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魔神学園  作者: 秋月白兎
16/40

aerial battle ①

 FAITH POINTで大差をつけられたイサム。このままではマズイと走るその先は――?

 初夏の日差しを受けて,生徒達が登校していく朝の通学路。爽やかな空気を木っ端微塵に打ち砕いて爆走する自転車がいた。乗り手の名を上杉イサムという。 

 目指すは生徒会長・前原ススムのいる3-Bの教室だ。現在のところ,イサムのFAITHはリュウキの半分ちょっとという状態である。ハッキリいって大差がついてしまったと言えよう。

 ――このままではマズイ――

 負けず嫌いのイサムは,その思いだけで朝から自転車をかっ飛ばしているのだった。その勢いはアーケード街に入っても衰える気配を見せなかった。危ないにも程がある。 

 道を横切る三毛猫がただならぬ気配を感じて立ちすくむ。気配の主は自転車を爆走させるイサムだった。三毛猫が目を見開いて仰天する。

「オラオラ危ねぇぞ猫おぉぉぉ!」

 三毛猫がすっ飛んで逃げ出し,間一髪で命拾いした。目を白黒させる猫には目もくれず,イサムはあらゆる障害を蹴散らして爆走を続ける。

 そのままの勢いで正門に突入し,後輪を滑らせてターンする。耳障りなブレーキ音と擦過音,ついでに砂煙を撒き散らして駐輪場へ突進。教師の制止もなんのそのだ。

 自転車に鍵をかけるとカバンを持って駆け出し,前原の姿を探し始めた。Eibonの館での話し合いで,対戦の希望は前原に出す事が決まったのだ。希望は生徒会を通して相手に伝えられ,承諾を得れば希望者にその旨が伝えられて放課後に対戦となる。対戦カードは昼休みに全校放送で告知され,FAITHの一本化と戦いの早期終結を計る事になった。

 今イサムは対戦の希望を出すべく前原を探しているのである。一刻も早く希望を出さねば,誰かに先んじられる可能性がある。それがまたもやリュウキへのものであったら――そしてリュウキがそれに勝ったら,戦力差は目も当てられない。

 小学校以来の親友だが,事ある毎に張り合ってきた二人はライバルでもある。僅差で負けるなら納得も出来るが,大差で負けたとなるとプライドが傷つくなどというレベルではすまないのだ。

 3-Bの教室では出会えず,学校中を走り回る羽目になってしまった。関係無さそうな一年の教室はおろか理科室や体育倉庫までのぞいて回った。それでも前原は見つからず,諦めかけて廊下をヨタヨタと歩いていた時だ。後ろから声をかけられた。

「やぁ上杉君,おはよう。どうしたんだね?」

「前原先輩!」

 探せば見つからず,諦めれば向こうからやって来る。人生の法則である。

ようやく対戦の希望を出せると目を輝かせるイサム。

「……なるほど,空中戦の決着をつけたいということだね」

「そうッスよ! まずはこの因縁に決着をつけないと!」

 意気込むイサムに対して,前原は眉を寄せて考えていた。

「実は……既に一件の申し込みがきているんだ」

「なん……!?」

 さすがに誰が誰に申し込んだのかは言えないが,その対戦が流れればイサムの申し込みが繰り上がる事になると告げ,前原はイサムの方を叩いた。

「そう気を落さないでくれたまえ。この対戦カードは流れる可能性が高いからね。それに,最悪でも君の希望は明日の第一候補という事になる。若園君との差はこれ以上開く事はないよ……君が負けない限り……ね」 

 見事に心の内を見透かされたイサムはムキになって否定する。だが頭の片隅で前原の言葉を分析していた。

 自分が負けない限り差が開く事はないのであれば,その申し込みはリュウキに対しての物ではないのだろう。これで一安心――とはいかない。リュウキに負けるのは論外だが,それ以外の魔神使いが強くなるのも問題なのだ。最後の最後まで勝ち残らなければ願いを叶える事はできないのだから。

 できれば今日,対戦できるよう祈りつつ前原の元を辞去して知らせを待つことにした。

 そして祈りが天に通じたのか,昼休みにイサムが望んでいた対戦カードが発表された。 

 鞍馬の大天狗vsガーゴイルの一戦が。



 放課後の校庭に人だかりができている。前原が再び闘技場を呼びだしたのだ。昨日の一戦で外部への被害は出ない事が認識されたのか,全校生徒の半数以上が集まっているようだ。

 その中で魔神使い達が最前列に陣取っている。一般生徒達も魔神使い達は「当事者」という事で,顔を見ると通してくれるのだった。

 前原とアサミは当然ながら最前列中の最前列だ。ただ,アサミの横にはリュウキが寄り添っている。いくらアサミを信じていても,内心穏やかではいられないのだろう。それとは別に,イサムの考えを読もうとする自分もいると認識していた。

「ねぇ,イサム君のこの戦いって……やっぱりリュウキ君に対抗しての事なのかな?」

 アサミが心配そうに問う。リュウキの親友という事で一緒に遊ぶ事も多いし,能天気なイサムとは波長が合うのだった。

「うん……それもあろうけど,『現在の実力』を確かめたいんじゃないかな」

 前回はまともにダメージを与えられなかった。それが苦い記憶になっているのではないか。何よりも大天狗の弱点は「パワー不足」の一点に尽きる。伝承でも天狗の法力は凄いが,腕力では人間に負ける事すらあるのだ。いくら鞍馬の大天狗といえども,その特徴は同じである事は,これまでの戦いで証明されている。

 FAITHが増した事でどれだけパワーアップしているのか――それを確かめようとしているのではないのか。リュウキはそう推測しているのだ。

「そうか,いつものトレーニングバトルじゃ実感できないんだ」

「多分ね。いつも僕か棒人間だし」

 対戦相手の池上ユウジ操るガーゴイルは,FAITHがある程度は戻っていよう。石の身体は元々パワーと防御力が高い。現時点での対戦相手に持ってこいなのではないか。

 リュウキの考えが当たっているのかどうか,答えが間もなく分かる。

 

 イサムとユウジがやって来たのだ。

 




 

 

 

 本当は一話でバトルの終わりまで書くつもりでしたが,今一つ盛り上がらないので,分割して更新となりました。

 次で決着の予定です!

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