序 章『君の弱さ』
このページを開いてくださりありがとうございます。
一応、一次創作では処女作になると思います。
そんな作品でも、楽しんで頂けたら幸いです。
【15/08/18】
小説全体の書き直しが終わりました。
――きっと俺は、孤独が怖かっただけかもしれない。
俺の拳に衝撃が走った。それは人を殴ったからで、つまりは目の前の弱々しい学生を暴力で恫喝し、金を奪い取るための行為だ。
これがやってはならない事だというのは理解している。
だけど、俺には仲間がいる。どうしようもない仲間が、いるんだ。
だからやってしまう。彼らがやるなら、俺もやってしまう。反発するような事をすれば、きっと標的は俺になるだろうから。
「おい歩斗、お前の分だ」
「ああ」
きっとこの中で一番暴力を振るったであろう俺は、その奪い取った金の分け前を不良グループのリーダーから貰った。
俺はきっと、悪人面で、ガタイが良くて、力もそれなりにあったから、彼らの同類だと思われたのだろう。だから声をかけられたし、仲間にもされた。
先ほど奪い取った金を、俺らはゲームセンターで浪費する。
こんな事を続けてどれくらいになるだろうか、と俺は思い返していた。
不良グループと仲良くするようになってからというもの、ケンカやカツアゲなど、悪いことを多くしてきた。家族からクズだの罵られ、学校の生徒からは目線をそらされるようになり、嫌なことでいっぱいだった。
だが、今のこの生活を抜け出せないでいる。
この不良グループとの関わり合いを失えば、本当に俺は一人ぼっちになってしまうから。だから、悪い事でも続けている。別にこれが悪いことだからやめたい、だなんて俺は思っていない。すでに俺の中では、これが当然なものになっていた。
「いやー、アイツの泣き顔ったら最高だったわ。自分はエリート様だからっていい気になっちゃってさぁ、自分がザコだってなんで分からんかねぇ? なぁ歩斗」
「まぁ、俺にかかればあんな奴なんか一蹴りで掌返しさせてやれるからさぁ、次も任せてくれよ」
「さっすが!! 岸波君はケンカ番長だねぇ」
「なんだよそれ。古くせえからやめろよ」
「あはは! よし、じゃあ次はカラオケ行こうぜ」
俺たちはゲームセンターから出てカラオケボックスへと向かう。
毎日のように今日のような日々が続く。金に困ったら金を持ってそうで、なおかつ気弱そうな男を脅して、時には暴行を加えて金をむしり取る。それで夜遅くまで遊び惚ける。そんな毎日だ。
「よっしゃ、せっかくだからナンパして良い女引っかけようぜ」
リーダーはそう言って、周りを見渡し可愛い女の子を探し、可愛い女の子に話しかけた。
女の子もノリノリでついて来てくれる。そりゃそうだ、リーダーは顔が良くてイケメンの部類なのだから。
見事女を三人ほどナンパすることに成功した不良グループは二時間のカラオケの後、女をお持ち帰りした。しかし、俺はその悪人面ということもあってか、彼には女が寄ってこなかった。結局、イケメンのリーダーと、その他イケメン二人に持っていかれた。
「クソッ!」
俺はそう吐き捨て、一人でとぼとぼと自宅へ帰宅した。
家はすでに真っ暗で、両親共々もう寝てしまっている。
それもそのはず、現時刻は深夜二時を過ぎていて、明日も両親ともども出勤で朝が早い。真面目な親父と母さんなのだから、そういうスケジュールはしっかりしているんだろうさ。
あぁ、もうどれだけ両親と顔を合わせていないのだろう。朝目覚めると、両親はすでに出勤していて、俺が家に帰ってくる頃にはもう寝ている。
俺の素行が悪くなってからというもの、最初は怒っていた両親も、ここ最近では顔も合わせる事がなくなった。
こうなってしまったのは自分のせいだと自覚している。
だが、今更どうしろと言うんだ。壊れてしまった関係を修復することなど無理だ。両親と仲違いになった時間が長すぎた。だから、お互いに関わることを躊躇してしまっているのだと思う。
「寝るか……」
遊び疲れたのか、早々に寝ることにした俺は自分の部屋に行き、ラフな格好に着替えてベッドに横になった。大分疲れていたのか、寝るまでにそうそう時間はかからなかった。
そして、夢を見た。
また剣の夢だ。
最近、よく見る夢。
湖の近く。教会の入り口の前に岩に刺さっている剣がある。数々の騎士たちはその剣を抜こうとも抜けず、その国の最高の騎士でさえ、その剣は抜くことはできなかった。
――俺なら、その剣を抜くことができるのか?
見ている夢の中でそう思った俺は、その剣に手を伸ばす。
掴みたくても剣の柄を持つことができない。だって、これは夢なのだから。そこに実体なんてものはない。
夢は人の記憶を再構成したものだと聞く。頭を整理するために行うときに見るものが夢なのだそうだ。
だけど、この夢は一体何なのだろうか。
今日は剣の話をしたから、だからこんな夢を見たのだろうか。だとしたら、とんでもない妄想だと、俺は思う。
――あともう少し、もう少しで掴めるんだ。
俺は必死に手を伸ばす。すると、手に何かがぶつかった。
その感触に驚き、目を覚ます。夢だったはずなのに、なぜ俺は物体を掴んでいるのか。
その疑問はさらに大きいものとなる。
「は?」
目の前には少女の顔があった。それは見知らぬ人物だった。
そして、今自分が掌で掴んでいるものが何かようやく把握した。それは、女性の乳房、つまり――おっぱいだ。
「はぁ、どうせ夢なら女性らしい大きいものが良かったなぁ」
まだ寝ぼけている俺はまな板に近いような女性の胸を揉む。どうせ夢なのだから、小さかろうが何だろうがやれることはやっておこうと思う。それが男と言うもの、あーあ、悲しいねぇ。ホント、これが夢だなんて虚し過ぎるだろ。
当然、その女は顔を真っ赤にしてわなわなと怒りを露わにしていた。
きっとこの後殴られて目を覚ますと、また嫌な一日が始まるのだと思うと、ちょっと鬱になる。
「な、な、な、何するかぁぁぁああああああ!!」
「ヘブジッ!?」
思いっきり横っ腹を蹴られた俺はよく分からない声を上げながら数メートルノーバウンドでぶっ飛んだ。痛すぎるんですけど何これ。
そこから落ち着くまで結構かかったが、落ち着いたからこそ分かってしまった。
「夢じゃ……ない? ここ、どこだ!?」
その場は夢で見た場所とまったく同じだった。目の前には水は澄んでいるとてもきれいな湖。その畔にある教会。そして、岩に刺さった剣。
「いや、夢、なのか? なんなんだよこれは!」
俺は混乱するしかなかった。だってしょうがないだろ。寝て起きたら知らない場所だった、だなんて映画だとかアニメみたいな、そんな体験を実際にするとは夢にも思わなかったのだから。
すると、ずしずしと足音を立てながら女を俺に指を指しながら言ってきた。
「ちょ、ちょっと! ひ、人の胸触っておいて何なのよアンタは! 説明してもらいましょうか!?」
そこに立っていたのは、茶髪のツインテールでバンダナをかぶった少女だった。身体の起伏が少なく、色気の欠片もない。口調も女らしさがなくて、残念でしょうがない。
だけど、今はそれどころじゃない。女の身体つきなんてどうでもよくて、問題は、ここはどこなのかって事だ。
「な、なぁ、お前さ、ここはどこなんだよ!? 俺は自分の部屋で寝たつもりだったのに、なぜか知らない場所で寝ていて……あぁもう! わけ分かんねえよ!!」
「わけが分からないのはこっちよ! 一体誰なのよアンタは!?」
俺と女、揃いも揃って混乱してしまっていて、まともな会話にならない。
あーもう、どうしろってんだよ。
ふと何気なく空を見上げると、この世のものではないものを見てしまった。
この青空を飛んでいたのは鳥ではない。ゴツゴツした鱗に大きな翼。まるで恐竜の様な姿をしたそれは、ドラゴンではないのか?
「あはは、あは、あはははは……。ここはゲームの世界なのか? ファンタジー小説の世界なのか? なんなんだよ、このメルヘンチックな世界はよおおおおおおお!!」
俺は叫ぶ。もう自分一人ではこの現状を納得できる気がしないからだ。
そして、これから始まるのは俺こと岸波歩斗にとって、とても大切な愛と勇気の物語だ。
序章を読んで頂きありがとうございました。
良ければ続きも読んで頂けたら嬉しいです。そして感想等を頂ければもっと嬉しいです。待ってます!