書き直し中
どうも、ゼロ・クラフトです。
えっと、初めましての方もお久しぶりの方もいらっしゃるかと思いますが、まず最初に、ようこそ「異世界で石巨人生活」へ。この物語はあらすじの注意書き通り、僕の自己満足を満たす為に生まれた作品ですので、どうか温かい目で見て頂けると幸いです。
それでは、長くは語りません。どうぞその目で、僕の「世界」をお楽しみください。
「え?長期合宿、ですか?」
「あぁ、そうだ。場所は例年通りのあの田舎だ。ってそっかお前まだ行ったことないのか。まぁいい、とにかく時間厳守だからちゃんと十分前には来いよ?」
「いやそれ今日のしかも30分後じゃないですか?!ウチから駅まで自転車でも20分はかかるって知ってますよね?!って、コーチ?コーチ?!、、、チクショー、何でこんなにツイてないんだ最近は!」
そう毒づきながら青年・蒼井 鋼は大急ぎで着替え始める。荷物は事前に準備してあるので心配はいらないが、中一の頃に両親を亡くして以来一人暮らしをしているため、家の中を整理する方が彼にとっては問題だった。彼自身は初めてだが、先輩の話によると長期合宿は約一週間行われるそうなので、必然的に彼は未だに片付けられていない食器を大急ぎで洗ったり、溜まったゴミを一斉に出したり、家中のコンセントを抜いてブレーカーを落としたりと色々出かけるための準備をしなければならなかった。
結果、彼の努力は空しくも報われず、集合の十分前に集合地点にたどり着くことは叶わなかった。
「遅いぞ、鋼!一体何をやっていたんだ!」
「、、い、いや、、、出発、の、、、30分、前に、言われたに、、しては、早、いはずです、、、、!」
「一、二、三、四、、、、、全員居るな?よし、出発だ!」
息も絶え絶えながら、鋼は精一杯の憤りを込めてコーチを睨みつけたが、さすがに教師歴が30年を超えているコーチのスルースキルは非常に高く、結局荒い息で他の部員達の後について行くしか選択肢はなかった。そんな彼に友達は、どんまい、といつものように声をかけ、共に電車に乗り込んだ。
都会に住んでいる彼らを乗せた電車は始めは当たり前のように人で溢れていたが、彼らの目的地でもある終点に近づくに連れて周りの風景にだんだん緑が増え、乗客がどんどん減っていった。そして最終的に彼らだけを載せた電車が終点の無人駅にたどり着いた頃には日は既に沈みかけていて、辺りは闇に包まれようとしていた。
「よし、こっから徒歩で後30分くらい歩けば今日の宿だ。行くぞお前ら。」
『エーーーーーッ?!』
部員一同から抗議の声が上がるが、コーチのスルースキルの高さと徒歩が唯一の移動手段という事実に、渋々従うことになった。
そして彼らが歩き出して約40分、辺りが完全に闇に包まれて懐中電灯なしでは進めないほどになった頃に、やっと目的の宿にたどり着くことができた。幸いにも宿の経営者はとても優しい人ですぐに彼らを受け入れてくれたので、彼らはやっと安息を得ることができた。
「はぁ、ホント疲れた、、、」
「本当だよな。まさか電車3時間乗った後に40分歩かされるとは思わなかったぜ。」
「でも飯も結構うまいし、ここに来たのは外れじゃないな。」
「だな。んじゃ、そろそろ風呂行こうぜ?あんまり遅くなると女子の時間になっちまうから早く行かねぇと。」
「そうだな。鋼も行こうぜ。」
そう言って同室の友達が誘うが、鋼は
「悪い、先に入ってくれ。ちょっと散歩に行ってくるわ。」
そう言って部屋を後にした。
外に出てみると、田舎らしい街灯のない真っ暗な闇がそこに広がっていた。その闇にほんの少し恐怖と期待の感情を抱きつつ、都会では明るすぎてみることが出来ない夜空の星々を眺めながら彼は道なりに歩いていた。そしてどれくらい歩いたのか、気がつくと彼の目の前には小さな鳥居へと続く階段があった。
「ここどこだ?てか鳥居?、、、これは行くっきゃないっしょ!」
もちろん、この時彼の心の中を満たしていたのは大好きな“非日常との遭遇“への期待だった。
七段くらいしかない階段を一歩一歩緊張感を持たせるようにゆっくりと上り、175センチもある彼より少しだけ高い鳥居をくくると、そこには彼が期待していたようなボロ臭いが何やらただならぬ雰囲気を放つ小さな本殿だけがあった。
「おぉ!これは凄く期待できそうな感じだな、、、!」
だがしかし、大きな期待の多くは裏切りられるものなのだ。
案の定、その夜その小さな神社で何かが起こることはなかった。鋼がいくら神社の敷地内を調べ回ったりしても、結局得られたのは大きな失望と汗と泥だらけになって汚れてしまった身体と、そして夜遅くに外出したことに対するコーチの渾身の怒鳴り声だけだった。が、彼には何故か知らないがその小さな神社から強く惹かれる何かを感じたがために、諦めきれずに居た。そしてその気持ちこそが、全ての始まりだったとも言えるのだろう。
それから一週間の合宿中、鋼は怒られることを覚悟で夜中にこっそり旅館から抜け出してはその小さな神社へ行き、そしてその度に同じような失望と汚れた身体と怒鳴り声を得たのだった。ただ一つだけ違うのは、彼を強く惹き付けていた何かによる惹き付けが日ごとに強くなって行ったことだけだった。
そんなこんなで結局何も起こらないまま七日間の合宿が遂に最終日を迎えてしまった。だがこの時の鋼の神社への渇望の思いは既に最高潮に達しており、それがどれほどのモノかというと、彼に一睡もさせずに4:00という早朝の時間に彼を旅館から抜け出させたほどだった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、、、、」
猛ダッシュしたため本殿の前で膝に手をつきながら鋼は肩で息をしていた。そしてしばらくして深呼吸で息を整えると、鋼は合宿中に何度もしたように注意深く辺りを見回した。すると、今までは夜中だったから気付かなかった様々なことに気付くことが出来たのだ。
実は本殿の扉のは何故かお札がびっしりとまるで何かを封じるかのように貼られていることや、敷地の中から見た鳥居の裏側が何故か綺麗に全て色が落ちていたり、今自分が立っているところがちょうど敷地の中心だったり、賽銭箱の下には誰かが捨てた成人向けの雑誌があったり、、、、、
と、そこまで気がつくと、鋼は急に空気が抜けた風船かのようにそれまでピンと張りつめていた集中力を切らした。
「何だ、やっぱ今回も何もなかったか、、、、、」
そう諦め、そしてこの七日間に自分がしてきた奇行の数々を思い返して自嘲しながら神社を後にしようとしたその時−−−−−
「、、、え?」
シャアアァァン、という涼やかな音と共に、見ると足下に何やらファンタチックな幾何学模様が描かれているではないか!
「え、ちょ、、、、、マジかよ?!」
人間、遥かな望みや大いなる目標が突然あっさりと叶ってしまうとあまりの嬉しさかその真逆の失望からかは分からないが、頭の中が真っ白になってパニック状態に陥るのだ。
そして鋼もその例にもれず頭の中が空白で埋め尽くされ、思考がしばらくの間停止してしまったのだ。普段ならばここで冷静にその場を離れて身の安全を確保するのだろうが、如何せん小さい頃からの夢が叶うかもしれないという思いが思考を鈍らせ、結果として彼の行動を遅らせてしまったのだ。
「、、、って、ちょ、これはまず、、、、、金縛りぃ?!」
そう気がついた時には時既に遅し、抵抗の力を失った彼はもはやもがくことを諦め、これから向かうであろう所に対して希望を述べることぐらいしか出来なかった。
「、、、異世界なら、テンプレ通りにはならない方が面白いかもな、、、」
ヒュウウゥゥゥンン!
夏の、とある日の朝日が顔を出すのとともに、一人の青年が世界と世界とを繋ぐ神社より旅立ち、新たな人生を歩み始めることとなった。彼が果たしてこれからどんな物語を描いて行くのか、それこそまさに、神の味噌し、、、、神のみぞ知るところだろう。




