第22話 形を持つ異常――周囲の変化
気づけば、俺を取り巻く状況が変わっていた。
最初は不審がっていたクラスメートたちが、少しずつ普通に話しかけてくるようになっていた。明確な理由はない。でも、ユークが普通に挨拶してくるようになったあたりから、空気が変わった気がする。
ラグが言った。
「レイン、最近周りの空気が落ち着いた」
「そうか?」
「うん。最初はみんな警戒してたけど、今は普通に見てる感じ」
「理由が分からないな」
「たぶんだけど」
ラグが槍を回しながら続ける。
「レインが変な挙動を普通の顔でやり続けてるから、慣れてきたんじゃないかな」
「慣れ、か」
「そう。人間、毎日見てると慣れるんだよ」
なるほど、と思った。
一方で、別の動きもあった。
ハーグ・レイゼン教師の目が変わっていた。
最初から観察されていた。でも今は少し違う。観察から、検証に近い何かに変わっている気がする。授業中に俺に向けた設問や課題が、妙にピンポイントな時がある。
(あの教師、何を確認しようとしているんだ)
直接聞いたこともある。
「先生、俺に何か確かめようとしていますか?」
ハーグはわずかに目を細めた。
「気づいていたか」
「大体は」
「正直だな」
「回りくどいことが嫌いなんで」
ハーグは少し間を置いてから言った。
「君の現象には、教育者として正式に向き合う必要がある。それだけだ」
「それだけ、とは言い切れないでしょうが」
「……鋭い」
ハーグは珍しく、少しだけ表情を変えた。
「今は、それ以上は言えない」
「分かりました」
俺はそれで引いた。
ハーグの言葉の裏に何があるのか、まだ分からない。でも、敵意ではない。それだけは確かだ。
様々な視線が俺に向いている。
この場所が、少しずつ動いている気がした。




