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帰還

ここから書きたかったところです。

これからが本番ですので、よろしくお願いします。

「おっはよーー。北恵太、無事帰還いたしましたあああ」

「北、うるさいぞ。停学だったオレ達は反省しなければならないのに、なぜそんなにテンションを高くしていられる?」


 朝の八時。あと十分でHRが始まるので、B組には大半の生徒が既に登校している。

 そんな中で、停学だった北と加藤が登校してきたのだ。


「おぉー。なつかしーなあ。せーいー、北っちゃーん」


 そう言って大きく手を振ったのは羽生だ。それに続き、クラスの男子が沸き立つ。そして加藤と北の周りに群がる。


「北ー。てめえ、刃物持った三人に勝ったらしーなー。すげー」

「おかえりー」

「シャバの空気はどーだ?」


 などと様々な声が飛ぶ。まあ、二年B組流の歓迎なのだろう。

 一部の女子が頬を染めながらひそひそと話している。聞き取れなかったが、“やっと加藤君帰ってきたー。よかったー”とか、“加藤君、久しぶりに見たけどチョーかっこいいね”とか、そんなことを話しているのだろうということは容易に想像できた。

 健も北達のことを見るのは二週間ぶりなので、やはり懐かしく感じた。

 ふと前を向くと、加藤が人混みをかき分けて自分の席、つまり健の右斜め後ろの席に戻ろうとするところだった。

 加藤が席に着いたのを感じ、後ろを振り向いた。


「……健。久しぶり」


 加藤から声をかけてきた。久しぶりに親友に会ったんだからもっと嬉しそうにしろよ! と突っ込みたくなるほどに加藤は無表情だ。危うく、ため息をつきそうになった。……まあ、これが加藤だ。


「おかえり。静」


 平静を保って健がそう言った時、相内も振り返った。相内も無表情だ。


「どうもお久しぶりです。加藤君。残念です。勉強では、ライバルだと思っていたのに。あなたに二週間分の遅れが出てしまうとは」


 あれ? 挑発? これ挑発だよな? と思いながら健は恐る恐る加藤の方を見た。……表情に変わりはない。


「こちらは心配ない。家でしっかりとやってきた。……まあ、テストが楽しみだ。二週間分多く学校の授業を受けている君がオレより点数が低いなんてことはないだろう?」

「絶対にそんなことはあり得ません。テストが楽しみです。次こそは、負けません」

「望むところだ」


 二人の間に火花がバチバチ飛んでいる。……加藤と相内ってこんな関係だったのか……。


「伊勢ぇ。こいつらなんなんだよー。この前のテスト学年一位と二位だろ? ヤバくね?」


 そう泣きついてきたのは小谷だ。


「確かにヤバいけど……。お前は何位だったんだよ?」


 健は聞いた。小谷はがっくりと肩を落として言った。


「三〇八人中三〇一位だよ……」

「マジ?! お前の方がやべえよ」


 健が率直に感想を言う。だよなあ、と小谷はまた肩を落とした。


「小谷、授業さえ聞いてればなんとかなる。励め」


 相内とのにらみ合いを終えた加藤がアドバイスを送る。分かった、と小谷が頷いた。“励め”なんて高校生の言葉じゃないとは思うけど。

 ガラッ。教室の前側のドアが開いた。ミサキ先生だ。時計を見れば、長針はもう“2”をさしていた。

 パンパンという大きな手拍子で、HRが始まった。


***


「で、何だ?」

「まあまあ、せーチャン、焦んないで」

「呼び方を統一しろ」


 あはは、と羽生が笑う。加藤はため息をついた。

 四人が揃い、活動が本格的にできるようになる。この機会に生徒会執行部に挨拶に行こうと思ったのだ。英語の先生の呼び出しを食らっている北が戻ってくればすぐに向かうつもりだった。


「それにしても遅いな、北」


 健は腕時計を見た。北が英語の先生に呼び出されてからもう既に二十分は経っている。


「そうだね」

 

 羽生も腕時計を見る。


「どうせまた下らない質問でもしているんだろう」


 加藤はため息まじりに言った。

 その時、ガラッと教室の前のドアが開いた。

 北だ。健は北に声をかける。


「何してたんだよ? 心配してたんだぞ」


 実際、大して心配はしてないけれども。北はああ悪い、と言ってから言い訳を始めた。


「いや、質問自体はすぐ終わったんだけどよ……。急に腹が痛くなって……」

「ははは。……せーチャン、腹が下って(・・・)たね」

 

 羽生が笑いながら加藤に言う。加藤はふん、と鼻で笑ってから羽生に話しかけた。


「それで、何なのだ? 用事とは」

「……ああ、別に、対したことじゃないよ。四人揃ったから、執行部の方に挨拶に行こうと思ってさ」


 羽生の代わりに健が答えた。ああ、そうか、と加藤は頷く。


「まだ、清水先輩以外のメンバーも知らないしな。ちょうどいいだろう」

「ああ。じゃあ、行こうぜ」


 健は教室のドアを開けた。皆、外に出る。

  

「……ところで、オレ達が居なかったこの二週間、お前ら何かしたのか?」


 加藤が話を変える。そうそう、と羽生がそれに答えた。


「……いろいろあったよ。落とし物を探してほしいとかばっかだったけどね。……でも、一つだけすごいのがあった。最初の依頼の時なんだけどさ……」

「何だ? それは?」

「……それはね……伊勢っちが長崎ちゃんに告ったんだよ!!」


 沈黙。……は? 違うと分かっているのに顔が熱くなる。


「……マジ?」


 北が健の顔を覗き込んだ。健はあわてて否定した。


「ち、ちげえよ。あれは事故で……」

 

 そんな健の声を聞き、北はニヤリと笑った。


「おぉー? 顔赤いぞぉー? 長崎ー? ああいうのが好みなのか、お前? 確かにかわいいもんなー。で、どうなったの?」

「だから違うって。どうにもなってねえし」

 

 全力で否定する。


「北、からかうのはやめろ。いいじゃないか。誰を好きになっても」

「……加藤、お前まで……」


 北と羽生が笑った。加藤はポーカーフェイスのままだ。

 このままだと負けた感じがして癪なので、健はそういえば、と言って話題を変えた。


「北、川崎とはどーなったんだ?」


 健の言葉に北の顔はさーっ、と青くなる。


「……な、なんで知ってる?」

「いやー、あんなにしっかりとしたキス見せられちゃねー」


 そう冷やかしたのは羽生だ。


「み、見てたのか……」


 青い顔がもっと青くなる。


「血が大量に出ていてあんなに元気だったからな。尊敬するぞ」


 とどめを刺したのは加藤だ。青かった北の顔がだんだんと赤くなっていく。……逆にかわいそうになってきた。

 北は俯き、顔を赤くしている。これ以上攻撃するのはさすがにかわいそうだと皆思ったのか、皆はそこで黙った。

 健は多少の優越感に浸りながら歩いていった。


「おい、ここだろう? 生徒会執行部は」


 少しして加藤が健に向かって聞いてきた。“生徒会執行部”と書いた看板がドアに掛けてある。


「うん。……そうだけど、生徒会執行部っていう看板掛けてあんだからオレに聞かなくてもよくね?」

「念のためだ」


 あ、そうすか。……思いっきり平然と返されるとガクッとなる。


「じゃあ、いくよ」


 羽生がドアに手をかけた。ゴク。健はつい唾を飲み込んでしまった。


「失礼しまーす」


 そう言いながら健達は生徒会執行部のドアを開けた。

 

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