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魔神学園  作者: 秋月白兎
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plotter & schemer ②

 昼休みのひと時、事件は起こった。新たな魔神使いがイサムとリュウキに接触を図る。 

 イサム達は彼らと手を組むのか? 或いは……。

 昼休み半ば。イサムとリュウキが学食で順番待ちをしていると、噂を聞き付けたのであろう生徒達が次から次へと質問と称賛を浴びせて来るのだった。リュウキは元々目立つ事を望まない方だし、アサミの事もあって困る部分もあるのだが、やはり悪い気はしない。いや、正直に言えばいい気分である。反面、目立つ事に慣れていないせいか、恥ずかしいやら落ち着かないやら複雑な気分である。

 イサムはと言うと、得意の絶頂だった。元々お調子者なのだ。特に女子からの称賛には分かりやすい事この上ない程である。


 だがそんな気分は長続きしないのがこの世の定め。


 学食の入口あたりがざわめき、人混みを真っ二つに割って二人の男子生徒が入って来た。二人とも身長は高い方ではない。170cmあるかないかだ――が、日焼け顔の方は制服の上からでも引きしまった筋肉が感じられる。相当に鍛えていそうだ。

「おい……あの二人、魔神使いの……」

「ああ、三年の野崎ヒロミチと二年の池上ユウジだ。もしかして……」

 日焼けした方――野崎が手前にいた生徒に話しかけた。

「おい、ここに上杉イサムと若園リュウキってのが来てるらしいんだが……しってるか? なぁ」

「ああ……そこの二人です」

「サンキュ」

 周囲の生徒達のざわめきを聞きながら、二人がイサムとリュウキに近付いてきた。

「お前らが上杉と若園か? なぁ」

「おれが上杉だけど」

「僕が若園ですが」

 野崎がイサム達を値踏みするように観察した。

「ふ~ん……お前ら結構鍛えてるな。ああ、そっちの色の白い方。身構えなくていい。別にやり合おうってんじゃない……まだ、な」

 何を感じたのか、リュウキが軽く拳を握り足の位置を変えていたのだ。空手の「レの字立ち」である。

イサムはと言うと自然体のままだ。が、この男の場合はいつ何をやらかすか分からない。自然体の方が危険な場合も多々あるのだ。

「ああ……すいません。で、僕達に何か御用ですか?」

 構えを解いてリュウキが尋ねる。こういう場合は常識的なリュウキが担当するのが、この二人のやりかただ。

「ああ、まずは自己紹介しとこうか、なぁ。俺は三年の野崎ヒロミチ、ラグビー部だ。こっちは二年の池上ユウジ、美術部に籍を置いてる。で……二人とも魔神使いだ」

 野崎はラグビー部だけあって短く刈り込んだ髪と日焼けした顔が印象的だ。線が太い方ではないものの、躍動感を感じさせる。池上は色白な顔にやや長めの髪が額にかかっている。美術部だというのに大人しそうな雰囲気は無い。不良まではいかない、いわゆる「チョイ悪」といった雰囲気だ。

「で、御用というのは?」

 リュウキが話を促した。

「早い話が……だ。お前ら、俺達と組まないか? なぁ」

「お前らのおかげで、パワーバランスが一気に崩れたのは分かってるだろ? で、見た所お前らも生徒会だのヤンキー達だのと組むタイプじゃなさそうだ。なら……俺達『自由同盟フリーアライアンス』と手を組もうじゃねぇか」

 だがイサムもリュウキもきな臭さを感じ始めていた。

「正直,唐突過ぎじゃないっスか?」

「僕らは貴方達の人となりをを全く知りません。いきなり組もうと言われても……」

 ヒロミチとユウジが「もっともだ」と言いたげに苦笑した。

「ハッキリ言おうか,お前らもEibonが出した条件は知って受けてるんだよな? で……だ。一番ゴールに近いのは誰だと思ってる? なぁ」

 大勢の前で「願いを叶えてもらえる」事を言わないのは判断力がある証拠だ――イサムはそう踏んだ。それは敵に回すと厄介なのと同義である事も。

「まぁ噂じゃ前原先輩ッスよね」

「僕もそう思います」

 フリーアライアンスの二人は腕を組み,大袈裟に頷いて見せた。

「そうだな。で,会長のFAITH POINTがどのくらいか,知らねぇだろ?」

 ユウジが思わせぶりに笑った。

 ヒロミチが腰に手を当てて告げる。

「あいつのFAITH……もう2000ポイントを越えてんだぜ? 知らなかったろ。なぁ」

 怖いもの知らずのイサムも息を飲んだ。

「なん……!?」

「にせ……!?」

 自分達の十数倍のFAITHである。全校生徒のFAITHを集めてもそこまではいかない。これまでに戦い,勝ち取って来たFAITH合計なのだろうが,圧倒的過ぎだ。

 ヒロミチが話を続ける。卒業生達の中にも魔神使いがいて,かつて前原は彼等とも戦い勝利とFAITHを手に入れてきた。それはいい。だが新参者にとってあまりにも不利な条件ではないのか。特に最後に参戦してきたイサムとリュウキには,まず勝ち目はない。弱点を狙おうが虚を突こうが通用すまい。

 だが抜け道が一つだけある。別に一対一で戦わなければならないワケではないのだ。

「この四人がかりなら……希望はある。なぁ」

「そうそう,もう綺麗事は言ってられねぇ。だろ?」

 イサム達の目が変わった。それはどう考えても悪党のやる事ではないのか。イサムは汚いヤツや強いヤツを奇策で打ち破る事に快感を見出すタイプだし,リュウキは武道家としてのプライドが多対一というやり方を拒絶させた。

「……俺達とは組めねぇってのか? なぁ」

 ヒロミチが一歩前に出た。

「俺達とやりたいってのか。そうなんだろ?」

 ユウジも一歩踏み出した。

 イサムとリュウキはさがらない。

「つーか組む気はないってだけで,アンタ達とやり合う気は無いって事なんスけど」

「そう、それに生徒会もヤンキーグループも先輩達も、誰一人として人となりを知らないんですよ。だからまだ、どの勢力にも加われません」

 ヒロミチとユウジの双眸にぬめった光が宿った。狂気を孕んだ光だ。

「ほう……俺達も舐められたモンだなぁ! なぁ!」

「お前ら、茅野程度に勝っただけで調子ぶっこいてんだろ!」

 イサムもリュウキも、この二人がたったこれだけで怒りだすとは想像していなかった。面食らっているのだが、イサムは頭の片隅で納得し始めていた。

 ヒロミチとユウジは、手に入れた力に振り回されているのだ。魔神を得た事によって、エゴが際限なく肥大化しているのだろう。自分の要求を断る事はできない、断る筈が無い――そんな確信を抱いているのだ。それは選民思想にも似ているのかもしれない。

 神に選ばれるどころか、「魔神」を操っているのだ。妙な優越感に侵されても不思議はない。

「調子にのるもなにも、『誰とも手を組まないってだけ』なんですよ? 別に問題無いはず……」

「やかましい!!」

「口答えすんじゃねぇ!!」

 怒声が周囲を圧した。

 だがこれで――イサムが完全に「挑発モード」に入ってしまった。

「口で答えなかったどうやって答えるんスかぁ? 筆談とか?」

 ヘラヘラ笑いながら言い放つのだから、憎らしさこの上ない。今回はリュウキも、あまりの理不尽ぶりに腹を立てていた。イサムの憎まれ口に便乗する。

「ジェスチャとかイラストで答えろって事かもしれないぞ」

 リュウキは冷ややかな目線を投じながらだ。これはこれで憎たらしい。

「そうか……こんのクソガキがあぁぁぁぁ!!」

「あの世で後悔しやがれえぇぇぇぇ!!」

 ヒロミチとユウジの身体から人間ならざるものが浮かび上がった。巨大な姿が浮かび上がり、天井を破壊する。建材が床に叩きつけられて重い音をたてて砕ける。

「まさか……こんな所で!」

「正気じゃない!」

 イサムとリュウキは、「表へ出やがれ!」と行くつもりだったが、自分達の甘さを悟った。


 


 

今回はやや短めの更新です。次は盛大に行こう! 行けるといいな……。 

 

5/26 勧誘シーンを改稿。

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