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不良


 何だ? 何なんだ? 自分の周りにできる人だかりを見回す。高校生ぐらいの男子がざっと十人はいる。なんだかガラが悪いな……。何の用だろうか。

 ふと正面を見ると新庄は震えている。何でだろうか。どうしたのだろう。

 そんなことを考えているとその集団の一人がニヤニヤして話しかけてきた。


「てめえ、どっから来たんだよ」

「……は?」


 つい声を上げてしまう。なぜそんなことを聞くのかも分からない上に、何だか馴れ馴れしい。加藤は癖で眼鏡を押し上げる。


「おお、おお。優等生っぽいねえ」


 とその男が言い、その男達が笑う。眼鏡の癖についてだろうが、喧嘩腰なのが気にかかる。

 ……どうやら不良の集まりのようだ。と、加藤はここで初めて気付いた。


「どうするつもりなのかは知らんが、お前らのせいで店員の方が来られなくて困っている。そこをどいてくれないか」


 加藤の声に集団が笑う。今までしゃべっていた男はリーダー格のようだ。そしてそのリーダー格の男がまた口を開いた。


「お前、まだ自分の置かれてる状況わかってねえようだなあ。……おい。そこの女」


 呼ばれた新庄はビクッ、と体を縮こまらせた。

 リーダー格のその男がつかつかと新庄に近づく。そして新庄の顎を自分の手で持ち上げ、自分の方に向かせた。そして、空いた手で新庄の前髪をはらう。新庄は今にも泣きそうな顔をしていた。


「へえー。かわいいじゃんかよ。……おい、おめーら、見ろよ。まわ……」 

「おい」


 加藤がその男を遮り、低く太い声を上げる。ビクッ、と不良の集団は凍り付いた。その男も少しだけ怯んだが、また元に戻りニヤニヤとした顔を作った。

 

「なんなんだよ」

「……新庄に触るな」


 加藤の声を聞き、その男はプッ、と吹き出した。続けて、周りの連中も笑い出す。


「良い彼氏ぶりだなあ。だけどよ……お前さんよ、本気で状況わかってねえみたいだなあ? こっちは十五人いんだぞ。おい。逆らったら、終わりだぞ?」

「……どうあろうと、食事を邪魔し、新庄に不快な思いをさせることは許されることではない」


 加藤はその男の目を正面から見据えている。全く動じない。動じたら負けだ、と思っていた。そんな加藤を見てか、その男の顔から笑みが消える。


「おい。いいカッコしてられんのはこれまでだぞ?!」

「…………」


 加藤は黙り、その男を睨んだ。その男は顔にニヤニヤを復活させた。


「おお、おお。急に黙っちまったなあ。……やっぱ、こえーか? まあ、所詮、優等生だしなあ。殴ったりもしたことねえんだろ」


 その男の言葉で連中は笑い出す。そして男は加藤の前に顔を近づけ、自分の頬をトントンと指で叩いた。


「ほら、殴ってみろよ。どうせ、殴る勇気もねえん……」


 ドガッ、という強い音。その男は言葉を途切らせ、言葉にならない声を上げた。


「ん? これでいいのか?」


 不良の集団がざわつく。新庄は目を見張った。加藤の拳が握られていて、リーダー格の男はその下にうずくまっていた。キャー、という悲鳴が店のどこかから上がった。他の客に注目されているのだろう。


「て、テメエー。よくも……」


 周りの集団が加藤に敵対の眼差しを向ける。加藤は立ち上がった。怯んだように集団が一歩下がる。

 加藤は内心、とても怖かった。半分くらいならいけるかもしれないが、これでは数が多すぎる。だが、怯めば負けだ。態度をデカくしなければ、と思いこのような態度を取っている。

 ……嫌な汗が出てくる。


「だ、大丈夫だ。……たいしたことねえ」


 リーダー格の男がうずくまりながら言う。その時、別のところからおちょくるような声がした。


「“たいしたことない”? ハハハハ。なかなかすごい親分だなあ。加藤のパンチまともに食らって立てたことあんのは阿久保ちゃんだけなのによ。見栄はるなよ。おい」

「喧嘩腰やめなよー。あんな腐ってるやつらに」

「お前もな。……加藤も、殴んじゃねーよ。芸能人だったらアウトだぞ?」


 加藤は目を見張った。北、羽生、健の三人がそこにいた。


「お前ら……なぜ……」

「“なぜ”って……。おい、羽生、伊勢、気付いてなかったみてーだぞ。ギャハハハハハ。そーとー浮かれてたよーだな」

「やめたげなよー。楽しむのはいいことだよ」


 そう言いながら羽生も笑っている。加藤は顔を赤くした。……こいつらは、オレと新庄を尾行していたというのだ。


「なんでだ?」


 加藤は絞り出すような声で問いかけた。


「“なんで”ってそりゃ、加藤の弱みが見つかるかと思ってな。さすがのお前でも、女子とデートに来たら、なんかあんだろ」


 加藤はさらに顔を赤くして、俯いた。新庄もだ。


「顔赤くなってるー」


 羽生がそう言い、北と羽生は大笑いした。健が、ため息をつく。


「お前ら、バカにすんのも大概にしろ。……加藤、オレはコイツらにそそのかされてついてきただけだからな。悪くないぞ?」

「伊勢っちー。今更ずるいよー?」

「なんでだよ」


 北が、ガッハッハ、とわざとらしく笑う。


「……おい、お前ら、何なんだ」


 不良軍団の中の一員が不機嫌そうに言った。健、羽生は完全にビビり、凍り付いた。


「何なんだ、と言われたら、答えてあげるが世のなさ……」

「ふざけるな」


 北へのツッコミを、その男が担当した。

 そうすると、北が急に怒ったような表情になる。


「おい。てめーら、ちょーし乗ってんじゃねーぞ!! お前らのせいでな、加藤達にこれ以上の進展がなくなったんだぞ? コラ」

「あんだとお!!?」


 不良軍団は突然の北の態度に怒りの眼差しを向ける。


「このゴミどもが」


 北の最後の言葉で不良軍団は完全にいきりたった。


「殺す!!」


 誰かの言葉で不良軍団は北に一斉に襲いかかった。レストランのどこかからキャー、という悲鳴が再び上がった。


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