第20話 制御外の動き
次の発見は、アルトとの自主練中に起きた。
アルトは時々、俺に対して練習に付き合うよう言ってくる。向こうにとっての検証と、俺にとっての実戦練習を兼ねた形だ。
「スパークコンプレッションの蓄積数を増やした」
「どのくらい?」
「当たれば確実に戦闘不能になる程度」
「物騒だな」
「手加減はする。だが本番想定で動く」
それで何度かやり合っていた。
アルトの連撃は相変わらず速い。正確だ。当てようとしているのに当たらない、という状況がアルトにとっても初めてらしく、蓄積が増えるほど焦りが混じってくる。
俺は軌道をずらしながら動いていた。
でもその日、気づいたことがあった。
軌道をずらす、だけじゃない。
ずらした先に、方向が乗る。
アルトの拳の軌道を右にずらした瞬間、俺の中で"流す"という感覚が生まれた。ずらすだけじゃなく、そのまま右の壁に向けて、力の方向を乗せた。
アルトの拳が、壁に向かって流れた。
アルト本人も驚いた顔をした。
「今の……?」
「俺も今気づいた」
「軌道をずらしただけじゃなかった」
「ああ。方向を乗せた」
しばらく沈黙が落ちた。
アルトが静かに言った。
「それは、武器になる」
「そうだな」
「相手の攻撃を、別方向に流せる」
「受け流しの発展形か」
「いや、それ以上だ」
アルトは少し考えてから続けた。
「方向を選べるなら、逆に流せる。相手に向けて流せる」
俺は少しだけ息を呑んだ。
(相手の攻撃を、相手に向ける)
「まだ安定していない」
「そうだな。でも、できた」
アルトは何かを整理している顔だった。
「俺の蓄積を、自分に向けて流されたら」
「詰みだな」
「そうだ」
二人で少し黙った。
俺は手を見た。
ずらして、流す。
小さな動きが、戦術に変わる瞬間を感じていた。




