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第17話 枠から外れる、ということ


 ある日の放課後、俺はイリスと二人で中庭にいた。


 特に理由はない。帰ろうとしたら声をかけられた。


「ちょっといい?」


「いいが、何だ?」


「見たいものがある」


 それだけで俺は付き合うことにした。イリスの"見たい"に興味が湧いたからだ。


 中庭の一角、誰もいない場所。


「石を浮かせてみて」


「どこで聞いた?」


「クラウスから。全部報告してるよ、あいつ」


 (あの野郎、言いふらしてるのか)


「まあいい」


 俺は石を拾って、意識を向けた。


 七秒、八秒。


 落ちた。


「おー」


 イリスが素直に感嘆した。


「分かんないけど、すごい」


「それがお前の感想か」


「うん。あと」


 イリスが石を見た。


「これ、魔法じゃないよね」


「そうだ」


「じゃあ何?」


「分からない」


「そっか」


 イリスはあっさり頷いた。


「でも、見ててすごく変な感じがする。いい意味で」


「変?」


「うん。魔法を見てるときと感覚が違う。魔法って、ちゃんと"力が動いてる"の分かるんだよ。光でも空気の揺らぎでも。でもレインのは何も動いてないのに結果だけある感じ。不思議」


 俺はその表現に引っかかった。


「結果だけある?」


「力が見えない。でもそこにある。みたいな」


 イリスが手を振りながら言う。上手く言えてない、という顔をしているが、俺にはなんとなく分かった。


「……お前、面白い表現をするな」


「そう? 変だった?」


「いや、しっくりきた」


 イリスは少し嬉しそうな顔をした。


「あのね、レイン」


「なんだ?」


「強さって色々あると思うんだけど、"枠の外にいる"って、それだけで強さになると思う」


「どういう意味だ」


「魔法って、みんな同じルールの中で戦ってるじゃん。属性があって、相性があって、魔法陣があって。みんなそのルールの中で強くなろうとしてる」


 イリスが続ける。


「でもレインは最初からそのルールの外にいる。相手はレインのことを理解できない。ルールが通じない相手って、どう戦えばいいか分からなくなると思う」


 俺は少し考えた。


「ルールの外、か」


「うん。だから枠の外にいるって、それ自体が強みなんじゃないかと思って」


 俺は石を見た。


 名前もない力。分類できない何か。誰も説明できない現象。


 それは弱点だと思っていた。でも、見方を変えれば。


「……面白い考え方だ」


 俺は正直にそう言った。


 イリスが笑った。


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