第21話 呼応する現象――魔法陣と俺の力
クラウスが実験を提案してきた。
「人工魔法陣を使って確認したいことがある」
「何を確認する?」
「君の力が、魔法陣に干渉できるかどうか」
人工魔法陣は、クラウスの得意分野だ。描いて発動させる、トラップ型の魔法装置。普通の魔法と違い、個人の資質に依存しない。誰でも扱える。
「やってみよう」
クラウスが地面に魔法陣を描いた。小さいものだ。踏むと風が吹き出す仕組みらしい。
「これを、発動する前に止められるか試してくれ」
「発動前に?」
「魔力が充填されたあと、発動する直前の状態で」
クラウスが魔力を込めた。魔法陣が光り始める。
俺は意識を向けた。
(この陣と、俺の"距離関係"を変える)
陣が光ったまま、止まった。
「……止まってる」
「ああ」
「本当に止まってる」
「見りゃ分かる」
クラウスが近づいてきた。陣の周囲を慎重に観察する。
「魔力は充填されたままだ。発動の条件も揃っている。でも発動していない」
「俺が接触判定をずらしてる」
「そういうことか。踏まなければ発動しない仕組みだから、"踏んでいる"という判定を無効化した」
正確には少し違う気もするが、結果としてはその通りだ。
「次に」
クラウスがまた陣を描いた。
「今度は、描いている途中に干渉できるか確認したい」
クラウスがペンを走らせる。
俺は意識を向けた。
描いている線の"位置関係"を少しずらした。
クラウスのペンがわずかに滑った。
「……ペンが滑った」
「俺が線の位置をずらした」
「魔法陣の精度が落ちる可能性がある」
「実戦で使えるか?」
「相手が魔法陣を描いている最中なら、有効だ。完成した陣に対しては別の手が要る」
クラウスはノートに記録しながら、静かに言った。
「レイン」
「なんだ?」
「君の力は、"魔法システム全体に干渉できる"可能性がある」
俺は少しだけ息を呑んだ。
「どういう意味だ?」
「魔法陣も、魔力も、発動も、全部"位置関係"と"接続"で成り立っている。それらに干渉できるなら、魔法そのものを書き換えられる」
しばらく沈黙が落ちた。
「……大げさじゃないか」
「大げさかもしれない。でも可能性としては、そこまであると思っている」
クラウスは静かにそう言った。
俺は手を見た。
関係性を変える。
その先に何があるのか、少しだけ見えてきた気がした。




