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真犯人

真犯人

 翌日、健はいつも通り登校して、自分の席に向かった。まだ早い。クラス内には半分くらいの生徒しかいない。


「おはようございます。……羽生君とは仲直りしましたか?」


 そう無表情で話しかけてきたのは隣の席の相内だ。彼女は読んでいた文庫本にしおりをはさみ、机の上に置いた。ああ、と健が口を開こうとした瞬間、


「おーーーい。伊勢っちーーー。たいへーん。来てー」


 と大声で呼ばれた。健のことを“伊勢っち”と呼ぶのは羽生しかいない。

 その様子を見て、相内は、


「仲直りしたんですね」


 とただそれだけを言い、また文庫本を開いた。

 健は相内を少し見て、やっぱり加藤に似ているな……と思い、そのまま羽生のほうに向かった。


「……おはよ」


 近づくと羽生が暗い表情で挨拶をしてきた。健も返す。


「おはよう」


 羽生は少し躊躇ったような表情を見せた。そして一言だけ言った。


「……大変なんだよ」


 そして羽生は自分の引き出しから二つに降りたたまれたA4の紙を出した。


「何だソレ?」

「ちょっと見てみ」


 羽生はそう言い、その紙を差し出す。健は紙を受け取り、開いた。

 どれどれ…………。そこにはワープロで打たれたような文字が並んでいた。


「何じゃこりゃ」


 手紙を読んだ健は思いっきり顔をしかめた。そこには次のようなことが書かれていた。


“伊勢君と羽生君に告ぐ。

私は今まで長崎さんと手塚さんの下着を拝見させてもらった。

今日の放課後、私は谷本さんに同じことをする。清水生徒会長の依頼で忙しいとは思うが。

私は『権力の干渉しない部屋』に現れるだろう”


「なんか、痛いよねー」

「確かに」


 羽生の感想に適当に相槌を打ちながら健はもう一度手紙に目を通した。

 なめてんのか、こいつは。もし、犯人が健達を試そうとしているのなら、『権力の干渉しない部屋』とはどこだ、ということを言っているのだ。……そんなの分からないはずがない。


「『権力の干渉しない部屋』って、トイレまたは更衣室のことだろ。先生たちの権力の及ばない部屋だからな。……この場合はオレ達を試しているんだから、場所の特定できる更衣室だろ。……つまり、谷本の部活のってこと」


 羽生はその言葉を聞いてから二、三秒後に納得したような表情をし、叫んだ。


「さすが伊勢っち!!」

「“さすがスイッチ”みたいに言うな」


 周りの女子が小さく笑う。そういえば長崎はまだ来ていないようだ。


「……いやー、それにしてもすごいよー。オレなんて全然わかんなかったもん」

「……これは清水先輩が書いたのか……?」


 そう健が問うと羽生は少し躊躇ったようにしてから首を振った。


「……あれから考えてみたんだけど、あれだった。……犯人はもっと小柄だった。男だとしたら、小っちゃい方だよ」


 そういう重要なことを何で早くいわない? と健は言いたくなったが、堪えた。


「じゃあ、清水先輩じゃないんだな……」


 羽生は深く頷いた。

 ……それだったら……。健は被害者の顔を思い浮かべた。長崎、手塚、谷本か……。健が苦手とするチャラい奴らだ……。ん? あれ? 健は違和感を覚えた。もしかして……犯人は……。健はもう一度手紙に目を通した。


「……あ!!」


 唐突に声を上げてしまった。羽生が怪訝そうな顔でこちらを見る。


「……どしたの?」

「…………いや、羽生、お前昨日のHRでミサキ先生に“何で羽生君がそんなこと言うの?”って聞かれたときなんて答えた?」

「……え? 何で急に。……えーとね……」


 そう言って羽生は顎に人差し指を当て、思い出すポーズをとった。そして数秒経ち、あっ、と声を上げた。


「言う必要はないと思ったから“まあ、色々ね”とか言ってごまかした気がする」

「よくやった!!」


 つい叫んでしまった。周りの生徒が怪訝そうに見る。


「なんでもない」


 健は周りに何か問いかけられる前にそう言った。その声を聞き、健に集まっていた視線はそれぞれ別の方向を向いた。


「何でそれが“よくやった”なの?」


 そう健に問いかけたのは羽生だ。


「まあ、今日の放課後、分かるはず」


 そう言って健はにやりと笑った。


***


 ドキ、ドキ、ドキ。自分の心臓の音が聞こえる。

 つまらない日常。そんな毎日が続くはずだった。だが、今はとてもスリルを感じている。

 向かい合っているドアには“女子バレー部”という看板がついている。思い切ってドアノブに手をかける。


「おい、待てよ」


 伊勢健の声。後ろからだ。ここにいるということは……あの手紙の謎が解けたらしい。第一次試験はクリアだ。第二次試験は…………逃げ出す私を捕まえること!

 私は伊勢健の方に顔を向けないようにして一目散に駆け出そうとした。だが、次の瞬間の彼の言葉でその場に凍り付いた。


「……長崎」


 たった一言。一秒にも満たない言葉。長崎を硬直させるにはそれで十分だった。

 マジ? という羽生の声も聞こえる。

 長崎はサングラスの中で目を見張った。

 

 うそ!? ……ばれてた……!?


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