序章『騎士と姫』
すみません、性懲りもなく帰ってきました。
やはり、この手の小説が一番読まれるからね(露骨)
てなわけでタイトルを目立つ感じにして再開です。
きらびやかでサラサラな金色の髪のとある女性は、その碧い瞳で窓から外を見た。
太陽の光がサンサンと降り注ぎ、小鳥の囀りが聞こえてくる。空は雲一つない晴天が広がっており、これ以上はない最高の朝であろう。
「ようやく帰れるのですね……」
そうつぶやいた女性の名前はクィナヴィア・カストゥス。ドゥームニア王国の王、ユクラシア・カストゥスの一人娘である。
彼女はグィントという、ドゥームニアから北へと向かったところにある隣国、グィントへと訪問していた。本来なら彼女はもっと早く帰国する予定だったが、この国に一か月間という長期滞在をする羽目になってしまったのだ。
その理由は、ドゥームニア王国に悪魔が襲ってきたからである。
この現状で帰国するのは非常に危険だと判断したクィナヴィアに随伴した象徴騎士の三人は急遽帰国の予定を伸ばし、更に滞在することにした。
この滞在はグィント側は快く了承。これから良好な関係を築くためにも、こんなことを断るわけがないのである。
そして、ドゥームニア王国と連絡を取り始め、はや一週間。悪魔の討伐に成功し、それから数日間様子を見て街は速やかに復興している。
「そういえばクィナヴィアよぉ、聞いてるかい? ドゥームニアを救った英雄の話」
赤毛をポニーテールにしており、褐色の肌を持つ女性が壁に寄りかかりながら、クィナヴィアに対してとある噂について聞いた。
その彼女の名前はペディ・ナイヴス。ラウンドテーブルの象徴騎士の一人である。
「ええ、存じております。ドゥームニアを襲った悪魔を倒した騎士様だとか。わたくし、密かにお会いするのを楽しみにしているのですよ」
「そうかい、実はアタイも楽しみでねぇ。どうやら元ゴロツキらしくって、アタイと境遇が似てる」
「そうらしいですわね。ですが、悪魔を倒した人なんですもの、きっと素敵な方に間違いありません」
キラキラと目を輝かせながら、自分勝手に妄想に耽るクィナヴィア。外交で他国の政治家たちと対面している彼女はキリッとしていてカッコいいのに、プライベートになると人が変わったように柔らかい人になるギャップが凄い人である。
「そういえば、ブルース様とイグニス様はどうしましたか? 姿が見えませんが……」
「あぁ、イグニスの野郎は政治家さんたちと最後の話し合い。ブルースはグィントの女騎士たちにもみくちゃにされてるよ。お別れが嫌なんだろうさ」
「ああ、ブルース様は可愛いお顔をしていますものね。それは女性に大人気でしょう」
ふふふ、と上品に笑うクィナヴィア。
そのとき、ガチャリ、とドアが開く音がした。ペディとクィナヴィアはその音がした方へと目を向けると、青色っぽい髪をしている男の子がいた。身長はあまり高くなく、小学生に見間違われるほどであるが、それでも彼は一六歳という年齢である。
「ブ……ブルース・オブリージュ……ただいま参りました。遅れて申し訳ありません、クィナヴィア様……」
なんだかもの凄く疲れた様子の彼。
この彼がクィナヴィアに随伴したもう一人の象徴騎士である。名前は彼が名乗った通りブルース・オブリージュ。身長は一六〇センチメートルと少し、という男性にしては小柄な体格。それに加え童顔で、さらに女性寄りの顔たちをしているのだ。もしかすると、女の子に見間違われるほどである。
一六歳という年齢で象徴騎士になった彼。騎士団の中でも最年少であるが、その強さは本物。あのラインス・ロックに肩を並べるのではないか、と噂されているほどである。
「あらあら、ブルース様、どうされましたか?」
「どうもしたもじゃないですよ。なんですかこの国の女騎士たちは? 男であるボクに向かって可愛いだの何だのって、失礼にもほどがあります!!」
腕を組みながらプンスカ怒るブルース。
苦笑いするペディの傍ら、自分のペースを崩さないクィナヴィアは微笑みながら語り掛ける。
「彼女たちはブルース様と別れるのが惜しいから、そのような言葉を言ったのではないでしょうか? 離れたくないほどに、あなたを愛してしまったのです。そこを否定しては男が廃りますわよ?」
「は、はい……」
良いように言い包められてしまったブルースはその場に佇む。その姿は見ていて哀しくて、思わずペディは彼の肩を叩き、ただ頷いていた。まるで、お前の気持ちは分かるぞ、と言わんばかりに。
ペディは男勝りな性格が特徴だ。騎士になる前はいわゆるゴロツキで、悪さばかりしていた。そしてついた名が『狂犬ペディ』である。キレてしまったら最後。誰にも手が付けられないくらいに凶暴化する。
そんな彼女は女の子として見られることはない。むしろある層の女性から人気なのである。
可愛らしい童顔のおかげで男として見られないブルース、そして、男勝りな性格なために女性として見られないペディ。
この二人はどこかしら似ているのかもしれない。
「イグニス・ドレッド。ただいま戻りました」
そしてそこに続けて現れたのはイグニス・ドレッド。少し年老いた、厳つい顔をしている銀髪の彼も、象徴騎士の一人である。
「イグニス様、お話合いはもうよいのですか?」
「ええ、とても貴重なお話をさせてもらいました。グィントの政治家たちはとても優秀な人たちばかりだと思いましたね」
「そうでしょう。このグィントはわたくしたち、ドゥームニアと友好的な関係を持っているのですもの。その関係をもたらした人たちが優秀ではないはずがありません」
「そうですね。その通りです」
笑いながら答えるイグニス。
そして、クィナヴィアは表情をキリッっとさせて言った。
「さて、ペディ様、イグニス様、ブルース様が揃ったところでここを出ましょう。いざ、我が国ドゥームニアへ!」
正直、他の小説も同時進行で書いてるから執筆の進行速度はとても遅いですが、ある程度は書き溜めているのでしばらくは一定の間隔で投稿する予定です。
このあとがきは次のお話を投稿次第消します。
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