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第18話 確かに触れた――意図的な接触


 それは唐突に訪れた。


 放課後の訓練場。俺はクラウスと二人で検証を続けていた。


 今日の課題は「空中の固定点を、意図して移動させられるか」だった。


「石を浮かせたまま、横に動かしてみてくれ」


「難しいな」


「やってみてくれ」


 石を浮かせる。意識を向ける。


 横に動かそうとする。


 落ちた。


「……」


「もう一度」


 浮かせる。意識を向ける。


 今度は"横への関係性"を意識してみた。今ここにある、を保ちながら、少し右に引っ張るような感覚。


 石が、わずかに右に動いた。


「……っ」


 思わず声が出た。


「今の」


「見てた」


 クラウスが小さく頷いた。


「動いた。浮いたまま、横に」


「一センチくらいだが」


「それでいい。方向を変えた。それが重要だ」


 俺は石を見た。今は落ちて地面にある。


 (動いた)


 固定するだけじゃなく、方向を与えられた。


「もう一度試してくれ」


 浮かせる。右に引く。


 石が動いた。二センチくらい。


「……安定してきた」


「そうだな」


「次に左を試してくれ」


 左を意識する。石が左に動いた。


「前」


「後ろ」


「斜め上」


 全部動いた。精度はまだ低い。でも、方向の意図は伝わっている。


 クラウスがノートに書き込んだ。


「段階が変わった」


「何が?」


「最初は軌道のずれ。次に固定。そして今、方向操作だ。これは単なる上達じゃない」


「どういう意味だ?」


「最初はただ"関係が変わる"だけだった。でも今は"意図した方向に関係を変えられる"になっている。受動から能動への移行だ」


 俺は手を見た。


「つまり俺は」


「そうだ」


 クラウスが言った。珍しく少し前のめりで。


「戦闘の中で、これを使える段階に入りつつある」


 しばらく沈黙が落ちた。


 俺は手の中に石を置いて、意識を向けた。


 ゆっくりと、石が浮き上がった。


 右に。左に。前に。


 動く。


 これが使える。


 実感が、少しずつ形を持ち始めていた。


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