初めてのは エナが 2年生の時だった。




「エナちゃーん」




イズミの屈託のない声が

脳裏によみがえる。

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