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二人


「はあ~」


 今、健の隣で大きなため息をついたのは幼馴染で長髪の羽生圭介だ。時計は15時50分を指している。学校のすべての授業が終わり、二人は今、部室にいた。羽生はエロゲーには手をつけていないようだ。椅子の上で何をすることも無くぼーっ、としている。


「どうした?」


 健は漫画から目を上げて羽生に問いかけた。羽生は長い前髪を少しいじってから、答える。


「……いや、何でオレ達こんなことしてんのかなあ、って。何で二人だけなのに“人助け”しなくちゃなんないの?」

「“偽善の魂”を忘れたか」

「まあそうだけどさ……」


 羽生は拗ねたようにして椅子の背にもたれかかる。

 一昨日の出来事で加藤と北は二週間の停学を言い渡された。加藤は教師を殴って気絶させた罪、北は同学年の者三人をボコボコに殴り、腕、肋骨などを折らせた罪だ。北に至っては停学どころでは済まないような気がしたが、まあ北自身も大怪我を負わされたということで、お互いの親が話し合い、大事にならないようにしたのだという。刺した方の三人は自ら退学を望んでいて、退学となった。また、川崎はその後北が入院している病院に行き、ずっとベッドの横について看病をしていたという。まあそれなりに二人の仲は良い感じだと健は聞いた。

 ちなみに加藤は阿久保先生に、殴ったことは言わないでやると言われたのだが、阿久保先生が罪を認めるのなら自分も、ということで罪を認めたらしい。

 また阿久保の方はというと先生達の会議でその話が出た時に自分の罪を潔く認めたので、教頭の心遣いにより、厳重な注意の上で二週間の謹慎という比較的軽い罰になった。

 それと被害者である田島とその家族があまり騒がなかったためこれも大事にはならず、この事件はあまり公にされずに終わった。

 公にされなかった、とはいえ事件の被害者や黒幕の情報が漏れなかっただけで、あるいじめを生徒会第一支部が収めた、ということだけは学校中に広まった。だから、依頼に来る人が増えるはずだった。なのに……


「なんで誰も来ないんだ!!」

「だって、モテモテの加藤がいないからね。お客さんの半分は加藤目当てだし」


 即答。健はおいおい、とため息混じりに言った。


「そんなんで良いのかよ」

「……いんじゃね。まあ、残りの半分を待つしか無いしー」


 羽生はけだるそうに返す。健はああ、そうか、と曖昧な返事をした。

 なんだか健もだるくなってきた。

 手に持った漫画に目を戻す。

 沈黙が五分ぐらい続いただろうか、という時にガラッと教室の前の扉が開いた。

 おおッ、と羽生が背筋を伸ばしたが、この開け方は依頼人じゃない。


「どーも、清水先輩」


 ドアに背を向けたまま言う。羽生がなーんだ、と言ったので健の推測は正しかったのだろう。


「よう、この前はお疲れ」

「どうもです」


 労いの言葉に羽生はテキトーに返す。清水先輩は苦笑した。


「いやー。それにしてもよくやったな、お前ら。停学二人も出してんのにお偉いさんの評価は高かったぞ」

「マジすか。よかったー」


 これは本当に嬉しい。ああ、と清水先輩はにっこりと笑った。そしてすぐに真面目な表情になった。


「で、オレがここに来たのはこんなことを報告しにきた訳じゃない。……実は、依頼があるんだ」

「え?」


 二人は同時に声を上げてしまった。清水先輩が深刻な表情になっていくのが気になった。



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