第24話 再現――繰り返される現象
訓練場に乾いた空気が流れていた。
実技の時間。生徒たちが各々の基礎反復をしている。
レインもその一人だ。決められた動作を淡々と繰り返す。
だが、視線が多い。
(……昨日から続いてる)
距離はある。でも確実に見られている。チョークが外れたあの瞬間から、空気が変わった。
「――そこまで」
ハーグの声が全体にかかる。動きが止まる。
「いくつか確認する」
いつもと同じ調子。だが視線はすでに決まっている。
「レイン・ヴェリス」
名を呼ばれる。ざわめきが広がる。
レインは一拍置いて、前に出た。
「軽くやる。避けろ」
次の瞬間、空気が揺れた。見えない衝撃。一直線。
(速い)
避けきれない。
(当たる)
だが。
(……外したい)
思考が先に動く。意識する。当たるはずの線を、そこから外れる結果を。その"間"を。
衝撃の軌道がわずかにズレた。
肩を捉えるはずだった線が外れ、背後の地面が弾ける。
ざわめき。空気が揺れる。
(……やった)
まだ曖昧だが、前よりは確かだ。
間を置かず、二撃目。角度が変わる。読みづらい軌道。
(もう一度)
(……できる)
意識が動く。明確に。軌道が曲がった。一直線だったはずの線が逸れる。完全な空振り。
今度は、誰の目にも分かった。
「今の……」「おかしいだろ」
声が漏れる。クラウスが眉を寄せる。アルトが一歩踏み出す。目は逸らさない。
「……あり得ないだろ」
低い呟き。
リュシアが少し離れた場所で、視線をレインに向けたまま動かない。
(……同じだ)
心の中で静かに言葉が落ちる。自分の魔法がズレたときと同じ。"当たるはずだったものが外れる"。
(やっぱり。偶然じゃない)
ハーグが手を下ろす。
「……もういい。戻れ」
レインは頷いて元の位置に戻る。
(……二回)
再現。しかも、意図。
ハーグは振り返らない。
だが、次を考えている。
条件が揃い始めている。




