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魔神学園  作者: 秋月白兎
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Conquer①

イサムの大天狗VSキョウジのアフラ・マズダの一戦が始まった。FAITHでは圧倒的に不利なはずが,予想を超えて健闘するアフラ・マズダ。

そして更なる能力を見せる。

 戻ってきたリュウキとハイタッチを交わしてイサムが闘技場へ向かう。いつものおちゃらけた表情は影をひそめ,鋭い目つきとなった今は凛々しいと言っていい。普段からこれなら女子からの人気もあったろうが,いかんせん性格に問題があった。

 ――油断さえしなければ十分な余裕を持って勝てる。が,問題はその後だ。リュウキに勝つには大量のFAITHが要る。どうやって集めるか……またヒール(悪役)をやって負のFAITHを集めるか? いやそれは『その後』がまずい――

 そんな事を考えながら所定位置に立つと,向かい側に日陰キョウジが立っているのが見える。その顔にニヤついた笑みが浮かんでいるのを認めた瞬間,イサムの頭の中で「戦闘モード」へのスイッチがONになった。


「よう日陰者の日陰先輩。今のうちに泣いて謝るなら恥をかかせる前に『不戦敗』ってヤツを選ばせてやってもいいんだぜ? ちなみに今のは『先輩』と『不戦敗』をかけたシャレだ。上手いだろ?」


 一部からクスクス笑いがあがる。だがリュウキやアサミ,魔神使い達や親しい者たちからは溜め息が漏れる。これでウケるのは笑いのハードルが低いのだろう。そしてキョウジは冷やかな視線を浴びせてくる。これで余計にカチンとくるのがイサムだ。


「なんだよその目は! いいか,俺は笑わせるのは好きだが笑われるのは大嫌いなんだ! もう泣いても謝っても許してやらねぇからな!」


 キョウジの視線がますますつめたくなり,熱くなったイサムの頭の中まで氷柱を差し込まれたように冷えていく。


――なんだコイツ……いやこの人は。なんか……ヤバいぞ――


 カッカしながらでも勘だけは鋭いままのイサムは危険信号が頭の中で鳴り響き始めたのを認めた。今までにない異様なオーラというか,薄気味悪さを感じたのだ。心の中が底冷えするような感覚。それを打ち消すように自分を鼓舞する。


――落ちつけ。深呼吸だ。そう,圧倒的なFAITHの差は埋められない。油断さえしなけりゃ勝てる相手だ。なぁに大した事ぁない――


 両者が魔神を出し闘技場内へ進める。お馴染みの大天狗とキョウジが出した魔神アフラ・マズダが輝くその姿を見せつける。


「ケッ,派手好きなこったぜ」


 イサムの挑発にも平然たるキョウジ。いや,そもそも聞いてすらいないのか。

 アストライアが黄金の天秤を高く掲げ,ダメージの癒えた前原が開戦の号令を発した。同時に両者の魔神が突進する。だがその瞬間にキョウジが意味ありげな視線を前原に向けたのをイサムは見逃さなかった。


――なんだ? あの二人の間に何かあるのか? いや,今は目の前に集中!――


 アフラ・マズダの拳が唸りをあげて飛ぶ。かわした大天狗の宝剣が首筋へ銀光を引いて吸い込まれる。寸前で身体を静めてかわし,踏みこんで右ストレート。大天狗が上方へと飛んで難を逃れる。

 両者が一旦間合いをとって離れる。湧き上がる大歓声。アストライアに向かって流れ込むFAITH。力が細胞一つ一つに漲ってくる。

 だがイサムは素直に喜べなかった。FAITHの差は歴然なのに,アフラ・マズダの拳から感じる力感は半端なものではない。


「おいおい,マジかよ……」

「僕のアフラ・マズダを舐めてもらっては困るな。仮にもゾロアスター教の最高神,<光の善神>なんだぞ? 少々のFAITH差があろうと,君のその妖怪とは基本性能が違うんだよ」


 甲高い声で説教されて黙っているイサムではない。


「ハン! 『少々の差』じゃ無ぇだろうが! 何倍あると思ってんだよ!」


 キョウジの視線がますます冷たいものへと変わっていく。イサムの背中を冷たいものが伝い落ちていく。


「……なら思い知らせてやろう。僕がアフラ・マズダにプラスした能力を! 今ここで! 見せてやろう!」


 アフラ・マズダが両手を高く掲げるや,暖かな輝きが溢れて周囲を照らし出した。輝きはこの戦いを見ていた生徒や職員――殆どの生徒と教職員だ――をくまなく照らしだした。湧き上がる大歓声。そして噴き上がるFAITHの渦。大瀑布のようにアストライアの天秤に流れ込むFAITHの奔流。そしてアフラ・マズダに流れ込む莫大な力。

 

「な……なんだよこれは!」

「フン。これだからダメなんだよ,君達は。頭の中まで筋肉で出来てるんじゃないのか? いわゆる『脳筋』という奴だ」

「なにぃ!?」


 凄んでも意味を為さない。すでにアフラ・マズダのFAITHは3000POINTを超えているのだ。唯一のアドバンテージを失ったのでは迫力もなにもあったものではない。


「教えてやろう,僕がアフラ・マズダにプラスしたのは『チャーム≪魅了≫』だ」

「チャーム……?」

「そうだ。如何にしてFAITHを集めるのかが焦点になるのなら,直接FAITHを集める能力にすればいい。そしてこんな大舞台は僕のアフラ・マズダにうってつけなんだよ!」


 言葉を失うイサム。そして魔神使い達。戦ってFAITHを集める,或いは誰かを助ける事で集める。そんな固定観念に囚われていた自分達の迂闊さに歯噛みする思いだった。


「もっと戦略的に考え動くべきなんだよ。ススム! 君も例外じゃない!」


 前原を見据えるキョウジ。それを見つめ返す前原。その場に居合わせた者は皆,そんな二人を見比べるのだった。

ちょっと短いですがとりあえず更新です。

なかなか書けなくて……^_^;

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